欧州の2大LCC RyanairとeasyJetを概観する(2)

 

欧州の2大LCC 

RyanaireasyJetを概観する(2) 

2018616 

 

 

1. 戦略の違い;「絶対的安さ」追求のRyanair、「相対的安さ」のeasyJet

 

同じ欧州のLCCではあるが、両社の戦略には大きな差がある。 

一口で言えば「絶対的安さ」を追求するか、「相対的安さ」かであろう。 

 

Ryanair

 

「絶対的に安い」裸の運賃を提供する。 

 そのためにはコストを徹底的に切り詰める。 

 特徴的なのは、多少不便でも費用がかからず優遇措置も受けられる「第2・第3の空港」を好んで選んでいることである。 

 燃油等運航コストが割安な新鋭小型機のB737-800に統一して座席を高密度化し、少ない人員で対応するというのはもちろんである。 

 そしてさまざまな付加料金を徴収して安い運賃を補うというもの。 

 ロンドンの主空港はStansted、第2としてGatwick 

飛行時間が1.52.5時間の路線・便を中心に、13時間に集中している。

 

  

easyJet

 

競合する既存会社に比べれば「相対的に」しかし大幅に安い運賃を提供する。 

 座席の高密度化と少ない人員での対応はRyanairと同じであるが、「需要の多い 

 基幹空港」(空港コストは高い)を選び、そこに多くの便を張って運航頻度を確保する。いわば絞り込んだ展開であり、それによって効率を高めている。 

座席コストや運賃は多少高くならざるを得ないが、競合既存会社よりは十分に安く、高い搭乗率を確保することで利益をあげるというもの。 

ロンドンの主空港はGatwick、第2としてLuton 

  飛行時間が1.01.5時間の路線・便が突出して多く、1.52.5時間が続く。

 

 

【飛行時間別便数分布】(6CAPAデータ) 

easyJet11.5時間が突出     Ryanair13時間が多い

 

2 使用機材; 

easyJetはエアバス社製、Ryanairはボーイング社製の小型機を使用。 

いずれも今後は次世代機であるneoMAXタイプに移行していく。 

 

     (easyJet) 当初からの主要機であった短胴のA319※(156席)と、その後導入 

したLCCの定番=A320180席)を使用している。 

        今後はneo型(186席)と長胴のA321235席)を導入していく。 

   easyJetA319型の世界最大Userであるが、当時破格の有利な価格で調達できたと言われており、座席コストの低さに貢献しているものと考えられる。 

 

RyanairB737-800を使用(別に1機の-700型はチャーター用の特別仕様機)。 

      席数は189席と極度まで高密度仕様としている。 

2020年からMAX型(197席)を導入していく。 

 

  【保有と発注の機材内訳】

 

 

3 事業特性を数字でみる; 

両社の事業特性の違いを「数字」でながめてみた。 

 

    機数(期末)はRyanaireasyJetより37%多く、便数は31%多い。 

ただし1機当りの1日の便数はeasyJetの方が多い。 

⇒ これよりeasyJetの方が機材稼働が高いと読める。 

両社の公表値でも、Ryanairの機材稼働9.33hrsに対しeasyJet10.9hrsとかなり高い。 

しかし路線距離(飛行時間に関係)を勘案すると、それほどまでの乖離がないことになる。ただ、両社の公表値では過去から一貫してこの程度の 

稼働差があり、乖離の幅は別にしてもeasyJetの方が高稼働ということは言えるだろう。 

 

    路線距離はRyanairがやや長い。CAPAデータからも平均飛行時間が長いことが 

がわかる。 

⇒ easyJetは路線を近距離に集中しているのに対し、Ryanairは広い 

エリアに展開していることが伺える。  

 

    就航している空港はRyanairの方がeasyJetより大幅に多い。 

他方、1空港当りの1日の発着便数はeasyJetの方が多い。
easyJet10.3便に対し、Ryanair8.9便)
 

⇒ easyJetの方が就航空港への便の集中度が高いことが伺える。 

       (CAPAデータでみても、便の集中化傾向がみられる。) 

 

    1機当りの従業員数はRyanairの方が大幅に少ない。 

easyJet1機を42人で支えているのに対し、Ryanair34人で支えている。
また1便当りの従業員数はeasyJet16.5人に対し、Ryanair14.1人と少ない
 

視点を変えれば、従業員当りの便数はRyanairの方が多い。
easyJet44.4便に対し、Ryanair51.9人)
 

 ⇒ Ryanairの方が少ない従業員で対応していることがわかる。

  

5 グループ内の航空事業; 

easyJet

 

    easyJet Switzerlandジュネーブを基地とするeasyJetグループ内のLCC 

25機(CAPA情報)で、欧州内、北アフリカや中東への路線を運航。 

 

    easyJet Europe Brexit後の欧州路線のために英国にあるeasyJet本体から分離してウイーンを基地に設立したeasyJetグループ内の航空会社で、20177月に運航開始。機材は106機を引き当てている(CAPA情報)。 

  

Ryanair 

提携による長距離路線への進出; 

  長距離路線への展開は、数年前から検討されているが現実化していない。  

今は他社との提携で米州につながる路線への進出に意欲を見せている。 

  Air Europaとの提携; マドリッドを乗継ぎ点として、Ryanair客を米州各地とつなげるというもので、20183月にスタートした。 

実際はRyanairのサイトでマドリッドからのAir Europa便を予約できる 

という程度のもので、運賃もRyanairのような安さではないようである。

 

 

 

※スペイン第3の航空会社

 

  小型機と中大型機を
保有し、長距離は北米、
南米に運航している。

 

  Skyteamに加盟。

 


 

Aer Lingusとの提携; これまで敵対関係RyanairAer Lingusの併合を企図)にあった同じIreland籍のAer Lingusと接続便契約で合意(20183月)。ダブリンを中継点に、Aer Lingusの大西洋線とRyanairの欧州便の相互接続を図るというもので、来夏頃にサービスを開始するというもの。

 

  ビジネスチャーター便;
B737系では短胴型のB737-7001機をゆったりした機内の特別仕様(60席)にして、主にビジネス用チャーター事業を営んでいる。

  

  Ryanair SUN; 
ポーランドを基地に欧州各地に運航するチャーター会社を立ち上げ、ほどなく運航開始の模様。 B737-8005機体制を予定している。 
 

 

 以上

以上

海外事情

 

84~16日の主要ニュース19本のうち、いつもはPhocusWire Dailyにはほとんど表れない法人旅行に関する記事が7本(目次の下線箇所)もあった。取扱高ベースで米国市場のおよそ3割が法人旅行市場にあたり、そしてそれに加えておよそ2割程度のunmanaged business 旅行市場が存在すると言われている。つまり米旅行市場のほぼ半分あるいはそれ以上が、法人旅行で構成されていることになる。それだけ大きな市場にもかかわらず、業界ニュースが少ないのに驚かされる。(尤もこれにはPhocuswrightの親会社であるNorthstar Travel Mediaが、法人旅行市場専門誌であるBTN=Business Travel Newsを編集していることも影響している。)

 

7本の記事を読むと、この市場のセルフ予約ツールの使い勝手が極めて劣悪で、法人旅行管理会社(TMC)のサービスに対しても出張者の不満が多く、その上企業の出張規定のかなり厳しい遵守の要求のために、出張者のモラルと生産性の低下が発生している可能性がある、という何やら暗い話が連続する。要するに観光旅行市場の方が法人旅行市場よりも、旅行の計画や手配のプロセスで、テックを含めてずーっと先進洗練先行しているというのだ。

 

しかし、最近になって、この遅れた法人旅行市場に目をつけた新規参入者たちが参入しつつある。そして彼らは、企業のコスト削減最優先に変えて出張者ファースト、出張者セントリックの戦略を敷いている・・・というようなことが、これらの記事に書かれている。観光旅行のベストプラクティスを法人旅行が真似ようとしている。これはFSCLCCを真似て、FSCLCCの境界線がぼやけ始めている話と似ている。出張先で仕事の前後に休暇旅行までしてしまうブレイジャーの拡大も、法人旅行のセルフインベンションの一つのきっかけとなっているのだろうか。

 

11. OTA4つの神話」は、“高い手数料をふんだくっている悪者OTA”の評判(風評?)に対するOTA の恨み節が書いてあって面白い。(編集人)

 

 

海外事情 916日号B 

 

81923日のニュースに加え、法人旅行に関する特集シリーズ3部作の第1部を掲載する。(お盆休みのために、1週間のニュース配信となります。)

 

前々号の楽天キャピタルの都市エクスペリエンスプラットフォームFever(ロンドンとマドリッドベース)出資に引き続き、「3. 楽天、東南アジアのバジェットホテルに投資」した。

 

2. 電子IDと旅行」は、プライバシーの問題について何も触れていない。生体情報は、整形手術をしない限り究極的個人情報なのでプライバシー保護には細心の、最善の、最大限の注意が必要だ。

 

6. 米司法省、セーバーのフェアロジックス買収を否認」は、この買収が実現しない場合は、SabreNDC開発に遅れが生じる可能性がある。これは、FarelogixGDS代替システムの能力に、DOJが“お墨付き”を与えたということか。(編集人)