第10回: JAL/ANAの国内線事業構造(1)

                                      2019年4月23日

 

(マラソン講座)データから読み解く航空事業 

(第10回; 2019年4月23日)  

 

JAL/ANAの国内線事業構造(1) 

ANAJAL1.3 

 

1JAL/ANA国内線構造概観(2017年度実績による) 

 

    国内旅客収入; ANAJALの1.3倍

 

JAL5200億円に対しANA6900億円と1700億円の差があります。
両社ほぼ拮抗していたJAL破綻前からは、両社の関係は一変しています。

 

・国内旅客収入は、両社ともに国際旅客収入を上回っています。 

国内線は両社の主要な利益源泉なのです。

 

    国内線旅客数; ANA1000万人多い、JALは短距離が多い

 

      JAL3400万人にたいしANA4400万人と1000万人の差があります。

 

      JALは短距離路線が多い関係で、平均旅客距離は少し短いです。

 

      平均旅客単価は両社約15000円です。 JALの方がやや低めに見えますが、距離当りではほぼ同じ(約17000/旅客㌔)です。

 

  自社便とコードシェア便(CS便)を分け、自社便をみますと;

 

   自社便数はJALが多いが、席数/旅客数はANAが多い
(=JALは小型機が多い)

 

・ 便数はJALが多くANA1.06倍で、1日当りで25便多い勘定になります。

 

      しかし供給座席数ではANAが多く、JAL1.24倍です。

 

旅客数もANA600万人上回っています。 

 

      JALは小型機が多く、その多さの一因に九州・沖縄の離島路線などを多く持っていることがあります。 そのため平均座席数は155席で、ANA204席の約3/4です。

 

      但し搭乗率ではJAL71%とANAを大きく上回っています。

 

  コードシェア便(CS便)をみますと;

 

   コードシェア(CS)便; ANA+33%の便数上乗せ効果

 

      ANACS便は提携会社によって1日に130(往復)便運航されています。

 

中堅3社(Air Do、ソラシド、スターフライヤー)、リージョナル航空の、IBEX、そして長崎ベースの
オリエンタルエアブリッジ(ORC)です。

 

ANAの自社便は395便(往復/日)ですから、+33%の上乗せ効果があります。

 

路線も羽田絡みが多く、またANAが買い取る座席割合が高いこともあって、そこから得ている旅客は便当りで46人、年間では400万人超です 

これでANA国内線旅客数の10%を占めています。 

 

      JALは地方路線でフジドリーム(FDA)や天草エアラインとのコードシェア便がありますが、
路線は純ローカルで機材も小さめです。

 

1日あたりで36便、1便当りの旅客はせいぜい9人(※)です。
路線は純ローカル線で機材も小さいことから年間旅客数もJAL全体の1%未満です。
 

       (※)チャーター便客を含む数値をCS便数で除した数字であるため、実数はこれ以下です。

 

2.  JAL/ANAの路線構造(2017年度自社便); 

   ここでは以下のとおり分類しました。

 

      羽田基幹4路線; 突出して市場の大きい羽田=札幌/伊丹/福岡/那覇路線。

 

      羽成絡み路線; 羽田/成田が絡んだ路線です(上述路線を除く)。

 

      大阪絡み路線; 伊丹/関西/神戸が絡んだ路線です(既述を除く、以下同じ)。

 

      札幌、中部、福岡、那覇絡み路線

 

      ローカル路線; 既述のいずれの空港も絡まない路線で、大半が離島間路線です。 

 

    羽田基幹4路線の便数シェアは両社15%程度ながら、大型機運航で座席数が多いため、旅客数では1000万人を大きく上回り、全体の約3分の1を占めています。 

平均席数はJAL327席、ANA385席→ANAが大型機運航がより多いことがわかります。 

 

    羽成絡み路線大阪絡み路線は合わせて便数の約半分以上で、旅客もJAL1600万人、ANA2000万人と夫々総旅客数の半分を占めています。 

 

    その他の路線は便数では3分の1を占めるものの旅客数は20%未満です。 

JALは便数の1割が純ローカル線であるの対し、ANAは殆どありません。 

 

    羽田基幹4路線、羽成絡み路線、大阪絡み路線の3路線群ではJALANAの便数はほぼ拮抗していますが、機材の大きさ(席数)の違いが関係して、旅客数ではJAL
500万人強(▲16%)下回っています。(加えてANAはこの路線で多くのCS便があることから、実際の差は更に大きなものになります。)
 

 

    中部空港絡み路線では、JALは破綻後の路線リストラで規模を縮小したため、ANAとは大きな差がついています。(この路線での旅客数はANAの約3分の1  

 

    純ローカル線は、その多くが北海道内や九州・沖縄の離島路線です。 

JALはグループ内のHAC(北海道エアシステム)、JAC(日本エアコミューター)、RAC(琉球エアコミューター)が運航しています。 

ANAは自社グループでは純ローカルを持たず、オリエンタルエアブリッジと九州離島路線のCS便を持つにとどまっています。 

 

          (路線群別旅客数比較;自社便のみ;2017年度実績) 

           ・自社便の旅客数は純ローカル路線を除きANAが多い。 

    CS便の旅客を加味すれば差はさらに拡大する。

 

                 JAL ANA 

 

 次回(第11回)の予定です。 

JAL/ANAの国内線事業構造(2 

路線便数構造はどう違う? 最近の時刻表より 

以上