世界の航空業界に於ける中国の役割を再評価する:第1部~通常のビジネスではなくなるだろう

当分析はCAPAが2022年11月18日に発表した

 

Reassessing the future role of China in world aviation: part one – it will not be business as usual

 

をJAMRが全文翻訳したものです。

 

2022年11月21日

世界の航空業界に於ける中国の役割を再評価する:第1部~通常のビジネスではなくなるだろう

18-Nov-2022

 

中国がCOVIDの冬眠から目覚める時、全く違った航空業界の勢力になって居るだろう。

それは通常のビジネスでは無いだろう。世界は、2020年1月以来、大きく変わって居る;そして中国も変化して居る。

 

金融市場は、習主席の下の中国は、以前より、国家の政治的目標に向かって演じられる役割が重要性を増す、中央の戦略に寄り添ったものになるだろうと予想して居る。これは、より緩慢な成長と株主の居心地の悪さを意味するとしても、習主席の国家の保安とパンデミック対策への集中は異論を許さないと言う感覚を反映して居る。

 

中国は過去に、一線を踏み外した国々を罰するのに出国観光客の購買力を使った。北京は旅行会社、エアライン、そして多くの大衆に圧力をかける事で、北京の意に染まぬ国々への観光旅行客の数を急激に減らすことが出来る。

 

航空機の発注もまた、この兵器庫の中の武器である。

 

然し、2019年以来、中国の航空業界の見通しの形を変容させて居る問題が他にも沢山ある。 

概要 Summary

  • 中国は2019年以来、変化して居るが、世界も同様に変わって居る。
  • 中国のゼロコロナ政策は深刻な経済的ダメージを国内にそして世界に及ぼして居る;然し中国が国境を再開しようと試みる一方で、ウイルスは再び広がって居る。
  • アジアの航空業界と各市場は、この国境閉鎖で最も深刻に影響を受けて居る。
  • 「一帯一路」の様な経済戦略的動きは、潜在的に航空政策に影響を及ぼすだろう。
  • 観光客の流れを武器とする事は再度、兵器として使われるだろう。
  • 完全再開は2023年の相当遅くまで、見込めないだろう。

 

地政学的キャンバスは2019年以来、描き直されて居る

 

明確な証拠が少ししか無い中で、中国の航空業界の展望は、依然不可解であり、そのため唯一出来るのは、中国がCOVIDの都市封鎖から立ち上がった時に、違いがどうなって居るかを憶測する事である。加えて、世界の至る所で、地球上の航空業界に影を与える、中国から独立して、そして彼らのこの国に対する姿勢の双方で、幅広い諸問題に関する再評価をしつつある。

 

より広範囲の交易と保安の問題が、常に、現時点の国際的な環境に従って揺れ動く、航空業界の戦略に影響を与えて来た。

 

動揺する時代にあって、航空業界は、嵐の中の手漕ぎボートと少ししか変わらない。軽微な損傷としては、サウジの戦略的な、カタールによる空域進入禁止が一つの例であり、より重大な、ロシアのウクライナ侵攻による航空機とエアラインの制裁がある。地政学が入り込む所の、空域と市場アクセスに関して、他にも多くの問題が存在して居る。

 

中国が台湾に対し、武力をちらつかせ、また南シナ海、そして南太平洋全域に食指を伸ばし、一方で北朝鮮は南にそしてより幅広く挑発を再開する中で、今日、環境は、過去数十年間そうだった様に痛いほど敏感になって居る。北東アジアは潜在的に危険な地域である;ロシアがイランから支持を得て、そして中国が反対しない中で、ウクライナ侵攻をエスカレートさせ、欧州は既に危険である。

 

これら全ての事が、また、米国と中国による世界の指導力を巡って強まる対抗意識と言う背景に対しての事で、これに従い、交易と保安の問題が累積して、新たな一連の戦略的な優先順位を形成して居る。 

 

これらの事が、中国の将来の航空業界の展望に、どんな影響を与えるかに言い換えるのは、何か変化が起こるだろうと予想する以上には、容易な事では無い。

 

中国が、実質的に国際線旅客輸送便に対して閉ざされて居た期間である、2019年以来、殆どの、新たな現状維持は、進化して居る。今年始めまで、世界の至る所も、殆どが閉ざされて居た。

 

2022年夏の北米と欧州での航空便の再開が、中国が再開した時に、一体何が予測されるのかを示す、何かしらの指標を提起できるかも知れない(一方で、米州域内の国際線は大きく復旧して居る)。

 

旅行への障害が除去される中で、期待された上昇は全般として望まれたほど熱狂的だったか、明らかでは無かったが、予想された観光需要の大波は押し寄せた。

 

世界の殆どの市場で、圧倒的な人員配置とインフラの混乱で、即座にほぼ間違いなく長期になると思われる、運航への影響で、水はまた余計に濁ってしまった、ー明らかにCOVID-19の遺産である。

同じことが中国でも起こるのだろうか?

 

これまでの教訓から学んだため、そして過去3年間の殆どを通じ、中国の国内システムが、浮き沈みはあっても続いた様に、多分起こらないだろう。また中国の再開が、欧州のそしてアメリカのそれの様に熱烈なものとは全く違ったものになるだろうし、その代わりより多くの局面を持った慎重な、的を絞った需要の流れの取り込みとなるだろう。

 

今や習主席が完全な支配を掌握し、ゼロコロナ政策が見直される可能性がある

 

初期の兆候は、習主席がビジネスを通常のものへと再構築しようとして居る事だ。これは、中国の経済成長が鈍化するに従い、至上命題なのだろう。国際線の繋がりを制限する事は、国内に余波が起きた可能性があることを示唆する、充分な問題が地元にある。

 

2022年11月中旬インドネシアのバリでのG20会議での、一連の習主席の熱心な議論の間に、少なくとも最近数ヶ月間に、政治及び通商の分野の双方で閉ざされた扉を開こうとする熱意が示されて居る。

 

若し、対外貿易を復旧させる事が不可欠とするなら、今や全権を掌握した習主席の下で、国際的に中国のますます強まる主張が、政策全般への影響力を増大すると言う条件が伴うだろう。彼の実質的に終身となる総書記への再任により、そして強い権限を持つ中央政治局常務委員会から、全ての反対勢力を追い遣った事で、中国国家主席の言葉は法律となるだろう。

 

2022年11月初旬、通商使節団の長として中国を訪れた、最初の欧州の指導者であるドイツのショルツ首相を歓迎する中で、習主席は、「変化と混乱の時代」の最中に両国が協力を継続する事を、そして世界の平和と発展に貢献することを望むと述べた。

 

然し、新華社に拠れば、より不気味なことに、中国国家主席は、これは「両国が相互尊重の原則を堅持し、小異を廃し共通の基盤を探求し、交流と相互に学ぶ事を実行し、ウインウインの協力を続ける限り」起こりうることだとの条件をつけ加えた。

 

欧州諸国とEU全体にとって、これに関する最重要課題は、中国の人件に関わる行動だろう。

 

然し、中国の東アジアの隣人たちにとっては、米国と中国の間の安全保障の分断が広がる中で、懸念は、更にずっと困難なものになるだろう。これまで殆どが、どちらかの側への明らかな支持の間にある、細い糸の上を何とか歩んできて居て、これは安定的な曖昧さと言う様なものである。

 

台湾と領海の論争に関する東アジアの緊張の増大は、取り分け日本と韓国にとって、不明瞭な立場で塀の上に腰掛けて居る事を、ずっと難しくして居る。

 

この両国にとって、中国は不可避的に最も重要な航空業界のパートナーである。そして米国(とその同盟国)が、最も重要な安全保障のパートナーである。 

 

部分的な再開は単に北京の直面する複雑な障害を強めるだけだ

 

何人かのアナリストは、今や、習主席の立場は、極めて安定したもので、彼は、中国を外界から遮断し(即ち、より具体的には、到着或は帰着後の最短で10日間の検疫隔離が必要な)、厳格なゼロコロナ政策を緩和するだろうと示唆して居る。これは純粋に政治的な、そして危険性のある決断となるだろう。

 

健康衛生の視点からは、その様な動きは、とてもありそうに無いと見えるに違いない:都市封鎖をしてさえ、感染者数は中国全土で鰻登りとなって居る。2022年10月、連休の旅行の結果、10の主要都市の内8つが感染例を報告して居る。

 

従って、2022年11月早々の入国必須要件の緩和と言う北京の発表を追いかけて、即座に中国のエアラインの株価が急騰し、エアラインの予約数が1時間以内に倍増したのは、驚く事では無かった。中国のハンセン指数は8%上昇し、アジアの各株式市場がこの2年間で、彼らにとって最大の上げ幅となった。中国市場の持つ重要性はその様なものなのである。 

 

     中国国際航空の株価:2022年11月16日までの1ヶ月 

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 Source: google.

 

然し、幸福感は短い命だった。現実的な目的のため、その動きは、機能的と言うより象徴的だった。中国を発着するエアラインは、COVID感染をこの国に持ち込んだとして罰せられる、嫌なシステムが終わると言う事なので、喜んだ。

 

然し、来訪客にとっては、事態の改善は限定的だった。以前は、到着客は1週間、監視付きでホテルかその類の施設に留まり、加えて家に3日間自己隔離せねばならなかった。

 

1週間は5日間に短縮され、加えて3日間の自宅隔離である。

 

それは正しい方向への一歩だが、まだ水門を開けるには充分とは言えない。

 

経済が滞り、大衆は目に見えて都市封鎖に不満を募らせる中で、2022年11月14日、都市封鎖された広州の住民の一部が喧しい騒乱を起こしたが、ウイルスは急速に蔓延し、その日にはほぼ18,000人が新規感染し、そのうち5,000人が広州だった。

 

重慶、鄭州などの大規模な都市圏でも感染が拡大して居る。

 

新しい、より感染力の強い変異株が世界中に広がって居り、とても中国国内での移動をより自由にする時では無い。

 

従って、半孤立化により、経済的、そして社会的コストが上昇するとは言え、近い将来に全ての入国制限を撤廃する事は、大胆、そして愚かだとさえ言えるだろう。

(続く)