北米のLCC3社概観(2)

北米のLCC3社概観(2)

2018728

 

 

北米のLCC3SouthwestJetBlueWestJetについて、収益性を比較概観した。

  データは各社の2017年のAnnual Reportをもとに、若干の試算も加えたものである。

なおUSD111円、カナダドル=85円で円に換算している。

 

1.  収入と利益規模;

  収入はSouthwest2.35兆円と突出して多く、JetBlueはその約1/37,787億円、WestJetはそのまた半分の3,827億円。

  営業利益はSouthwest3,902億円(利益率17%)と非常に高いが、

JetBlue1,110億円(同14%)と、またWestaJet373億円(同10%)と、決して低くはない。

 

     ・ 平均距離(旅客㌔÷旅客数)はSouthwestが約1,300kmだが、JetBlueWestJetそれより34割長い。

 

2.  収入と利益規模(億円)の推移; 

グラフは至近の2017年から右に2003年までの15年間を遡る形で表示

 

  収入は3社ともに15年間着実に増加2009年はリーマンショク後の不景気で一時的に減)。

Southwest3.6倍の増加、JetBlueは7倍増、WestJet5倍増。

  営業利益は3社ともに、ほぼ堅実に計上。

WestJet2004年に若干の赤字、JetBlueは全期間営業利益を計上しているものの、200520062008年には最終損益で赤字となっている(過剰投資や先物取引の失敗等?)

 

 

      (Southwestの収入と営業利益の推移)

     JetBlue;収入は15年間で7倍に、2009年以降安定して高利益。

     WestJet;収入は15年間で5倍に、2006年以降安定して利益計上。

 

 

      (JetBlueWestJetの収入と営業利益の推移)

 

3  旅客収益性指標;

   ・ 旅客数; Southwest157百万人と図抜けて多く、JetBlueはその約1/440百万
人、WestJet24百万人。

・ 旅客㌔; Southwest2475億㌔、JetBlueはその1/2.7760億㌔、WestJet416億㌔。

・ 搭乗率; 3社ほぼ横並びの約84%。

 

・ 旅客㌔単価(千㌔当り); Southwestが最も高い11,316円、JetBlue10,243円、
WestJet
9,180円。 

なお付加収入等の割合はSouthwestJetBlue10%、WestJet15%であり、

欧州や東南アジアのLCC比べると低い⇒手荷物アローアンスが大きい等、収入は主に運賃収入によっていることが伺える。

(参考) 発着単価では、路線距離が短いSouthwestが低い。

 

・ 座席㌔コスト(千㌔当り); Southwestが最も高い7,917円※、JetBlue7,408円、

 WestJet6,924円。 

※路線距離が短いと発着時に要する空港の費用の影響が強く出ることから㌔当りでは割高となりがち⇒運賃もこれが反映されたものとなって㌔当りで割高となる。

 

・ B/E; 採算ラインを示すB/E(ブレークイーブン=座席コスト÷収入単価x100%で算出)は、

Southwest70%で最も低く、JetBlue72%、WestJet75%となっている。

 

その結果、搭乗率とB/Eの乖離が14ポイントと最も大きいSouthwestの収益性が高く、これに12ポイントのJetBlue8ポイントのWestJetが続いている。

 

4.  コストの内訳;

   座席㌔コストの内訳を示したのが下の図表である。

   (費用は運航費用=燃油費+空港使用料+機材費+整備費、人件費、他の費用に区分)

 

・ 座席㌔コストはSouthwestが最も高い7,917円であるが、うち人件費が3,282円(コストの41.5%)を占め、人件費以外では4,635円と最も低いレベルにある。

同社の「従業員第一主義、人件費以外のコストを安く」という社風が表れている。

従業員全体でのカジュアル&フレンドリーが定時性の高さと相まって、高い搭乗率や収入単価への納得性、作業効率の高さを生み出していると思われる。

また機材高稼働⇒機材コスト、徹底した単一機材主義⇒整備コスト、第2空港の活用⇒空港使用料が低コスト化につながっているようだ。

 

  JetBlueの座席㌔コストは人件費を除きSouthwestの構造と類似しているが、機材費、整備費、他の費用がやや高い。 空港使用料の低さは路線距離が長いことで、㌔当りでは均されるためと考えられる。

 

・ WestJetの座席㌔コストは人件費を除けば3社中最も高い。

特に空港使用料と機材費の高さが目立っている。

機材費の高さは機材稼働と多機種であることが関係しているのではないか。

空港使用料の高さは、中味を調べていない現時点では不明であるが、米国とカナダとの料金体系の違いもその一つではないかと思う。

 

 

  (座席㌔コストの内訳:円)

 

 (座席コストの構成)

 

             Southwest                       JetBlue


  

              WestJet


 

5.  財務状況;

貸借対照表の内訳(概略)を示したのが下の図表である。

   

3社の構造は類似しているが、内容的にはWestJetがやや劣ると考えられる。

  総資産は各社ともに収入規模よりやや大きい; 

Southwest 2.8兆円(収入の1.18倍)、JetBlue 1.1兆円(収入の1.39倍)、WestJet 5500億円(同1.44倍)

  資産の大半を有形固定資産(航空機等)が占める;

Southwest 74%、JetBlue 79%、WestJet 70

  負債の構成も似ているが、借入金への依存度はWestJetが高い。

借入金比率 Southwest 15%、JetBlue 12%、WestJet 32

  自己資本比率は米国2社が高い。

Southwest 42%、JetBlue 49%、WestJet 34

   但しSouthwestJetBlueの自己資本は「自己株式」を控除した値であり、これを加味

   するとSouthwestの内容は圧倒的にいいといえよう。

 

 

           (貸借対照表の比較:億円)

 

以上

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)