中長距離路線への躍進著しいLCC Norwegian Air Shuttle(NAS)を概観する(3)

中長距離路線への躍進著しいLCC

Norwegian Air ShuttleNAS)を概観する(3)

 

2018525

 

1.2017年の収益性悪化;

前年には最高益(247億円)を計上したが、2017年は一転して最悪の赤字(▲271億円)に転落した。

供給規模拡大(座席㌔)+25%によって費用が+37%増加して4468億円になったのに対し、収入は+19%の4197億円に留まったためである。

旅客数は+13%ながら、長距離路線の拡大によって平均距離が伸びたことで、旅客㌔はほぼ座席㌔並みの+25%であり、搭乗率もほぼ前年並みの87.5%であった。

しかしながら、旅客㌔単価は▲4%低下、これに対して座席㌔コストは+9%上昇して、

採算ライン(B/E)は93%まで悪化し、87%という高い搭乗率でもカバーできなかったのである。

 

座席㌔コストの上昇は、主に燃油単価の上昇(単位当たり消費量はむしろ若干改善)と機材費、整備費、そして運航乗員委託費のUPによる。

(他方、距離延伸によって空港関係コストは㌔当たりではわずかながら低下)

 

 

2.2018年の収益性動向;

2018年第一四半期(13月)の実績をみると、前年同時期よりも赤字が膨らんでいる。

供給は+36%と大幅拡大を続け、これに対して収入・費用ともに+33%である。

つまり収益性構造は余り変わらず(改善せず)、規模拡大によって赤字も拡大したということである。

 

4月に入ってB787のエンジンに検査が必要となり、運航への影響が懸念されるが、その影響額は今のところはっきりしていない。

また4月にNAS株の4.6%がIAGに所有されることとなり、運営委員会を設けてIAGからの申し入れに対応を始めた。

3月に実施した増資も含めて、4月までには13憶クローネ(176億円)の資金を調達する。

 

第一四半期はもともと低需要期(赤字期)であり、欧州近距離線の需要は旺盛である。

単位コストは大きく改善(低下)しており、今後の収益性改善を期待。

 

2018年の拡大規模(座席㌔)は前年比+40%を予定している。

   

  《図12017年の収益性悪化と2018Q1の収益性

  2017年は、供給拡大に旅客規模も伴って増えたものの、収入㌔単価の低下と

  座席㌔コストの大幅上昇で収益性が大きく悪化。

  座席コストの上昇は、燃油単価上昇、機材費・整備費・Pilotコストの

Upによって引き起こされた。

     ・ 2018Q1は、供給増に旅客増も伴ない、また収入単価低下は座席コスト低下で相殺されたが、もともと低い収益性が改善されたわけではなく、規模増がそのまま赤字額の増大につながった。

  

 

  《図22017年の座席コスト(㌔当たり;円)の内訳

      前年に比べて、燃油費、機材費、整備費、委託乗員費、その他費用が

 

      コスト上昇をもたらした。

 

以上

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)