香港、「国際線ハブの地位を失う」~中国のゼロコロナ政策への反応で

当分析はCAPAが2022年9月27日に発表した

 

Hong Kong ‘loses its status as an international hub’ as a reaction to China’s zero-COVID policy 

 

を JAMRが全文翻訳したものです。

2022年9月30日

香港、「国際線ハブの地位を失う」~中国のゼロコロナ政策への反応で

27-Sep-2022

 

1990年代晩く、中国本土の個々の空港が急速な発展を始めたが、そのずっと前に香港国際空港(HKIA)は、中国への玄関口として、そして、正に北及び東南アジアの大部分へと、地区全体にとってのビーコンの様なものだった。

 

然し、IATAの事務局長ウィリー・ウォルシュによれば、中国と香港でのパンデミックが長引き、人々を何ヶ月も連続で監禁することで「ゼロコロナ」を達成しようとする虚しい挑戦が、空港とキャセイ太平洋の双方に、キャンバスから立ち上がる術が無くなる程のボディブローを与えて居る。

 

このレポートは、ウォルシュ氏の懸念に、統計的な裏付けを加え、彼が正しい事を結論づけるものだ。

概要 Summary

  • IATAのウオルシュ氏は、中国でCOVID-19パンデミックが続く中で、香港がその国際線ハブの地位を失ったと述べて居る。
  • COVID-19の健康危機が始まってから2年半以上経って、空港(HKIA)とキャセイ太平洋航空は共に、2019年9月の供給に対し、凡そ85%近く、遅れをとって居る。
  • 北京が仮に来年まで規制を継続するとなると、パンデミックからの回復は、遅れるだろう。ー業界全体の回復が脅かされて居る。
  • 香港は競争相手たちからはかなり遅れをとって居り、そしてある種の常態が、仮に再興され、その場合には、香港は、ドバイでの回復の水準と速度に対応するよう目指すべきだろう。

 

IATAのウイリー・ウォルシュ~「ゼロコロナ」政策は香港からハブの地位を奪って居る

 

国際航空輸送協会(IATA)の事務総長ウイリー・ウォルシュは、ドーハで開かれたIATAの会議に出席し、香港は中国の「ゼロコロナ政策」の所為で、国際線ハブの地位を失ったと述べて居る。

 

中国本土、並びに香港特別行政区の双方とも、繰り返し都市封鎖と旅行制限、その一部はまだ継続して居る、の対象となり、都市圏が、ほんの一握りのウイルス新規感染者しか発見されて居ないのに、標的にされて居る。

 

ウォルシュ氏は、同じ週に米国大統領ジョー・バイデンが「COVIDは終息した」(統計数字は、それはあり得ない事を示して居るけれども)と宣言した事について発言して居る。

 

然し、米国の航空業界は、現在平常に戻って居る事も間違いない、一方で、中国とアジアのその他の部分では、全く、間違いなくそうなって居ない。

 

ウイルスそれ自身よりも、政府の政策を非難して(発生源は未だに確定して居らず、今後もされないかも知れない事を考えると、興味深いスタンスである)、ウォルシュ氏は述べた:「キャセイ太平洋はもはや嘗てのそれでは無い。香港は既に国際線のハブと言う、その地位を失い、それにより、その他のハブは利益を得て居り、よって[香港は]その地位を取り戻すのに苦労する事になるだろう。」

 

彼は加えて、「明らかに全体的な回復の強さに影響する」と指摘し、IATAは、これまで中国で規制を緩和する兆候は無いか、慎重に注視して来たと述べた。

 

業界全体の回復は、中国の置き去り状態によって脅かされて居る

 

ウォルシュ氏は、もし北京が来年も制限を続ければ、パンデミックからの業界の回復は遅れるだろうと警告して居る。中国の経済は世界で第2の規模である。

 

香港は歴史的に見て、北部と東南アジアの間の主要なハブであり、旅客が、国際線と大陸間の航空便を乗り継ぎ、更に中国発着の旅へと繋ぐ、事実上の中国本土の玄関口である。香港は様々な役割を満たして来た。

 

これとは対照的に、北半球の夏の間に、世界の旅客需要の回復の速度が、早まって居り、これは、エアライン経営者たちが、予想を超える高い需要の所為だとする、2年間の不自由の末、旅行を熱望する人々の大波が起きたためだ。

 

キャセイ太平洋、2019年の供給席数に対し僅か16%

 

2019年~2022年の間に供給された席数を考えると、キャセイ太平洋の活動停止が、良くこの事態を物語って居る。

 

 

キャセイ太平洋:週間総計供給席数、2019年~2022年 

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

供給は、2020年或は2021年のもの以上に殆ど上昇して居ないし、未だに、2019年の同じ週の僅か16%にしかならない。

 

年間の供給席数の減少は、多分下図により端的に見られるだろう、これは2012年から2023年までをまとめたものだ。

 

キャセイ太平用:年間供給席数/伸び率、2012年~2023年

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

キャセイ太平洋は、同社の路線網上に、現在、僅か48のノンストップの目的地、そしてノンストップの貨物便の目的地を47しか持って居ない。

 

これは、シンガポール航空の旅客便目的地72、そしてエミレーツ航空がドバイのハブに持って居る128に比べると見劣りする(ドバイが数10年前から、香港とシンガポールに対し、東西のハブ/乗継ポイントとして挑戦し始めて居る事から、ここで議論にドバイを持ち出すのは理にかなって居る)。

 

供給席数の減少の影響は、北米、欧州、南アジア、そして中東の市場で、最も大きく感じられる。

 

アジアでの全ての問題について、未だに北東そして東南アジアに供給はあり、2022年9月19日の週、最大の席数が投入されて居るのは、ほんの15,829席ではあるが、中国発着のものである。

 

キャセイは未だに香港で最大のエアラインである

 

香港国際空港にとって、エアラインはキャセイ太平洋だけでは無いが、キャセイは、2022年9月19日の週、供給の40.1%、そして便数の34%を持ち、依然ここで最大のエアラインであり続けて居る。

 

座席数は、地元エアラインと外国社で、大まかに50:50に分けられ、これは、外国のコミュニティからの支援、或は、キャセイ太平洋の凋落を示すのかどちらか、に言い換える事が出来る。

 

COVID-19の挑戦と試練にも拘わらず、中国は全体として香港発で最大の国家市場であり続ける。

HKIAの供給席数見通しは、2022年9月19日の週、2019年の同週に対し、僅か14%と、同エアラインにとってより、更に悪いものである。

 

キャセイ太平洋と同様、北東、そして東南アジアは主たる市場である;中国で長びく厳しい制限にも拘わらず、26,145席と台湾を抑え、中国は未だに最大の市場である。

 

香港国際空港:国家/地域別国際線出発席数、2022年9月19日の週

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

香港は、供給の回復に於いて、他都市に比べ遥かに後れを取って居る

 

この文脈の中で、香港を、その「地位」をより評価される形で維持して来たと見られる、他の都市と比較するのは役に立つ事だろう。それらの都市(そして、それぞれの空港)とは:シンガポール、バンコク、ソウル、東京、そしてドバイである。

それぞれの例で、2022年9月19日の週の供給席数を、パンデミック前である2019年の同週と比較して記録してみる。

 

従って、香港の例では上述のとおり14%である。

 

第2の指標は、主たる本拠地エアライン(1社或は複数社)による国際線/大陸間便の席数の割合についてだ。

 

 

HKIAと他空港の比較、2019年対2022年、及び主たる本拠地エアラインの席数の比較

Airport

Percentage of seats

in week commencing 19-Sep-2022

compared to week commencing 23-Sep-2019

Percentage of seats 

on main home-based airline(s)

Those airlines

Hong Kong

14.0%

40.1%

Cathay Pacific

Singapore

60.4%

39.3%

Singapore Airlines

Bangkok Suvarnabhumi

56.5%

18.3%

Thai Airways

Seoul Incheon

35.4%

46.1%

Korean Air & Asiana Airlines

Tokyo Haneda

83.5%

79.0%

All Nippon Airways &

Japan Airlines

Dubai International

84.4%

58.2%

Emirates

Average

55.7%

46.8%

-

Data Source: CAPA Airport Profiles.

 

2019年~2022年の4年間を通じた供給席数を比較する、第2の指標は、明々白々である。 

 

香港は、供給を取り戻すことでは、断然、最低の実績を記録して居る。驚くべき統計数値は、今年早い時期にCAPAが調査した際、多分、香港と同様、ウイルスに酷い打撃を受けて居ると見られるソウルだが、回復競争では、ソウルは香港に対し20ポイントの優位を何とか守って居る。

 

CAPAの関連記事参照:仁川空港の30年間の拡張工事、40億ドルの第4期で終了

 

 

第3の指標の意味するところは、より曖昧である。本拠地以外のエアラインの供給席数が示す、より大きな割合は、それら外国エアラインが、長びくパンデミックの影響に拘わらず、その地により大きな信頼を抱いて居る事を示唆して居るのかも知れない。

 

この例では、香港はとても良いスコアを得て居る;供給席の60%を本拠地以外のエアラインが持って居るのだから、だが競争仲間の空港のうち2つが、一つ以上の国際エアラインを持って居る。だから、ここでの結果では簡単に、結論が出せない。

 

ドバイは、来年またはその先への「基準」である

 

香港が多分、次の12ヶ月の間(もし香港が失った「地位」を奪還したいと望むなら)、対応しようと検討するべきなのは、取り戻した供給量で、香港よりも70ポイント優位にあり、このグループの全空港の平均値より、ほぼ30ポイント優位にあるドバイである。

 

全体として、ウォルシュ氏の仮定に反論する議論は少ない。

 

今問題なのは、HKIAが如何に迅速に、失われた地位を取り返せるか、そして、それが果たして出来るのかと言う事だ。

以上