欧州、エアラインへの国家支援に、小出しの調整しか出来ず

当分析はCAPAが2020年5月1日に発表した   

Europe only manages a piecemeal approach to airline state aid 

 

をJAMRが全文翻訳したものです。

 

2020年5月5日

 

欧州、エアラインへの国家支援に、小出しの調整しか出来ず

 

01-May-2020 

 

世界中で、各国政府は、その主要産業に対する財政的な支援を供与するために苦闘して居る。一方で、危機以前の欧州単一市場の存在にも拘らず、欧州各国政府はエアラインを支援するために、それぞれ独自の取り組みを採って居る。

 

フランスはエアフランスへの支援に合意して居り(他のフランスのエアラインには未だだが)、オランダはKLMを助けようと考えて居る。ルフトハンザグループは本国からの支援を摸索して居り、バージン・アトランティックは英国政府に助けを求めると同時に新たな投資家を探して居る。

 

イタリアは、アリタリアを再び国有化する計画で、コンドルは国家からの融資が保証され、ノルウェーのノルウェーエアに提案する支援は、ほぼ既存の資本を一掃するだろう。異なる水準の支援がフィンエア、アイスランドエア、TAPエアポルトガル、エアバルティック、TAROM、ブルーエア、そしてクロアチア航空に対しても合意に至って居る。 

 

 

概要Summary 

      フランスはエアラフランスに対する支援に合意して居る(フランスの他のエアラインも、現在、国家の支援を求めて居る)。

 

      ルフトハンザグループは、母国から国家支援を求めて居る。バージン・アトランティックは英国に国家支援を依頼したが、同時に新たな投資家を探して居る。

 

      イタリアはアリタリアの再国有化を計画して居る。

 

      異なる水準の支援がフィンエア、アイスランドエア、TAPエアポルトガル、エアバルティック、タロム、ブルーエア、そしてクロアチア航空に出て居る。

 

(*5/1現在:EUR1=JYE118.63)

 

フランスはエアフランスのためにエアフランス-KLMを支援する事に合意

 

フランスの政府は6行の銀行で作るシンディケートからエアフランス-KLMに対し、そしてエアフランスに対する、40億ユーロの融資の90%までを保証しようとして居る。この融資は12カ月で、これに続き、同グループが選べる、1年間の延長オプション付きとなる予定である。

 

これに加えて、フランス政府はエアフランス-KLMに対し、4年間の残存期間と2連続の1年間延長オプション付きで、30億ユーロの直接融資を供与する予定だ。

 

これらの手配は欧州委員会の承認を必要とするが、同グループは、これでエアフランスがその付託に応え、「世界的な危機が厳しく行く手を阻む分野」に適応してくれる事に自信を持って居る。

 

フランスはエアフランス-KLMの14.3%を所有して居るが、フランスの財務経済大臣ブルーノ・ルメールは、国家が引き継ぐことは「現時点でアジェンダに無い」(*TF1、2020年4月25日)として、エアフランスの国有化の可能性については否定して居る。フランス政府は、今後新たな資本関係に参画する可能性はある。

(*TF1:フランスの民間テレビ局)

 

同国の環境連帯移行大臣エリザベット・ボルヌは、エアフランスの2024年までに50%の炭酸ガス排出削減の様な「環境問題での公約がない限り、国家の支援は無い。」と繰り返して居る。ルメール氏はまた、エアフランスはエアバスの「良き顧客」であり続けねばならない、とも述べて居る。 

 

 

エアフランス-KLMは、新たな出資資本を考慮した、構造改革計画を検討して居る

 

エアフランス-KLMグループは、向こう数カ月で纏めるべく、構造改革計画を検討して居る。

 

それには、経済、財務、そして環境での公約、そしてエアフランスの活動と財務実績を改善するための手順の見直しなどがを含まれる予定だ。

 

その意味するところは、エアフランスがより小規模に、そしてより集約的になり、危機を利用して更なるコストリストラを達成すると言うものだ。

 

同グループはまた、危機後の需要水準の視界が改善した段階で、新たな出資資本を募る事を検討する予定だ。最近では、同グループは2020年の財務諸表が承認される頃(2021年3月見込み)に検討となるだろうと述べて居る。 

 

 

オランダはKLMを支援する意向である

 

エアフランス-KLMの14.0%を所有する、オランダ政府は、KLMを支援する意向を示して居る。報道によると、総額20億から40億ユーロの財政援助が検討されて居り、詳細と関連する条件についての協議は続いて居る。

 

一方で、KLMは、危機および、フランス、オランダ両政府が、グループの主要な2つのエアラインに個別の財政支援を与える事が、エアフランス-KLM統合に有害となる可能性を考慮して居ると思われる。

 

 

フランスの他のエアラインも国家支援が欲しい

 

フランスの独立エアラインユニオン(SCARA)は、政府に対し、エアフランス以外のフランスのエアラインへの国家支援として10億ユーロを用意するよう要求した。

 

SCARAは、資金はエアフランスにコロナウイルスパンデミックと戦わせるだけでなく、航空機の発注約束を守り、国際競争に対応する近中距離路線網をリストラする事も可能にするのだと主張し、エアフランスだけが、なぜ、政府の支援を受ける権利を持つフランス企業なのかと疑問を呈した。

 

SCARAは他のフランスのエアラインを併せた収入実績の総計はエアフランスのそれの15%に当たると指摘し、これらのエアラインは「エアフランス同様に、困難に直面して居る」そして、「競争力を改善するために保有機群を更新する事に、同じ様に悩んで居る」とつけ加えた。 

 

 

ルフトハンザグループは、母国からの国家支援を求めて居る

 

ルフトハンザグループは、「同グループの近い将来の支払い能力を継続的に確保する、種々の融資方法」について母国(独、スイス、オーストリア、そしてベルギー)の政府と交渉中である。

 

2020年4月23日、ルフトハンザグループは、2020年第1四半期の実績速報で、この四半期の収入は対前年18%下落し、同社の調整後のEBIT(利息及び税金控除前利益)はマイナス12億ユーロだったと発表した。

 

燃油ヘッジの価値の下落した事が、(2020年4月30日から延期され)2020年5月後半に四半期全体の実績とともに発表される、純利益実績を、更に蝕む事になるだろう。

 

危機が本当に影響を示し始めた最初の月、2020年3月に、ルフトハンザグループの収入は47%下落した。それ以来、その保有機群の殆どは、地上待機となって居て、2020年第2四半期には、ずっと大きな営業損失が予測されて居る。

 

同グループは、非常に低い需要見通しと営業債務、取り消し航空券の払い戻し、そして元利の支払いなどの現有債務から、向こう数週間で44億ユーロの手元流動性が大きく減少すると予想して居る。

 

従って、同グループは、総額で90億ユーロ程度の国家支援は不可欠であると考えて居る。

 

オーストリア航空は4億ユーロの政府保証融資と3億6,700万ユーロの持株を要請したと報じられて居る。スイスの議会はルフトハンザグループのスイス航空とエーデルワイスエアに15億CHF(14億ユーロ)の保証融資を検討する予定だ。多くのメディア報道によれば、ルフトハンザ航空はドイツ政府との交渉を続ける一方で、債権者保護手続きを申請することを検討中である。同グループは、株式、或は議決権を通して、政府に譲歩し過ぎる事を懸命に避けようとして居る。 

 

 

バージン・アトランティックは英国に国家支援を要請して居る。。。

 

バージン・アトランティックの51%の株主であるリチャード・ブランソン卿は、以前、2億5,000万*USDの自己資金をバージン・グループの事業に提供することを約束して居る。彼はまた、同グループの雇用を救う資金を調達する為に、彼個人の所有するカリブ海のネッカー島を抵当に入れると約束して居る。

 

然し、バージン・アトランティックの必要とするものは、リチャード卿のポケットより遥かに膨大で、この起業家は同エアラインに、融資及び/または融資保証の形で5億*GBPの政府援助を要請して居る。

 

英国政府は、既に全ての分野の事業に支援スキームを用意して居るが、(イージージェットは、Covid企業融資機能の下に6億GBPの融資を受けて居る)これまでの所、エアライン分野の専用パッケージには難色を示して居る。

 

バージン・アトランティックの支援を検討する前に、政府は、同エアラインが、まず民間の原資を使い尽くし、そして資金提供する事に利があることを証明すべきだと言う厳しい姿勢である。 

(*5/1現在 USD1=JYE106.93 GBP1=JYE133.15)

 

。。。そして、新たな投資家も求めて居る

 

同エアラインは、現在、融資或は資本の形で、新たな投資家を求めて居て、リチャード卿は、結果として彼の株式持ち分が薄まることを覚悟して居る。バージン・グループはまた、ブランドに対しエアラインが支払う料金を免除し、現金化してバージン・アトランティックとその他のグループの利益のための資金を調達出来る様な、グループの所有する、その他の資産を検討して居る。

 

バージン・アトランティックのブランソン氏の所有でない49%を所有するデルタ航空は、それが外国人所有の上限であることから、この提携エアラインにこれ以上キャッシュを投資することは出来ないと言って居る。それ以上にまた、同社は自らの流動性を維持しなくてはならない。 

 

 

イタリアは、アリタリアの再国有化を計画

 

イタリア最大の地元エアラインであるアリタリアは、2017年5月以来、特別管財人の管理下にある。いくつかのこれまでの法的枠組みの中で、今世紀に入って同社は黒字を出したことが無く、しばしば国営と民間分野の間で所有形態を変えて来た。

 

コロナウイルス危機以前に、アリタリアは、エアライン提携社など、新たな所有者を求めて、管理下で3年以上を費やして居り、イタリア政府と管財人達がしばしば入札の期限を延期して来た。

 

今回の危機は、買い手が見つかる可能性の一縷の望みを断ったため、イタリア政府のアリタリア再国有化の計画に好機が到来した。国は、少なくとも当初は100%の株式を保有し、同エアラインを支援するため7億ユーロを準備すると報じられて居る。 

 

 

コンドルはドイツとヘッセン洲から融資保証を受ける

 

ポーランド航空グループ(LOTポーランド航空の所有者)がドイツのレジャーエアラインであるコンドル・フルークディーンストの買収計画から撤退したのに伴い、ドイツ政府とヘッセン洲政府は同社に融資保証を与えると約束した。

 

以前は、今や倒産したトーマスクック・グループの一部だったコンドルは、コロナウイルス保護支援として2億9,400万ユーロを、同時に同社の現存するつなぎ融資の借り換えとして2億5,600万ユーロを受け取る予定だ。欧州委員会は既にこの融資に国家支援承認を与えて居る。 

 

 

ノルウェーはノルウエーエアに条件連動の航空パッケージを供与する。。。

 

ノルウエー政府は、既に30億NOK(2億6,500万ユーロ)の条件連動の国家支援パッケージをノルウエーエアに与えて居る。

 

ノルウエーエアは、最初の分割分、3億NOKを受領して居る。あと2回の分割分、12億NOKと15億NOKはノルウエーエアの株主資本比率の増加状況による事になって居る。

 

同エアラインの株価の崩落は、新たな資本の調達の難しさを明らかにして居るため、ノルウエーエアはリース元企業や債券保有者たちと、同社の債務の一部を株式に変換するよう交渉して居る。 

 

 

。。。それはほぼ現有の全株式を一掃するだろう

 

もし上手く行けば、この手続きにより、現有の株主達の持ち株比率は僅か5.2%になり、リース元企業は53.1%、債権保有者とその他の債権者の手に41.7%が残る事になる。

 

ノルウエーエアの関連するリストラ計画は、2021年3月末まで、同社の長距離用と、欧州の近距離用保有機群を完全に地上待機させ、最小限のノルウエー国内線の運航のみを存続させる事を必然的に伴うものだ。

 

それから、平常運航(以前に計画されたより小規模な水準で)は2022年の始めまでに戻る、段階的な飛行増強が見込まれて居る。ノルウエーエアの危機前の保有機群は168機(非稼働の35機を含み)からなって居たのに、同社の危機後の保有機群は100機から120機の航空機となるだろう。

 

もし回復が早まれば、増強はより早く開始出来る可能性がある。 

 

ノルウエーエア:回復時の供給量の復旧計画

左図:基本計画(稼働率ー遅い回復の場合)   右図:(稼働率ー早い回復の場合)

  就航する供給席数%:近距離/長距離           就航する供給席数%:近距離/長距離

 1供給量はノルウエーエアの110機~120機の保有機群計画による 

Source: Norwegian Air Shuttle presentation to bondholders, 27-Apr-2020. 

 

エアポルトガル、エアバルティック、タロム、ブルーエア、そしてクロアチア航空

 

フィンランドは、フィンエアに対して、6億ユーロの法定年金プレミアム融資の保証を検討して居る。フィンランド政府はまた、同社が計画して居る5億ユーロの新たな株式発行に参加し、そのうち55.8%の株式を保有する事を検討して居る。

 

アイスランド政府は、レイキャビクからボストン便、及びロンドンまたはストックホルムのどちらかへの便の開設に対し、アイスランドエアに財政援助を提供する事に合意して居る。同エアラインは3週間以上に亘り、1IAK(60万ユーロ)まで支払いを受けて居る。これとは別にアイスランドエア・グループは、新たな株式を発行する準備をして居る。

 

ポルトガル政府は、TAPポルトガル航空が戦略的な企業であり、経営破綻させる訳に行かないと述べて居る。同エアラインは、銀行からの貸付に政府保証を要請して居り、同時に納税の免除或は繰り延べを要望して居る。政府はTAPの国有化の可能性を否定しないと述べて居る。

 

エアバルティックは過半をラトビア国が所有して居り、政府は同エアラインの資本を財政投融資を株式に変換して、36,100万ユーロに増強する事を決定して居る。

 

同政府はまた、同エアラインに対し、新たな資金を投入する準備があると表明して居る。

 

ルーマニアの政府はタロムとブルーエアに対し、救済支援を承認したと報じられて居る。同政府は、コロナウイルスの勃発の影響を緩和するため、6,500万ユーロを両エアラインの支援に提供する事を欧州委員会と協議して居る。

 

クロアチアの政府は、戦略的投資家探しが現在中断して居るクロアチア航空を支援すると報じられて居る。 

 

 

これがEU全体の戦略を採用する良い時期なのかも知れない

 

世界は、ほんの数週間という短時間に劇的に変化し、殆どの国は未だにコロナウイルスの健康への猛襲をどう扱うかに苦闘して居る。危機に於いては、政府の行動様式は内向きとなり、自国民を保護しようとする事は理解できる。

 

だが、この当面の新たな標準が定着し始めるに連れ、今は、エアラインの様な致命的な産業が、短期間で、どの様に支援されるべきか、より合理的で地域に根差した反応をする時期なのである。その意味では、ライアンエアのCEOマイケル・オリアリーは正にそれを示唆して居る。

 

 

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