小型機墜落の原因についての考察

小型機墜落の原因についての考察

 

2015年7月31日


 主席研究員  風間 秀樹

 

726日に調布飛行場で発生した離陸直後の小型機墜落事故は、乗員や搭乗者だけでなく飛行場周辺の住民をも巻き込んだ惨事で、改めて飛行機事故の恐ろしさを物語っている。都市部における航空機運航の危険性と利便性が今後更に議論を呼ぶことになるのは必定である。

今回の事故原因については事故調査委員会の報告を待たねばならないが、これまでに航空評論家の方々が論評している「推測」には語られていないプロペラ機の特性から来る問題点を幾つか指摘したい。

 

先ず、当日の高気温によるエンジン性能の劣化である。高温により空気密度が極端に低下した状態で通常の離陸操作を行えばエンジンに供給される燃料と空気の混合比は濃くなり、結果的に不完全燃焼を引き起こすことになる。このような場合パイロットは自らの判断で、通常よりも燃料供給を減らす操作を離陸に先立って行うことになる。当然離陸推力は低下するから離陸滑走距離も伸びるし加速も悪くなる。

それに加えて満タンの燃料と5人の搭乗者が離陸重量を更に重くしているのだからこれだけでもかなり厳しい状況であったと言える。

このような高気温の状態でエンジン不調を起こすもう一つの原因にVapor Lockという現象がある。これは高温に晒された燃料それ自体が沸騰状態となり気泡が発生して燃料がスムースに流れていかない状態だ。低高度でこのような事態となったらエンジンの回復は不可能と思っていい。

いずれにしても離陸中にエンジンが不調になったのはほぼ間違いない。問題はその後のパイロットの対応である。

離陸滑走中に飛行機の加速が通常よりも遅いと感じれば離陸を中断すべきである。短い滑走路とはいえパイロットは常にそのことを考えながら離陸を始める。その判断は重要である。

そして、単発機においては離陸直後のエンジントラブルは不時着以外に選択肢はあり得ない。パイロットのとるべき対応は如何に空中に留まるかではなく、如何に被害を最少にして不時着するかの一点である。そのために最も大事なことは飛行機を失速させないこと、これに尽きる。高度を確保しようとして機首を上げれば速度は低下し、失速速度に 近付く。当該パイロットはこの機種上げ操作をしたように映像では見受けられるが、通常よりも重くなっている今回のケースでは失速にはより早い速度で入ってしまうことも考えておかねばならない。

墜落地点が滑走路の延長線上より左側なのは、パイロットから見て時計回りに回転するプロペラ機の特性として機首を上げれば自然と左に旋回することによる。通常パイロットの操作によってその傾向を抑えるのであるが、速度が低下して舵の効きが低下してくればそれすらもコントロールができなくなってしまう。

飛行機を失速に陥らせることなく、パイロットが最後まで飛行機をコントロール出来ていれば被害はもっと少なくて済んだはずである。 地上で巻き添えになった方の無念さを思うと航空人は今一度飛行の安全に対して真摯に向き合い「エアマンシップ」の原点に立ち返ることが求められる

 

現代人の生活には飛行機は欠くことの出来ない便利な乗り物ではあるが、一歩間違えると凶器にもなり得るということを銘記すべきである。

パイロット養成の現場にいる人間の一人として自らへの戒めでもある。

 

以上

海外事情

 

今週号では、「7. アゴダの多角化戦略」、「8. ブッキング、民泊の新戦略」、「13.ブッキング、法人旅行テックプロバイダー買収」、「15. ブッキング、配車アプリのグラブと提携促進」と、BKNGの関連ニュースが4つもあった。BKNGの「Connected Travel」戦略の遂行が進んでいる。BKNGの場合は、Internet of Things (IoT)が、Internet of Travel (IoT)と読み替えているように感じられる? 

 

それよりも、3つの記事が印象深い。「10. 本当のディスラプション」、「22. ソーシャルメディアと旅行」、「24. 東南アジア市場の2つの問題、OYOとインスタ」の3つだ。

 

10. 本当のディスラプション」では、ディスラプティブのプロダクトは、必ずしも既存企業よりも良いわけではなく、今まで既存企業が不経済なために手を出さなかったサービスのニーズに取り組んだか、以前は特定できなかったニーズのいずれかであると説いている。そして、ディスラプティブを起こしているのは、テクノロジーでなくて、創造性を発揮したクリエイティブなモデルであることを再確認させてくれた。

 

22. ソーシャルメディアと旅行」は、旅行とソーシャルメディアの相性が抜群に良く、旅行業界がソーシャルメディアを誰よりもうまく使っていると言っている。ソーシャルメディは、人と人の繋がりをインターネットで補完するコミュニーケーションサービスなのだから、顧客とのエンゲージメントに優れているのは当たり前だ。これを上手に使っていないとすれば問題だ。

24. 東南アジアの2つの問題、OYOとインスタ」は、この地区における観光公害の実態を報告している。オンライン旅行ガイドTravelfishStuart McDonaldが、過去15年間で悪化している観光公害の実態を、歯に衣着せずのタッチで断罪している。(編集人)

海外事情12月9日号 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)