PeachとVanillaの17年度決算を概観する

 PeachVanilla17年度決算を概観する

201871

 

この都度発表されたLCCPeach AviationVanilla Air2017年度決算について、過去5年間の推移も交えながら概観した。

   データは両社の決算公告およびこれまでに公表された旅客実績(当方での概算加工を含む)をもとにしている。

 

 

1.    Peachは高い収益性継続、Vanillaは再び黒字に!

 

Peach

   5年間増収が続き、2017年度の収入は547億円であった。

   営業利益も黒字を続けている。当年度は前年に比べて小幅減益となったが、依然

  高い利益率(10%強)である。

   2015年度に累損を解消して、留保利益を増やしている。

   但し最近2か年は、当期利益の大きさ(49億円、37億円)に比べて、利益剰余金が余り増えていない。

   ⇒ 持株会社であるANA等への「配当金」等での還元によるものと思われる。
19億円、32億円相当)

 

Vanilla

  5年間増収が続き、2017年度の収入は330億円であった。

  2015年度に営業利益を計上したあと2016年度は再び赤字となったが、当年は再び

黒字化して、8億円の営業利益を計上した。

  しかし現在なお▲100億円以上の累損が残っている。

 

 

 

  (営業利益と利益剰余金の推移)

 

 

2.    旅客指標で3ヶ年推移(主に前年との対比)を概観する

 

Peach

   ANAの子会社となって、国内線(成田発着便)を縮小し、国際線を拡大した。

→ 総旅客数はわずかながら減少。

→ 一方で平均路線距離は4.4%長くなった(1,1131,162km)。

   搭乗率は8587%と高いレベルにある。

   発着旅客単価(付加収入も含む)は+6%向上して10,691円となったが、発着座席コストは飛行距離延伸の影響を強く受けたためか、+10UPして8千円台となった。

   旅客㌔単価(千㌔当り)は+1.6%向上して9,198円となったが、座席㌔コストは

6,7457,145円と6UPし、この結果採算ラインを示すB/E7478%と悪化。

   座席㌔コストUPによるB/E4ポイントのUPを搭乗率の向上(+2ポイント)でカバーできない分だけ収益性が低下した形となっている。

   国際線は、新たに進出する初期コストや便数頻度が少ない間は空港でかかる費用が割高となり、他方海外LCCとの競争も激しく収入単価も大きく上げることは容易でないことから、収益性が低くなったものと思われる。

 

Vanilla

  VanillaPeachより国際線の比重が高く、国内線も長距離路線の割合が高いことから、平均距離も1,700km程度と長い。

このため発着収入単価と発着座席コストは高いが、距離当り(㌔当り)でみると、収入単価、座席コストともに割安となる(空港でかかる費用が距離当りでは均されるため)。 

  当年は、国内線の規模拡大で平均距離はやや短くなった(1,591km)。

  座席㌔コスト(6,445円)に対して、旅客㌔単価(7,735円)は十分高くはないため、採算ライン(B/E)は83%とかなり高い。

→ 当年は86%という高い搭乗率で利益を確保したが、安定的に利益を継続するには、厳しい競争の中で収入単価を上げるか、コストを更に縮減するかによってB/Eを引き下げることが求められる。

 

 

 

 (旅客指標の推移)

以上

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)