2021.2.23.

空港会社の決算(続)~主要4社;コロナの影響~

主要空港4社の資料をもとに、コロナの影響を受けた2020年度の決算を概括する。

 

1.成田国際空港㈱; 全株式を国(国交大臣/財務大臣)が保有する株式会社。

 

(旅客/貨物)2020年度の国内線旅客数は約200万人で、前年比▲73%減。

国際旅客は▲96%減の127万人。 国際貨物は+2%の209万㌧であった。

 

(収支) 主力の「空港収入(着陸料や施設使用料等)」が▲68%、「物販収入」が▲91%と著しく減少、他方「施設や鉄道施設賃貸収入」は小幅減であり、結果として売上高は前年比▲7割減の718億円であった。

営業損失に資産処分損等を加えた税前損失は▲613億円、繰延税金資産の取り崩しもあって最終損益は▲715億円であった。

2021年度は、売上高は僅かに増加するものの、2020年度並みの収益性(▲600億円規模の赤字)が続くと予想している。

 

(財務状況 借入金と増資で4800億円の資金を調達、手元資金は3800億円積み上がって約4200億円となった。 流出(差額)の▲1000億円は、主に赤字(税前損失▲613+減価償却費388億円)と設備投資(760億円)による。

 

期首の繰延税金資産から約100億円を取り崩した。

2.日本空港ビルデング㈱; 羽田の空港ビル事業(空港運営はなし)

 

(旅客/貨物)2020年度の国内線旅客数は1930万人で、前年比▲7割減。

国際旅客は▲98%減の41万人。 
国際貨物は貨物専用便が殆どない羽田では▲45%減の31万㌧であった。

 

(収支)主力の「物販収入」が▲9割減の136億円、施設賃貸/保守や業務受託の「施設管理収入」が▲57%減の359億円、「飲食業」が▲84%減の30億円、結果として売上高は前年比約▲8割減の526億円であった。

営業損失に助成金収入等を反映した経常損益は▲573億円、最終損益は税の繰延効果(損失の繰延)を反映して▲366億円であった。

2021年度は、旅客がかなり回復すると見込んでおり(国内旅客は2019年度の77%、国際旅客は40%)、売上高は1032億円、経常損益は▲193億円と予想している。

 

(財務状況 借入金と増資・自己株売却で約750億円の資金を調達、手元資金は480億円積み上がって1200億円となった。 その差(▲270億円の流出)は、赤字(減価償却費や減損後の流出▲150)や設備投資(補助金相殺後280億円)などによる。

 

繰延税金資産(今期赤字の将来税金圧縮効果)は37億円積み上がった。

3.関西エアポート㈱;関西、伊丹、神戸空港の運営。 オリックスとVanci Airportが中核(各40%)となって設立、2016年度より事業開始、2018年度には神戸空港も開始した。

 

(旅客/貨物)2020年度の国内線旅客数は伊丹が▲63%減の581万人、神戸も同率減の121万人、LCCの多い関西は▲69%減で205万人であった。

国際旅客は▲99%減の21万人、国際貨物は▲7%減の74万トンであった。

 

(収支)売上高は前年比▲73%減の572億円で、航空系事業(空港や施設運営)と非航空系(物販等)から成り立っている。営業損失は▲428億円であった。

  金利負担が重く(100億円超)、2020年度は雇用調整助成金収入(25億円)があったものの、経常損益は▲520億円、但し台風災害の受取保険金等で税前損益は▲494億円であった。税の繰延効果等を反映した最終損益は▲345億円であった。

 

(財務状況 資産の大半(1.4兆円)が施設運営権であり、その見合いとなる負債(未払)が1.3兆円である。

キャッシュフローは、借入金を157億円増やしたが、手元資金は▲353億円減少した。

差額は主に赤字と設備投資による流出である。

 

なお繰延税金資産(今期赤字の将来税金圧縮効果)は156億円積み上がった。

4.中部国際空港㈱; 株式の40%を国が、そして愛知県/名古屋市や地元の有力企業(トヨタ/中部電力/名鉄/三菱UFJ等)が計約25%を保有する。

 

(旅客/貨物)2020年度の国内線旅客数は約200万人で、前年比▲79%減。

国際旅客は殆ど皆無であった。

 

(収支) 主力の「商業(物販)」が▲9割減、「空港事業(空港運営やターミナル施設賃貸管理等)」が約▲6割減、「アクセス施設(駐車場等)」が約▲7割減であった。

結果として売上高は前年比▲77%減の151億円であった。

営業損失は▲179億円、支払利息や助成金収入を加味した経常損益は▲170億円、

最終損益は▲180億円であった。

2021年度は、売上高は小幅の増加と、収益性の小幅改善を予想している。

 

(財務状況 資産は土地(2902億円)と建物(1131億円)が大半を占めている。

キャッシュフローは、借入金増+79億円で、手元資金は+44億円積み上がっての140億円。

差額(▲35億円の流出)は、赤字(▲170)と設備投資(27億円)を減価償却費(140億円)や消費税の還付でカバーされた結果と考えられる。

 

 

 

                                  以上(赤井)