2015年度上半期 ANA/JAL決算比較(その2)

2015年度上半期 ANAJAL決算比較(その2


                          2015年11月2日

 

 この度ANAJALから公表された資料をもとに、両社の収益性などを比較してみた。

 (計算過程の関係で、各数値の末尾が公表値と一致しない箇所がある。)

 

1. 国内旅客の状況

両社ともに供給量微減、搭乗率向上、収入単価上昇、収入は増加。

 

① ANA

1)北陸新幹線開業の影響(小松・富山路線の旅客数▲36万人)を強く受けて、自社便旅客数は減少、中堅3社やIBEXとのコードシェア旅客数(推定)を加えても、国内線旅客数は前年を下回った(▲12万人)。

しかし長距離路線(那覇、石垣線等)の構成割合増で、実質的な事業規模を表わす旅客㌔では前年を上回った(+1%)。

    2)コードシェア便の旅客数(推定)は前年比+11%の212万人となり、国内線旅客の10%を占めるまでになった。

 このほか傘下のLCC(バニラエア)の旅客数は大幅に増加し、これも含めた

 総旅客数では前年を上回っている。

    3)供給量微減(座席㌔▲1%)に対して旅客㌔は増加(+1%)、この結果搭乗率は

      1.2ポイント上昇して64.1%となった。

    4)また旅客単価が+3%上昇したこともあって、国内旅客収入は前年より+74億円増の3,532億円となった。

 

② JAL

1)北陸新幹線開業の影響(小松線の旅客数▲12万人)を、他の路線の需要増が補って、国内線旅客数は+13万人となった。

FDAとのコードシェア便の旅客数は8万人(推定)で、総旅客数の0.5%。

2)搭乗率は更に上昇して66.8%となった。ANA2.7ポイント上回っている。

これには機材の小型化も関係していると考えられる。(※)

また旅客単価も+3%上昇。

この結果国内旅客収入は+85億円の2,586億円となった。

      (※)機材の小型化(ボーイング737の割合増)は、総じて座席コストの低減と高搭乗率の達成をもたらす。他方では中大型機で運航するANAに比べて旅客シェアの低下に繋がりがちでもある。


《図表1》 国内線旅客状況の比較


《図表2》 国内旅客指標の比較


2. 国際旅客の状況

両社ともに旅客増、搭乗率向上、収入単価低下(燃油サーチャージ減)、収入は増加。

 

① ANA

1)積極的に規模拡大(座席㌔前年比+7%)し、国際旅客収入はJALを上回るようになった。特に欧州線と中国線ではJALに大きく差をつけている。

旅客数だけをみれば僅かにJALを下回るが、ANAは長距離路線の割合が比較的に高く、実質的規模を表わす旅客㌔ではJALを上回っている。

なお傘下のLCC;バニラエア(国際線旅客数34万人)を含めれば、旅客数でもJALを上回っている。

    2)供給増(座席㌔+7%)に対して旅客㌔は+11%増加し、搭乗率は大幅に向上して75.9%となった。

 

 

燃油サーチャージ減の影響で旅客単価(㌔当り)は低下したが、旅客収入は+239億円と大幅な増加となった。

 

② JAL

1)供給増は小幅(座席㌔+1%)ながら、旅客㌔はそれを大きく上廻って増加(+6%)し、搭乗率は79.7%まで高まった。これはANA3.8ポイント上回るレベルである。

2)旅客単価は燃油サーチャージ減等で▲5%低下したが、旅客㌔増(+6%)がそれを補い、前年比で増収(+17億円)を確保した。

 

《図表3》 国際旅客指標の比較


《図表4》 国際旅客;路線別比較(推定)


3. バニラエアの客況

ANA全額出資の子会社LCCであるバニラエアの実績は下記のとおり上向いており、

当年度は大幅な収支改善が予想される。

 

前年上期と比べると、旅客数は大幅に増加して90万人となった。

搭乗率も大きく改善して86%となった。

 

《図表5》 バニラエアの旅客実績


《図表6》 バニラエアの搭乗率推移(月別)

以上(Y.A)

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)