ANAの第1四半期決算について

2020.7.29.

ANAの第1四半期決算について

 

 今日発表されたANAの第1四半期決算について、私観を交えつつ、概括したい。

 

1.         収支について; 激甚な収入落ち込みで著しい赤字計上となった。

しかし大幅な費用削減は赤字幅を緩和した。

   コロナの影響で営業収益は著しく落ち込み(前Q176%減=約▲3800億円)、

  前年の約1/41216億円だった。

   一方営業費用も約▲2000億円減少(前Q1比▲42%)したため、結果的に営業損失は▲1560億円となった。

   業界通念では固定費60%と理解されている中で、減少した収入の半分以上を費用減でカバーしたことについては、むしろ善戦との感がする。 

   決算説明資料によると、徹底した減便で変動費を切り詰め、無給休暇等による人件費削減はじめ、固定的と考えられるような費用も大きく削減していることがわかる。

 

 

2.         収入減と費用減; 固定費削減も大きい

下表は営業収益/営業費用/営業利益について、「航空事業」と「その他の事業(全社数値と航空事業の数値との差額をとった)」に分けてみたものである。

 

(航空事業)

   営業収益は▲3444億円(▲78%)であった。

   収入にほぼ連動の販売費、そして変動費を代表する燃油費と空港使用料が大幅減少。飛行時間や発着回数とのリンク性が高い整備費も大きく減少した。

   機材費(賃借)の減は、コードシェア便の減便によるものと考えられる。

   ANAグループ外企業への業務委託費(相手企業は通常固定費割合が高い)も▲25%。

   無給休暇を導入した人件費は▲19%(減便に伴う乗務関連費用の減もあろう)。

   その他の費用は▲43%; 機内サービス等変動的なものも含まれるが、施設関連費用、事務費、IT関連費用など固定的なものが多く、概して固定性の高い項目と思われる。

この削減幅は大きいと言えよう。

 

(その他の事業)

 航空関連事業(他社便ハンドリング受託など)、旅行、商社、それ以外の事業から成る。

   収入は▲57%、これに対して費用は▲46%。

   商社など原価率の高い(変動費の多い)事業があるが、他社ハンドリング受託など固定費

が多い事業もあり、▲46%という費用減は大きいと思われる。

 

 

 

3.         財務(資金力); 5350億円の新規借り入れで、手元資金は約3400億円増加。

 

 財務状況をみると、現預金(含有価証券)と借入金(含社債等)に大きな変化がみられる。

  即ち、借入金が大幅に増え(+5160億円)て、1兆3590億円となり、
他方では現預金が+3383億円増えて5769億円となっている。

  借入金と現預金の増加分の差額(▲1778億円)が今四半期に流出(設備投資を含む)したことになる。          

 

  

 

1.         Q1の資金の流れを推測し、今後を展望する。

 

① 第1四半期推測; 借入れ5350億円 ⇒ 歩留まり3383億円

   今期の資金調達額は5350億円であり、

   借入金は5161億円積みあがって「13,590億円」となった。

(差額の189億円は既存借入金の返済に回ったと思われる。)

   手元資金は3383億円増加して「5,769億円」となった。

   増分の差額「1,778億円」は流出したわけであるが、その行先を推測すると;

赤字による流出; 赤字1562億円-減価償却費による内部歩留まり450億円

設備投資による流出; 389億円; 投資有価証券や機材の取得

その他(277億円程度); 不詳だが、前年分の税金支払差額(含当期分概算払)などが考えられる。

 

    2四半期~年度末の展望; 第1四半期なみに推移すれば、更なる資金流出は

5000億円程度か?

   収支悪化の程度(含コスト削減の継続)、設備投資をQ1に準じるもとの考え、今期内に返済が必要な借入金(800億円と推定)を加味すると、今後~年度末までに流出すると予想される資金は約5000億円となる。

業績が改善すれば余裕も生まれるが、他方では運航規模の回復は需要に先行する⇒費用増が収入増に先行することになり、大幅な復便に需要が十分伴わないと収支悪化もあり得る。

   他方ポジションを確保している新たな融資枠が5000億円あり、それを実行すれば、流出分は補填され、現在の手元資金が期末まで残る勘定となる。 

   但し、借入金の残高は1兆8千億円を超え、金利と今後の返済への負担は大きく膨らむこととなる。

 

(今後の展望)

  今後を見とおすのは、不確定要素が多く、その程度も大きいため難しいが、以下がポイントとなろう。

 

   国内線の需要回復の程度とスピード; いつ従前レベルに戻るか?

減便⇒復便への規模とタイミング(費用の先行増と収入回復のバランス)も重要。

   国際線がいつ回復にむかうか?

国内線が、国際線の赤字を賄うまでに回復するのは難しいであろうから、

国際線の規模縮小は避けられないであろう。

縮小は、通常は機材と人員(含委託先)の削減が基本となる。

現在の緊急的対策から、恒久的な施策への転換が必要となろう。

   国際線の回復が遅れれば、大規模なCash出血が続くことになるが、借入金に依存

しての生き残りにも限界があり、場合によっては事業再編の可能性も出てこよう。

 

以上(Y.A

 

 

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