“就活の錯覚” 2017年度版

“就活の錯覚” 2017年度版

(客室乗務員・グランドスタッフ就職試験の必勝法を教えます)

 

2017.6.25

主席研究員 光岡寿之

 

新卒採用は、61日から“選考試験”が解禁となりました、いよいよ長い就活の本番です。

本年度の航空業界採用は、旺盛な訪日外国人需要などの影響を受け好況で、引き続きANAJALの大手2社を中心に前年並みの大量採用が見込まれます。

 

因みに、昨年度の航空業界全体の採用数は下表のとおりで、客室乗務員(以下、CA)採用で約2000名、グランドスタッフ(以下、GS)で約1500名、合計約3500名という大量採用でした。

 

(1)客室乗務員募集数(JAL/ANAの過去5年)

 JAL・ANAは、この5年、毎年2社で10001500名規模の大量採用

 

JAL

ANA

 

合計

 

新卒

既卒

新卒

既卒1

既卒2

2012

200

400

600

400

50

 

450

1,050

2013

200

150

350

450

150

 

600

950

2014

200

100

300

500

260

100

860

1,160

2015

330

120

450

600

440

経験者採用

1,040

1,490

2016

350

50

400

750

40

経験者採用

790

1,190

 

(2)グランドスタッフ募集数(昨年、主要5空港、新卒採用のみ)  

首都圏

近畿圏

 

中部空港

成田空港

羽田空港

関西空港

大阪空港(伊丹)

JALスカイ  230

Kスカイ    50

JALスカイ大阪40

ドリームスカイ名古屋 30

ANA成田エアポートサービス 140

ANAエアポートサービス  410

ANA関西空港

50

ANA大阪空港 40

ANA中部空港    30

 

今や誰もが真剣に頑張ればCAGSに手の届く時代になりました。 が、油断は大敵です。

 

私は、過去大手航空会社で採用を6年間担当、今も専門学校で就職指導を行っています。

そこで、今日は皆さんがお陥りやすい“就活の錯覚”・・・ひいては“就職試験必勝法”をお話ししましょう。 これは、20151月に掲載した「就活の錯覚」の内容を本度用に加筆修正したものです。

皆さんの志望する航空会社・旅客サービス会社合格への一助となれば幸いです。

 

 

錯覚1 : 「エントリーシート(志願書)の中の“志望理由”には、CAGSになりたい理由だけを書く」

 

多くの学生が志望理由に、「幼い頃、初めて貴社の飛行機に乗った時、CA(GS)から優しくお世話を受け感激した、私もそのようなCA(GS)になり良いサービスをしたい」と書きます。

これでは、この志願書をどこの航空会社/旅客サービス会社に持って行っても同じです、全く志望理由になっていません。CAGSの職種に応募するのではありません(本当はそうかも知れませんが、)。CAGSになる前に、○○航空会社・△△旅客サービス会社に応募している点を忘れてはいけません。

即ち、志望理由には、○○航空会社・△△旅客サービス会社に入社したい理由と、その上でその会社のCAGSになりたい理由を書く・・・の両方が必要です。

更に、上の志望理由の例では、応募のきっかけの説明であって志望理由としては未熟です、憧れを超えてCAGSになりたい具体的・積極的な理由とその会社にどう貢献できるかを書く必要があります。

 

錯覚2 : 「エントリーシート(志願書)には、他の受験生が書かないような独創的な内容を書き、自分を強く売り込みたい」

 

 1次面接は時間が短いため、面接官はエントリーシート(志願書)に書かれた内容から質問することが多く、目立ちたいために中身の無い奇抜な内容を書いた場合、逆に質問されて答えられず失敗してしまいます。どんな質問にも自信をもって答えられること、面接で聞いて欲しいことこそ、エントリシート(志願書)に書くべきです。それが平凡な「勉強、サークル、アルバイト」の内容であっても、深みのある内容でありさえすれば、目立ち輝くのです。

 

錯覚3 : 「面接では、“模範的な回答”をして、高い評価を得たい」

 

面接官が究極的に見ているのは、“その受験生から、将来、自分の部下に出来る安心感と信頼性を感じることが出来るか否か”です。

本当の自分を見せない優等生的回答では合否の判断ができません、そして、分からない場合、面接官は時間切れで不合格とするしかないのです。

面接は、会話を通しての“お見合い”です、お互いが相性を見ているのです。そのためには、普段の自分らしさ、自然体で臨むことが重要です。聞かれたことに正面から素直に簡潔に返事するだけで良いのです。

また面接室に入室して礼をする際、特にCAの面接で、手をみぞおちの辺りまで極端に持ち上げ大袈裟に礼をする学生がいます、本人はCAらしい挨拶と思っているようですが、面接官は反対に、学生らしいフレッシュさが感じられないと思っています。手は、下げた位置で自然に前に組む、その高さが綺麗で十分です。

 

錯覚4 : 「時間の短い“1次面接”では、頑張って自己PRし、自分を印象付けたい」

 

面接で一番難しい面接は“1次面接”です。なぜなら、短期間に大量の受験者の面接をこなすため、面接時間は短く、面接官は素人面接官が多いからです。

 

従って、作られた模範的な志望動機や自己PRを長々とすると、面接官は、受験生の本当の人柄を把握することもできず、次の質問をする時間も減るため、イライラし心証を悪くするだけです。

 

志望動機や自己PRは重要ですが、多くの受験者が似た内容の志望動機や自己PRを言うため、差はつきにくく印象も残りません。ですから、ポイントを絞り簡潔に答えることが重要です。

大事なのは、受験者個別に質問される2番目以降の質問です。ここで、作られた答ではなく、受験生の人柄を自然体で表現、航空業界への適性を説明出来るかが、合否を決めます。

 

昨今、「グループ討議」が急増しているのは、上記“錯覚3及び4”の弊害の対策として、準備のできないテーマで討議させることにより、各々の受験生の行動や発言から、普段の姿/真実の姿を見ようとしているからです。

 

錯覚5  : 「グループ討議では“司会者の役”をしないと高い評価はもらえない」

 

 与えられたテーマに対する討議内容や論理性も大事ですが、一方、討議を通して集団の中での、役割、参画具合、発言内容などから、“リーダーシップ”“積極性”“協調性”“”論理力“を、試験官は観察・評価しています。

 

 従って、「司会者(発表者)」「書記」「タイムキーパー」に積極的になった方がベターですが、でしゃばりすぎも良くなく、“譲る謙虚さ”も答えです。

 

 役に就いている・いないにかかわらず、「全体の流れに沿って“自分らしさのある発言”をする」、「相手の意見は否定しない」、「常に、発言者に視線を合わせ、余裕ある笑顔で、討議の中に参画する」・・・ことが重要です。

 

錯覚6 : 「語学は、英語力さえ高ければ、その他の外国語や日本語(敬語)は程々でよい」

 

 訪日外国人が2000万人を超える現在、国内線航空会社も含め世界共通語である“英語力”が航空業界において最重要であることはその通りです。また訪日外国人の多くを占める“中国人”“台湾人”“韓国人”のために“中国語”“韓国語”が出来ることも採用ではアドバンテージです。

しかしそれらと同じくらい大事なことは、「日本語能力と日本の教養・常識」です。日本の航空会社のお客様の多くは日本人であり、また外国の航空会社に乗務する日本人CAの主な役割は、その飛行機に乗っている日本人旅客のための日本語要員だからです。敬語など美しい日本語は必須です。

また機内には、観光客以外にも、政治・経済の早い動きの中で活躍する多くのビジネスマンが乗っているため、機内では様々な時事会話や質問を受けることもあります。そのためには普段から新聞やTVのニュースを見て教養・常識を高めることも大事です。

 

例えば、 EUから脱退を表明した国は? パリ協定は何の集まりで、今般脱退を表明した国は? 今日の円とドルの為替レートはいくらですか? ・・・答えられますか?

 

錯覚7: 「受験している航空会社への熱意を示すため、他社を受験していることは言いたくない」

 

 受験している会社が同業他社の受験状況を聞くのは、両方に合格した場合、何人が他社に抜けるかの人数の予測を立てるためです、それによって、最終合格数を水増しするためです。

 ライバル会社を受験しているからといって不合格とすることはありません。ライバル会社の内定を持っていると聞くと、面接官はライバル会社が評価しているのなら、・・・とがぜん、その受験生が素晴らしい人材に見えてくるものです。

逆に、「御社しか受験していません」と言われたら、「ウソをついている」、「視野が狭い」、「こんなストーカーは絶対取らないぞ」・・・と面接官は思います。

もちろん、現在、受験している会社を“第一志望”と説明するのは当然で大事です。

 

そして、“最大の就活の錯覚”は、

皆さんが大学や専門学校の就職部の就職セミナーを受けたり、学外講師の「航空会社受験のための傾向と対策」などの講義を受けたりすると、何だか受験準備ができたと思ってしまうことです。

 

実は、就職部や学外講師が教えてくれているのは、全て「失敗しないため、減点を受けないため」の内容だけなのです。 私がここに書いた「錯覚」も同じです。

例えば、  ・志願書は読みやすく丁寧に書きましょう  

・面接ではいつも笑顔で 

確かに、これらができなければ減点されますが、採用合否の本質である「貴方の個性、人柄、適性」から見れば枝葉末節です。

 

そして、この「貴方の個性と人柄」とつながる“アドバンテージ”“加点”は誰も教えることはできません。 これは、言い換えれば、周囲の知らない貴方の生きてきた20年の人生の集大成であり、「貴方の素晴らしい個性と人柄」をどう選考の中でどう表現するか・・・これだけは自分自身で考えるしかありません。是非、周辺の“減点項目”の勉強と共に、この“アドバンテージのある自分の個性の表現”に力を注いでください。

 

最後に、就活を心理的に楽に過すためのポイントをお話して、お開きにしましょう。

 

1.     仮に、テニスの7セットマッチの試合では4セット勝たないと勝利できませんが、就活は

100敗しても1勝すれば勝利です、1回勝てば良いだけです。

そのためには、年度末まで粘り強く出来るだけ多くの会社を受験することが重要です。

2.     仮に、日本の会社を受験するのなら、面接は怖いことはありません。

面接は会話ですから、聞かれたことに返事をすれば良いだけです、しかも生まれてからず

っと使っている日本語で答えるだけです。

 

航空業界は今年も大量採用です。 是非、頑張ってCAGSになる夢を実現してください。

次は、空港で機内でお会いしましょう。                        

 

 

      

 

以上