2021.8.3.

数字で読み解くJALのQ1決算

この度公表されたデータに基づき、JAL2021年度第1四半期決算を読み解きました。

 ・ 数値は主にコロナ前2019Q1と比較、財務状況も2019年度末からの推移でみています。

 前年より会計基準が変更され、ANAとの厳密な比較が難しくなっています。

(注)端数処理の関係で末尾数値が他表と一致しないことがあります。

        データ加工は筆者独自の手法で行っております。

 

 

1.収支状況;

 (当期収支)売上収益1330億円で営業損益は▲768億円、税前損益は▲839億円。

ANA(営業損益▲646億円)と比べてかなり厳しい結果であった。

 

 (収入の内容) 国際旅客が2019比▲91%、国内旅客▲70%、貨物郵便が2.10倍と

いうのはANAと同傾向である。

 

 (収益性)売上収益(1330億円)が2020Q10.38/前年比1.74倍に対し、
        営業費用(2099億円)は2020Q10.64/前年比1.03倍である。

費用の減少幅がANAより緩いのが気になるところである。

もともとJALの方が費用効率が高かった(削減余地が小)こともあるが、

ANAを下回る収入規模(▲3割以上少ない)で、赤字の絶対額がANAより

大きいというのは「衝撃的」といえそうだ。

 

 

 (雇用調整助成金) JAL42億円を得ている。 ANA74億円)との差は、人件費施策  
        の深度の差か?

2.収入内訳;

 

 (国際旅客)供給(座席㌔)は201938%、旅客㌔は8%、収入は9%(112億円) 
      であった。 搭乗率は前年の17%より僅かに改善(20%)したが依然低レベル。

 

 (国内旅客)供給は201955%で、旅客㌔は29%(収入は30%)。

        搭乗率は前年より改善(2840%)したが、依然採算ラインには程遠いと思われる。

 

 (国際貨物)20191.25倍の輸送量(貨物㌧㌔)で、収入は2.58倍。

 

        前年と比べても倍増している。

3.財務状況;2019期末から今期末までの推移

 

  現預金と借入金;

現預金;2020年度中に+792億円増えて4083億円となり、今期に入って▲513億円減って

      6月末には3570億円となった。

 

借入金;2020年度中に+2377億円増えて5151億円となり、今期は統合した春秋航空日本からの128億円を含め、581億円増加した。

 

  純資産2020年度は▲2500億円規模の赤字を、約1800億円の増資でカバー、期末に

         は9800億円となった。

今期は▲570億円規模の赤字で減少して、6月末には約9200億円となった。

 

 

(キャッシュフロー概算)

 

 2020年度; 借入金(返済ネット)、増資、資産売却で約4200億円を調達。

 

       設備投資(約▲900億円)と赤字による流出(減価償却費や減損等資金の内部

滞留など相殺後で▲2500億円程度)。

 

その結果手元資金は約+800億円積みあがって期末には約4000億円となった。

 

 今期; 新たな借入れや春秋航空日本からの移行により借入金残高は580億円増加、

加えて資産売却や春秋からの移行資金もあり調達額(返済net)は約620億円。

他方設備投資や赤字による資金流出は約▲1000億円(春秋からの移行分を除外)

 

その結果手元資金は▲513億円減って、3570億円となったもの。

4.機材の変動;2019期末から今期末までの推移は以下のとおり。

 

 大型機; 国内線のB777が退役。

 旧式機(B767、旧タイプB737等)も退役促進。

 新鋭機(大型A350、中型B787)が増機。

なおZIPAIRB7872機)は上記に含まれる。

 

 

 今期よりLCC春秋日本のB7376機)が加わった。

 

 

別レポートにて、ANA/JALの簡易比較を行います。

 

 

                                      以上(赤井)