ANA/JAL 2017年度第3四半期(累計)決算について

 

 

ANA/JAL 2017年度第3四半期(累計)決算について

201824

 

この度発表されたANAJALの連結決算数値を簡単に比較した。 

上期決算までの傾向がQ3にも引き続きあらわれている。

 

ANAは事業規模でJALを引き離し、営業利益でも逆転してJALを上回った。

収益性向上余地はANAが大きく、2社の規模差は今後も拡大すると予想される。

同時に発表されたANAの中期計画では、傘下LCCの方向性が示されているが、自主性と

 

いうより「グループ枠組という制約下での伸長」が一層明確化されたといえよう。 

 

 

(簡易解説)  

   両社増収増益ながら、ANAの増幅が大きく(国際旅客や新たに連結対象となったPeachの増収効果等)収入規模はJALの約1.4倍となり、従来下回っていた営業利益額でもJALを追い抜いた。

   Peachを子会社化した特別利益(他方では「のれん」資産が増加)の関係で、ANAの最終利益(親会社帰属)1,660億円となった。

   両社とも通期見通しを据え置き、営業利益はともに約1600億円。

   旅客収入(除LCCは、国内線・国際線ともに、ANAJAL1.3倍規模。

   ANA搭乗率(際内計)は73%とJALより低いが、B/E(略式)は60%と低い。

JALの搭乗率は77%と高いが、B/E62%とANAより高い。
ANA
は国内線の機材小型化で増収幅は小さかったものの、搭乗率は向上。

   今後ANAの収益性向上余地は大きいと考えられる。

   JALが優位なのは財務体質(有利子負債の少なさと留保利益の大きさ)であるが、

   留保利益についてはANAが接近してきている。

 

 

 

   《図表1》 収入と営業利益の比較(単位;億円、営業利益は右目盛り)

 

 

 

     《図表2》 連結損益計算書の比較

 

            ANAの収入規模はJALの約1.4倍、上期の営業利益はJALを抜いた。

 

 

 

    《図表3》 旅客事業に関わる指標の比較

            JALの搭乗率は高いが、収益性の伸びしろはANAより少ない。

 

ANAは今後搭乗率を上げれば、B/Eが低いため伸びしろは大きい。

 

 

 

     《図表4》 連結貸借対照表の比較

        ANAは事業用資産(航空機等)の規模が大きく、その分有利子負債も大きい。

 

        利益剰余金はJALが大きいが、差は急速に接近してきている。

 

 

 (参考) ANA傘下LCC2社の今後の方向性

      「中期計画」をみると、特筆すべき方向性として、以下があげられる。

   国内線の巨大市場である幹線への拡大からLCCを除外する。

(近距離巨大市場である国内幹線こそLCCの実力発揮場所であるのだが)

   LCCの伸長市場を、国内ローカル線と国際線近距離、そして中距離に限る。

 

      国内LCCの優等生路線を走ってきたPeachは、今後この制約の影響を大きく
受けることになると予想される。

以上

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)