欧州エアラインのキャッシュ:新たな信用と国の支援がいくらか後押し

当分析はCAPAが2020年6月7日に発表した  

 

European airline cash: new credit and state aid boosts some 

 

をJAMRが全文翻訳したものです。

 

2020年6月15日

 

欧州エアラインのキャッシュ:新たな信用と国の支援がいくらか後押し

 

07-Jun-2020

 

2019年の収入に対する比率で表した、至近の財務報告によれば、貸借対照表上の現金及び現金同等物(cash/cash equivalents)に基づくと、ウイズエアとライアンエアがランキングを主導し、ノルウェーエアが追随して居る。

 

このレポートは、欧州主要エアライングループの流動性残高に関するCAPAの分析をアップデートする物である。

 

未使用の与信枠、国からの支援、及びその他の利用可能な流動性をも含めれば、ウイズエアが未だ首位にある。然し、その他の源資を入れると、フィンエア、イージージェット、そしてエアフランス-KLMがライアンエアより上である(後者は、自から欲すれば、更なる与信枠を拡大する余裕を持って居るけれども)。ノルウェーエアは依然としてランキングの最下位のままである。

 

極めて重要なエアラインの流動性の源泉の一つは、前受収益である。COVID-19の危機の間中、記帳できる実質的な収入が殆ど無い状態で、エアラインはキャンセル便に事前に支払われたキャッシュの払い戻しを、当然ながら嫌がって来た。然し、便のスケジュールがまばらで、更に不確かな現状で、払い戻しが受け取れるのか疑わしくなると、将来の予約をも減らしかねない。 

概要 Summary 

      最新の貸借対照表では、ウイズエアとライアンエアは2019年度の収入に対する割合で、最高のキャッシュ水準を持って居た;SAS、アエロフロート・グループ、ノルウェーエアが最低だった。

 

      その他の可能な資金源泉を含んだとしても、ウイズエアは今でも他をリードして居る。

 

      フィンエア、イージージェット、そしてエアフランス-KLMはライアンエアより先を行って居る。

 

      前受収益が流動性の重要な源泉であり、だからエアラインはキャンセルした便の払い戻しをする事を嫌がるが、これは将来の予約を減らすことになり得る。

 

ウイズエアとライアンエアが、2019年の収入に対する比率で最高のキャッシュ水準。。。

 

下の図表は、至近の報告書の数字に基づく、欧州の株式市場上場エアライングループの現金及び現金同等物(cash/cash equivalents)の残高を示す。

 

大半の例で、これは2020年3月31日付で、殆どの欧州エアライングループの最新の貸借対照表である。

 

SASの場合は、至近の貸借対照表は2020年4月30日付だが、IAGも2020年3月31日の数字に加え、2020年4月30日の数字を出して居る。イージージェットは2020年4月16日にアップデートを発表して居る。

 

現金及び現金同等物(100万ユーロで示す)の絶対水準でエアライングループを順位付けするのではなく、それらを2019年収入に対する比率(%)でランキングしたものである。

 

この表は、既に貸借対照表上にある現金及び現金同等物のみを示して居ることに留意されたい。これには、例えば、合意され未使用の信用枠など、その他の追加で利用可能な流動性は含まれない。

 

2020年3月31日現在、ウイズエアが唯一2019年収入の50%以上の、55%で首位に立って居る。ライアンエアは48%ですぐ後について居り、一方イージージェットとエーゲアン航空グループも2019年収入の1/3以上のキャッシュを報告して居る。ペガサス航空、フィンエア、そしてIAGが25%以上を報告するも、30%を切って居る。エアフランス-KLM、アイスランドエアグループ、トルコ航空そしてルフトハンザグループは僅かに10%台半ばの数値である。

 

。。。SAS、アエロフロートグループそしてノルウエーエアが最低

 

一桁の数値で、順位で最下位の3社は、SAS(収入の9%)、アエロフロートグループ(6%)、そしてノルウエーエア(5%)である。 

 

欧州エアライングループ:現金及び現金同等物の対2019年収入比率(%)*

           青棒:現金比率(%)対2019年収入 赤棒:現金額(100万ユーロ) 

*2019年暦年収入、除SAS:2020年1月までの12カ月。

 

その他の流動性の利用可能な原資も考慮の要あり

 

貸借対照表に既に上がったキャッシュは、利用可能な流動性の全体像を示して居ない。

 

多くのグループが、追加的に利用可能な与信枠を持って居るが、まだ使用して居ない。これらは、実際においては、合意された金額まで直ちにキャッシュ化できる「合意された当座貸越枠」である。幾つかの例では、融資が合意されたが、財務報告の時点ではまだ実施されて居ないものだ。

 

これまでに、国の支援が、貸借対照表の期間最終日以降に合意された例もあった。

 

ルフトハンザグループの例では、90億ユーロをルフトハンザに、14億ユーロ(14億スイスフラン)をスイス航空に(ルフトハンザ支援については、株主と欧州委員会の認可が前提)と言う政府の支援は合意されたが、まだ実行されて居ない。にも拘らず、これらの大きな金額は、事実上2020年3月31日付報告の流動性に加えられるものだ。

 

エアフランス-KLMは、フランス政府から、70億ユーロを融資または融資保証として受ける事になって居る(オランダからの支援は現在交渉中で、まだ決まって居ない)。

 

フィンエアーには、2020年3月31日の同社報告のキャッシュ残高に加え、政府が後ろ盾になって居る、年金プレミアム融資を6億ユーロまで合意して居り、未だ実行して居ない短期コマーシャルペーパープログラムがある。

 

最新の貸借対照表報告の後に、ノルウェーエアグループは4億ノルウェークローネ(3,700万ユーロ)の新規株式を発行し、30億ノルウェークローネ(2億7,500万ユーロ)の政府保証融資への途を獲得した(同社はまた、債務の株式化debt-for-equity swapも実施したが、これはキャッシュ残高に影響は無い)。これらの新たな金額は、ノルウエーエアが2020年3月31日付に報告した22億ノルウェークローネ(2億700万ユーロ)と言うキャッシュに可なりの追加となる。 

 

ウィズエアが未だに首位、その他の利用可能な資金源を含めたとしても

 

次の図表は、欧州の上場エアライングループの、未使用の与信枠とその他の合意された(或は間もなく合意される)流動性の源泉を含めた、利用可能な流動性の残高を、2019年の収入に対する比率(%)で示して居る。また、これは2019年収入と同じ日数で示してある。

 

この図表の以前の版は、2020年3月18日のCAPA分析レポートでも公表されて居る。現在の版では、より多くのエアライングループが追加され(アイスランドエア、ペガサス航空、そしてエーゲアン航空グループ)、データを最新の報告された数字にアップデートしてある。 

 

<関連記事参照> 

ウイズエアとライアンエア、COVID-19用の流動性で欧州をリード」 2020年3月18日

 

ウイズエアは、2020年3月31日の、同社の貸借対照表の2019年収入対比55%と言う、現金及び現金同等物以上に、いかなる追加的な流動性源泉も無いまま、先の版であったと同様、また、このランキングでも首位にある。

 

ウイズエアのCEOジョゼフ・ヴァラディは2020年3月6日のCAPAマスタークラスで、より多くのエアラインが「単なる紙の上の利益のためでなく、キャッシュの為の経営」をすると言う、彼の例にならうべきだと言って居る。

 

<関連記事参照> 

ヴァラディ:「エアライン業界は2~3年かかるのに対し、ウイズエアは1年で回復する。」2020319 

 

フィンエア、イージージェットそしてエアフランス-KLM、ライアンエアの先を行く

 

フィンエアは、上述の様な追加的流動性を持って、利用可能な流動性合計が2019年収入の53%で、第2位に上がって来る。イージージェットは、新たに締結した中長期融資と売却とリースバックの実施で増強され、52%で第3位となった。

 

エアフランス-KLMのフランス政府支援の70億ユーロが、同グループの利用可能な流動性合計を49%(2020年3月31日の貸借対照表のキャッシュだけでは17%に対し)として、4位に押し上げる。

 

ライアンエアは、純粋に現有の貸借対照表上の現金及び現金同等物が48%で、エーゲアンの45%を抑え、第5位である。

 

ルフトハンザグループへの国家支援は、利用可能な流動性を、貸借対照表上のキャッシュのみに基づく、2019年収入の12%から40%に増強する(最終認可が前提)。

 

IAGは利用可能な流動性を、2020年3月中旬の92億5,000万ユーロから、2020年4月30日には、36億ユーロの未使用与信枠を含め、100億ユーロ、即ち2019年収入対比39%に増やして居る。

 

ペガサスの28%は、未使用与信枠で増強されたものでは無く、トルコ航空の13%も同様である。

 

順位表の残りのグループの全てが、貸借対照表上の現金及び現金同等物を超えて追加的な利用可能な流動性を保有して居る。

 

アイスランドエアは収入の15%から19%へと(未使用の与信枠を加えて)押し上げられ、アエロフロートグループは6%から18%(未使用与信枠で)、そしてSASは9%から16%(スウェーデンとデンマークの保証する与信枠で)へそれぞれ押し上げられて居る。

 

ノルウエーエアの利用可能な流動性は、同社の資本リストラにより、2019年収入の5%から13%に上昇したが、依然として欧州上場エアライングループ中で最低の流動性である。

 

欧州エアライングループ:利用可能な流動性、2019年収入に対する比率(%)

     灰色棒:現金及び現金同等物   青棒:未使用与信枠/国の支援/その他を含む             ▲収入期間日数** 

*2019年暦年の収入(除SAS:2020年1月までの12ヶ月) 

**流動性(含む未使用与信枠)については同じ日数 

***ノルウェーエア:2020年3月31日のキャッシュ残高;2020年5月20日の国の融資保証と新規株式発行などの追加的流動性。エーゲアンについては2020年3月31日のキャッシュ残高;2020年5月19日の追加的未使用与信枠。 

Source: CAPA - Centre for Aviation, airline press releases and results announcements.

 

前受収益は重要な流動性の源泉 

 

エアラインの利用可能な流動性の一つの重要な要素が前受収益である。

 

その最大のものは、事前販売収入(旅客から収受したが便の出発まで収入として記帳しない金額)である。

 

第2の要素は、伝統的エアラインにとっては、ロイヤルティスキーム(FFPなどの常顧客プログラム)からの事前収入(ポイントを提携社に売ったが、或はスキームの加盟者が獲得したポイントだが、旅行実施まで収入として記帳しない)である。

 

西欧の5大エアライングループにとって、貸借対照表の負債に区分される、前受収益の額は、下表に示される様に年間収入の15%(エアフランス-KLMの場合)から25%(ライアンエアの場合、全て事前購入航空券に基づく)の範囲にある。

 

 

西欧5大エアライングループ:2019年年間収入に占める前受収益の比率(%)

    淡青棒:ロイヤルティスキーム(常顧客プログラム)    濃青棒:事前購入 

*2019暦年。除ライアンエア(2019年3月までの12ヶ月)及びイージージェット(2019年9月までの12ヶ月)
Source: CAPA - Centre for Aviation, airline annual reports.

 

エアラインはキャンセル便の払い戻しを嫌がる

 

これが、何故、幾つかのエアラインでは、パンデミックでキャンセルされた便への払い戻しには時間がかかり、なるべく代替便を提供して、将来の予約証明書を発行したがるのかを説明して居る。

 

旅客は、当然ながら払い戻しを受けようと、うずうずして居るのだが、エアラインは当然、生き残りの鍵となり得るキャッシュを手放さない様に躍起となって居る。これは、事前購入がほぼ完全に干上がってしまった現在、特に激しい。

 

幾らかスケジュールの再拡大が始まったとしても、旅客は、旅行制限の解除や、ウイルス感染に対抗する航空業界の衛生や健康安全の基準が、もっとはっきり明確化されないと、遠い先の予約はしたがらない。

 

この影響は、将来の事前予約の減退につながる可能性あり

 

問題を複雑にするのは、旅客が、仮に乗る便がキャンセルされても払い戻しが受けられるかどうか定かでなかったら、更に事前予約する気にならない事だ。

 

この堂々巡りを解決する事は、航空旅行への需要を回復させるための、もう一つの重要な要素である。 

 

European airline cash: new credit and state aid boosts some

 

注目した記事6.30

 

ANAの株主総会 

629日に開催されたANAホールディングスの株主総会の模様が短く紹介されている。 

日経では資金について、時事通信では航空会社再編の観測について述べられている。 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60914750Z20C20A6000000/ 

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020062900433&g=eco

 

またYAHOOANA/JALを評した町田徹氏の現代ビジネスの記事を紹介している。 

https://news.yahoo.co.jp/articles/de3ecd8f898fefe8e278e2613f088b3032642367?page=1

 

注目した記事6.30

 

英国の2WQ規制への業界の否定的反応とエアブリッジについての記事(上)をYAHOOで紹介している。

 

https://news.yahoo.co.jp/byline/masutanieiichi/20200629-00185713/

 

注目した記事6.30

 

仏、環境対策で多数の短距離航空路線を恒久廃止へ(6/29 Forbes

 

AFへの緊急援助に紐付け要請

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/7edce8187f25529bd5f0c5b272c91a1b7ef37093

 

注目した記事6.27

 

タイのLCCノックスクートが会社清算 

多くのメディアがこれを報じています。 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60881550W0A620C2FFE000/ 

http://pattayalife.net/archives/32378 

注目した記事6.21

JAL、第71回株主総会についての記事をいくつか紹介します。 

資金調達;5000億円のメドがたち、うち2000億円は調達済み。 

「日本の航空会社の一本化」は全く考えていない。期末配当は無配。など 

トラベルWatch6.19. https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1260204.html 

YAHOO!ニュース6.19. https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1260204.html 

乗りものニュース 6.19. https://trafficnews.jp/post/97344/3

注目した記事6.21

航空旅客需要の回復についてロイターがのべている。 

国内線は来年にも可能、国際線は3-4年かかるとの声。 

ロイター 6.18. 「焦点:国内航空大手、対策徹底で旅客の呼び戻し図る」 

https://jp.reuters.com/article/air-jp-covid-idJPKBN23P0X2

COVID-19関連 JAMRレポート

マラソン講座