コラム:春秋航空の関空拠点化に関する新たな安全課題


(コラム)春秋航空の関空拠点化に関する新たな安全課題

                           2015年35

                            主席研究員 稲垣秀夫

春秋航空、関空会社を批判するためにこの記事を書いたのではないことを冒頭にお断りする。

中国のLCC、春秋航空がこの3日、関西国際空港を路線網の要となる拠点空港にすると発表した。現在でも関空から中国6都市に就航しており月内に西安や成都など4路線を増やすとしている。春秋航空は路線拡大に向け航空機を3機、夜間駐機させるようだ。ちなみに、日経記事にあるように、海外LCCが日本に拠点空港を置くのは初めてのケースだ。春秋航空は2020年までに関空と中国20都市以上を結ぶ計画。将来は関空に夜間駐機させる機数を8~10機に増やすとのことだ。

ここには考えられる問題が2つある。 一つは安全管理が実質的にダブルスタンダードになるというものであり、もう一つは、国内の航空会社が経済的な不利益を被る可能性があるというものである。

国際線に限定されるが、国家間の航空自由化協定の結果、記事のような海外空港に拠点を置く航空機運用が可能になった。これからは、日本の主要都市と国土の広い中国本土の間で空港の発着制約がなければ、中国籍の航空会社による今回のような路線展開が行われる可能性がある。

なぜこれが問題になるのか。 春秋航空は航空機を3機夜間駐機させると言っているだけで、どの程度の期間、航空機を連続して関空拠点で運用するかという点には言及しているわけではない。ただ、将来夜間駐機させる機数を10機程度まで増やすとなると、ある程度の長期間、関空を中心に航空機を運用せざるを得なくなると思われるのである。

一昨年、ジェットスタージャパンが、今回の春秋航空同様に関空への拠点展開を目論んだが、関空の整備士の配置が不適切であり、それが安全管理上の問題であるということで、長期間、拠点展開の足止めをくい、事業計画に大きな支障を生じた。日本に本社を持つ定期運送航空会社は航空法により国土交通省の管理監督を受ける。 ジェットスタージャパンの関空展開の遅れはこの法規制によるものである。安全管理が目的であるから、国民、乗客の視点から厳格な運用に賛同する。

一方、春秋航空は中国籍の会社であり、中国政府の管理監督の下にある。関空拠点の航空機運用もこの管理体制の中で行われることになる。

国土交通省は、航空会社がどのような安全管理制度を持ち、どのように遵守しているか、国内の航空会社相手には管理監督するが、外国の航空会社には行わない。

日本に乗り入れている外国籍の航空機が外国政府の管理下にあるのはあたりまえのことである。ただ、長期間、日本の空港を中心に航空機を運用するということになれば、その期間、どのように故障修理を行い、定期整備を行い、必要な安全処置を施していくかという点が安全上重要になる。拠点空港には、安全運航を支える十分な整備施設や部品配備、整備資格者の配置が必然なのである。多くの日本人がその航空会社を利用することになるのだ。春秋航空には是非、適切な整備や航空機運用を望むし、政府には、ランプインスペクション制度を使い、航空会社がどのような状況にあるのかしっかりモニターし、公表してほしい。  

                                           以上

 

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)