欧州のエアライン各社、利益率が不振=FSCに比べて、概ねLCCの業績が良い

当分析は、CAPAが4月3日に発表した 


Europe's airlines underachieve in profit margins, but LCCs typically perform better than FSCs


をJAMRが翻訳したものです。

欧州の上場エアライン各社の最後のものが、最近、財務報告を提出し、収益性を比較する好機がやって来た。営業利益率でランク付けをして見ると、健全なプラス2桁のものから、マイナスのものまで業績が幅広い範囲に及んで居る。

概してLCCは、伝統的エアラインに比べて良い業績である。2014年、比較的利益率の高いエアラインは改善を見ているが、下層部のエアラインの殆どが利益率を落として居る。ビジネスモデルが収斂していく事は、必ずしも財務業績の収斂にはなって居ない。

上場エアラインの他にも、欧州には、大陸内全てのエアライン業界全体の利益率を引き下げる様な、主に小規模で不採算なエアラインが多数存在する。

欧州の旅客交通量の伸びや搭乗率は世界全体と比較して健全なのだが、その細分化された市場構造によって、利益率は引き下げられて居る。更に、欧州内で意味のある集中統合については、市場へのアクセス、所有と統治の制限がある限りは、難しそうだ。当面、欧州エアラインの優先する課題は経費の管理で特に人件費のリストラだ。

 

欧州の上場エアラインの中では、ライアンエアが、2014年最高の利益率

 

財務的な成功失敗を測る方法はいくつもあるが、最も重要なのは、投下資本に対する見返りである。然し、投下した資本に対する報酬の計算は単純では無く、いくつもの技術論的に異なる方法がある。

単純化するために、全欧州の上場エアラインに対し、営業利益が収入に占める割合という、営業利益率の比較をご覧頂きたい(下図参照)。この目的のために、営業利益はEBIT(利子、税引前)、リストラの為の特別支出や、単発の費用の控除前。資産処分などの営業外収入も除く。

 

欧州上場エアラインの営業利益率(収入に占める%) 2013年対2014(斜線はLCCを表す)

注)1)以下を除き全て暦年。

Wizz Air2013年は314日まで、2014年は914日までの12ヶ月);easyJet(913日と14日まで);Jet2.c0m(2013年は314日まで、2014年は914日までの12ヶ月);SAS(1013日と1014日まで);Flybe(2013年は20143月まで)

2)Jet2.comJet2 Holidaysを含む。

3)Lufthansa2013年は、減価償却が始まっていたと仮定して調整済。

4)Aegean2013年はOlympic Airとの統合が通年だったと見做した試算に基づく。

5)airberlin2014年は予備的な調整後のEBITに基づく。

 

Source: CAPA - Centre for Aviation, airline company reports

 

2014年営業利益率で上位6社のうち、5社がLCC

 

この収益性を測る方法では、ライアンエアが、2014年(そして2013年も)最も収益性の高い欧州エアラインであった。この例の中で最も収益性の低いのは、エアベルリン(2013年、2014年とも)だった。

この結果は、LCCのビジネスモデルの方が、伝統的エアラインより優れているとする人々には、かなりの弾薬を与える事になる。収斂していく事や、ハイブリッド化に拘わらず、LCCの方が概して収益性が高い。営業利益率で上位6社のうち、5社が、そして上位3社は全てLCCである。更に、上位3社は何れも利益率が2014年の方が、2013年より良くなって居る。

ライアンエアは、(表では暦年の利益率を示したが、同社の会計年度は3月まで)核心である低コストの力に単位収入、搭乗率を上げるよう、改善した顧客サービスを組み合わせ、これによって利益率を改善させて居る。

ウイズエアは、既に(ライアンエアの様に)超LCCであるが、更に単位コストを下げる一方で、単位収入も上げて居る。イージージェットは引き続き、主要空港の路線網や、ビジネス旅客や顧客サービスの分野の先進性で他のLCCをリードして居る事を活用して居る。

 

<関連レポート参照>イージージェットとライアンエア:互いに身構える=真っ向からの対決が加速する中で 4th February, 2015

 

2社のLCCが営業損失を計上

 

然し乍ら、LCCにとって全て良いニュースばかりではない。利益率が向上したLCCの数、4社は(トップの3社とJet2.com)は、利益率の落ちたLCCの数と同数だった。

まだ、可なり採算性が高いものの、ブエリングとペガサスは2014に、2013年より低い利益率を記録して居る。ブエリングは新たなローマ・フィウミチーノ基地で拡大する痛みを経験して居る。ペガサスは通貨問題から悪影響を受け、イスタンブール・サビハ・ゴクチェンのハブで、ターキッシュエアラインとの競争が熾烈になって来て居る。にも拘らず、ペガサスは2014年に利益率が落ちたターキッシュより高い利益率のままである。

リストに登場した8社のLCCのうちの2社は、2014年に損失さえ出して居る。それは長距離路線網を開設して苦戦したノーウエジアンと、親会社のエアフランス-KLMによれば、フランスからの長距離路線の拡大が原因と言うトランサビアである(どうも他の殆どのLCCは、路線を拡大しても十分採算が取れている事は無視して居る様だ)。


<関連レポート参照>ノーウエジアン・エアシャトル:2014年の大きな損失と記録的な債務=事業拡大と経費の問題が焦点に 16th February, 2015

 

エーゲアンがFSCのリストのトップを飾る;2014年は大半のFSCが利益率を下げる

 

欧州の上位6社のエアラインにLCC以外で唯一食い込んだのは、強力な経費管理とオリンピック航空の買収を成功裏に吸収し、2014年にFSCとして唯一2桁の利益率を上げたエーゲアン航空だった。


<関連レポート参照>エーゲアン航空:欧州最高のFSC利益率維持=LCCとの競合と経済が単位収入に重荷 31st March, 2015

 

FSCの中では、2014年に、4社が利益率を改善し、6社が下落を経験して居る。

アイスランドエアは、同水準を維持し、欧州で最も収益性の高いニッチなフラッグキャリアーの地位を保った。

IAGの利益率が改善したのは、主にイベリア航空のリストラと黒字回復が原因で、これはまた、欧州3大伝統エアライン・グループの中で最高の収益性という地位を固める助けになって居る。(リスト全体では、未だ第8位に過ぎないけれど)

 

<関連レポート参照>

アイスランドエア:大西洋のニッチなエアライン、2014年に強力な拡大を推進=然し、2015年の収益拡大は低い燃油費にかかっている 9th February, 2015

IAGSWOT分析:欧州を主導する伝統エアライングループ=財政的進歩と戦略的な自信を示す 9th January, 2015

 

 

IAG は労働問題のリストラに他の2社より早く、正面から取り組んだ成果が実ったのだ。ルフトハンザとエアフランス-KLMの双方とも、2014年には、年間業績の重荷になっただけでなく、従業員に対して安心できる経営の方向性を示そうとする中で、戦略の変換には障害が立ちはだかって居る事を浮き彫りにしてしまった、破壊的なストライキの痛手を受けて居る。ルフトハンザは監査済み決算によれば、利益率の上昇を報告しているものの、2014年の減価償却方針の変更が無ければ、利益率は、前年対比でもっと低いものになって居た筈だ。

 

<関連レポート参照>エアフランス-KLM、営業損失に逆戻り=燃油費の軽減は単位収入の低下と通貨問題で相殺されてしまう懸念 20th February, 2015

 

エアリンガスは今や中道的な欧州エアラインを代表して居る。その利益率は2014年にはほんの僅かだけ改善したが、まさに、LCCと大手ネットワークエアラインの中間に位置取りすると自ら戦略的に目指している通り、一群の中央にしっかりと残って居る。もし、IAGが名乗りを上げている、このアイルランドの航空会社買収に成功すれば、エアリンガスの収益性向上への次のステップアップに役立つだろう。

 

<関連レポート参照>

エアリンガス、年間営業利益拡大も更なる経費削減が必要=IAGの買収案が徐々に進む中で 25th February, 2015


エアリンガス、IAGの買収提案を拒絶=旧友は忘るべからず、IAGはまたやって来る 25th December, 2014

 

 

アエロフロート・グループは2014年に、大きな利益率下落に見舞われて居る。政治的な状況(特にウクライナの)から、国際路線の需要は弱く、これはまた、初のLCCへの試みであるドブロレットがEUの経済制裁の標的とされ、間接的に休止に追いやられて居る。アエロフロートは素早く第2LCC子会社ポベーダを立ち上げた。

 

<関連レポート参照>Aeroflot acts to relaunch its LCC project with Pobeda after Group profits fell again in 3Q2014

アエロフロート、ポベーダでLCCプロジェクトの再立ち上げを企図=グループの2014年第3四半期に再び収益下落で 3rd December, 2014

 

SASもまた、経費削減が順調に進捗して居るにも関わらず、競争的供給拡大と需要が低迷し、価格政策が弱かった結果、大きく利益率を落として居る。フィンエアも同様の問題に直面し、リストされて居る北欧3エアラインにとって、失望の年であった事を明確にする営業損失に陥ってしまった。

エアベルリンはリストに登場する欧州のエアラインの中で最下位の利益率だが、単位コストの上昇傾向を逆転させることが出来た。然し、同時に単位収入の上昇傾向も逆転させてしまい、結果として赤字に留まってしまった。

 

<関連レポート参照>

SAS、2014年度は赤字転落;更なるコスト削減を計画=常顧客は増加にも関わら

19th December, 2014

フィンエア、純損失はなかなか治らない性癖=コスト削減も収入減少で帳消しに12-Feb-2015

エアベルリン、CEOが代わって再リストラ=2014年はまた損失を出して1-Apr-2015

  

 

収益最高エアラインは利益率も改善;業績不振組は利益率も低下

 

私どもの欧州エアラインの営業利益率の分析によって、多種多様な結果が明らかになって来た。それでも、広い意味での結論が導き出せるだろう。ビジネスモデルはある意味で収束の兆しを見せている一方で、財務実績は多様化して居る。より大きな汎欧州LCCは明らかに、伝統エアラインより利益率の高いビジネスである。

更に、2014年は、最も収益性の高いエアラインは益々大きな成功を収め、大半の弱い実績の各社は利益率も低下して居る。

 

欧州エアラインの利益率は他地域より劣って居る...

 

この一連の結果には、株式市場に上場されて居ない、弱い財務実績の多くの小エアラインが作る長い尻尾は含まれて居ない。欧州エアライン全体では、世界の全地区の中でも、2番目に低いEBIT利益率を示して居る。

IATAに依れば、2014年欧州より収益が低かったのはアフリカだけである。北米はアジア太平洋の上に躍り出たが、この2地区が、EBIT利益率で見ると世界金融危機から回復して以来、最も収益を上げて居る。危機の頃に比べれば、欧州はわずかに改善しているが、2009年以来、常に世界平均を、そして、アフリカを除く各地区を下回って居る。

  

 

地区別エアラインEBIT利益率(収入に対する%):2007年〜2014

Source: IATA, CAPA - Centre for Aviation

 

...然し、旅客数の伸びが弱い訳では無い...

 

欧州のエアラインの弱い利益率は、旅客数の伸びが弱いからでは無い。IATAのデータに拠れば、欧州エアライン全体2014年のRPKの伸びは5.8%で、これは世界平均の5.9%に極めて近い。更に、欧州のRPKの伸びは何年もの間、世界平均に極めて近い数字で推移して居る。

対照的なのは、北米のRPKの伸びは金融危機以来、ずっと世界平均に遅れをとって来て居る。この北米の低い伸びが、この地区の利益率改善の要素になった供給の厳格な管理に反映されて居る。

 

地区別RPKの伸び率(%)20062014

 

Source: IATA, CAPA - Centre for Aviation

 

...あるいは搭乗率...

 

欧州の利益率の低迷は搭乗率の低さが原因でも無い。確かに、2014年の利益率と旅客搭乗率の双方のランキングで、北米とアフリカはそれぞれ最高と最低を記録して居るが、その他の地区については、この二つの指標に明確な関連性は見当たらない。

欧州は、ここ数年間、着実に世界第2位の旅客搭乗率を示して来たが、これは収益性を助けて居ない様である。IATAデータに拠れば、2014年、アジア太平洋の搭乗率は、欧州よりほぼ4ポイント低いが、EBIT利益率は4ポイント以上高い。

 

地区別旅客搭乗率(%)2006年〜2014

Source: IATA, CAPA - Centre for Aviation

 

欧州の利益率は、細分化された市場構造が引き下げて居る

 

もし、欧州のEBIT利益率が弱いのは、旅客数の伸びや搭乗率の低さの所為では無いとすると、この大陸を引きずり下ろす原因が何か他にあるに違い無い。この疑問に対する、20146月の我々の分析は、欧州エアライン市場の細分化された性質が、その低い収益性に大きく影響する要素になって居ると言う結論になった。

 

<関連レポート参照>エアラインの統合=欧州は北米のとった利益率向上の道を追えるか?

4-Jun-2014

 

この結論から、更に、世界の各地区に於いて、市場の集中の度合いの高さが、エアラインのEBIT利益率の高さに繋がるという関連性として下図に示されて居る。

この図は市場の集中の度合いをハーフィンダール-ハーシュマン・インデックスという指数(HHI)で、これに対してIATAに依る2015年各地区のEBIT利益率の予測値を示したものである。HHIは各企業の市場に於る占有率(供給席数に基づく)を二乗し、これらの数字を足し上げて算出される。この指数は、もし市場が完全な独占の場合10,000100の二乗)になる。この図は北米が最も集中の進んだエアライン市場であり、最も収益性が高い事を示し、一方アフリカがこの二つの指標とも最低となって居る。欧州の2015年の低い利益率は市場の集中度の低さに見合って居るのだ。

アジア太平洋は、下図の中で、低い市場の集中度から予想されるより、ずっと高い利益率が予想されて居て、例外的な位置に見えることは特筆すべきだろう。これは、この地区が単一な市場では無く、実際には多くの特徴ある小地区の市場で構成されて居り、その一つ一つが、アジア太平洋地区全体より、はるかに集中して居る為である。

  

2015年上期のエアラインEBIT利益率(縦軸)対 地区別市場集中度(横軸)

Source: CAPA – Centre for Aviation, OAG (based on schedules for week commencing 9-Jun-2014), IATA margin forecasts

 

更なる統合が欧州を助ける;一方で労働問題のリストラが焦点

 

勿論、欧州エアラインの利益率が何故、北米より低いかの理由は他にもある。特に、欧州の伝統エアラインは、一連のチャプター11の経営破綻が起こり、結果として、法廷の裁定による雇用契約の改変へと、かなりの推進力を与えられ、この点では早い進展を見せた北米の競合他社に比べ、労働問題のリストラに取り組むのが遅れて居る。

にもかかわらず、上図に示すように、欧州の細分化された市場構造は、低い利益率の重要な要因である。世界的な市場アクセスや外国人による所有と統治の制限が、地球規模で集中統合しようとする動きの障害になって居るが、これらの制限は実質的には北米に比べ、欧州により大きな影響を与えているのだ。

欧州のエアライン産業、特に(収益が明らかに低い)伝統的なエアラインは、北米エアラインに比べずっと大陸間路線に進出して居る。EUの市場アクセスと所有、統治の制限の自由化は、ブロックの境を越えた集中統合については、あまり役立って居ない。今世紀の最初の10数年間には、エアフランス-KLM、ルフトハンザ・グループそしてIAGの形成という、欧州エアライン集中統合への大きな動きが見られたが、その後の進展はあまり無い。

弱者が退場する結果として生まれる、もう一つの集中統合の形は、ゆっくりとしか進んで居ない。然し乍ら、これは、もしそれがなかったら死んで居たかも知れない欧州エアラインの、死命を制する少数株を、欧州域外のエアラインが次から次へと買収するという事態から遅らされて居るのだ。

欧州のエアライン産業は、更なる集中統合を阻んで居る制限を取り除くよう、監督官庁に圧力をかけねばならないが、これは長い時間のかかる手続きだろう。一方で、欧州の伝統エアラインにとっては、その収益性の向上のためには、労働問題のリストラを完遂するために更なる努力を重ねる事が緊急の課題である。


                                                          以上

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