MRJ、初の国産ジェット機の全貌 世界の「空」を変える巨大な衝撃 

(コラム)

 

スゴすぎるぞ!MRJ、初の国産ジェット機の全貌 世界の「空」を変える巨大な衝撃 

 

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           航空経営研究所副所長 牛場春夫

 

三菱航空機は今月2630日までの間に、開発したジェット旅客機「MRJ」を初飛行させる。19628月に初飛行したYS-11以来、53年振りに国産日の丸航空機が日本の空を飛ぶことになる。ジェット旅客機としては初の国産機だ。2017年第2四半期にはローンチング・キャリアとなる全日空が国内線に就航させる。

 

 席数は70(MRJ-70型機)90席(MRJ-90型機)、航続距離は15003300kmで、東京から香港(2920 km)、マニラ(3008 km)を飛行圏内にカバーする。機体の一部には炭素繊維複合部材を使用して軽量化し、MRJ-70型機では燃費性能を同種の従来型機より20%程度軽減する。燃費削減は、排気ガスや騒音軽減効果も生むことになる。客室はスリムシートの横一列4席(29インチピッチ)の座席配置とし、座席上部には大型オーバーヘッド・ビン(機内持ち込み手荷物収納スペース)を装備した上で、なおかつ広いヘッドクリアランスを用意している。

 

 要すれば、MRJは運航経済性と客室快適性と環境適合性の3つに優れた、日本が誇る次世代リージョナルジェット機なのだ。

 

 151月の日本航からの32機におよぶ確定発注を加えて、現在まで内外の航空会社6社から確定223機、オプション160機、購入権24機の合計407機を受注している。発注機数の多い順に、米スカイウエスト航空200機(うち確定100機)、米トランス・ステイツ航空100機(うち確定50機)、日本航空32機(確定)、全日空25機(うち確定15機)、米イースタン航空40機(うち確定20機)、ミャンマーのマンダレー航空10機(うち確定6機)と、日米の航空会社5社が現時点の発注機数の98%を占めている。

 

米国航空会社に人気の理由


 米国のリージョナル航空会社が3社合計で、日本の航空会社2 社を抜いて圧倒的多数(約80%)の340機発注しているのは、決して驚くべきことではない。米国では国内線の年間総便数(4.2億出発便)の50%、年間旅客数(6.6億人)の約3分の1を、小型航空機で近距離の2つの地点を中心に結ぶリージョナル航空が担っているからだ。この世界最大のリージョナル航空路線網(その多くは米3大フルサービス航空会社のローカル便、いわゆるフィーダー便路線である)を運航する米国航空会社が、どこよりも性能の優れたリージョナルジェット機を大量に発注するのは当たり前と言えば当たり前なのだ。

 

 各社のMRJ選定にはシビアな運航経済性の追求に加え、大型オーバーヘッド・ビンを装着した客室快適性がその要因の一つになったものと推定される。米国内線では、格安航空会社(LCC)が導入した受託手荷物有料化がフルサービス航空会社にも伝播、機内持ち込み手荷物が激増し、限られた機内収納スペースの奪い合いが始まっている。

この結果、搭乗時間が長引き、定時性維持を困難にさせるどころか、航空機稼働時間の低下にも影響している。航空会社にとって、いかに飛行場の折り返し時間を短縮し、航空機の稼働時間を目一杯向上させるかは採算性向上の鍵となるのだから、この問題を放っておくわけにはいかない。

 

 米国でウルトラLCCULCC)と呼ばれているスピリット航空などは、座席下部に収納可能な小さな身の回り品の手荷物1個のみを無料とし、それ以外の機内持ち込み手荷物が発生する搭乗客からは30ドル以上を徴収しているくらいだ。MRJを選定したリージョナル航空会社は、大型オーバーヘッド・ビン装着機を導入して、この問題に対処しようとしているのだろう。

 

欠かせない、空港の24時間運用


 米国と違って日本では、リージョナル路線網がほとんど育っていない。東京や大阪などのハブ空港を発着する幹線網が、日本の航空路のほぼすべて(90%近く)を構成する。日本でリージョナル国内路線が育たない理由には、南北3500キロの細長い日本列島の地理的問題や、三大都市圏に日本の全人口の50%以上が集中しているといった背景があるが、そのほかにも、採算性の良いリージョナルジェット機の不在が原因となっているといわれている。採算性の良いMRJが就航すれば、日本でもローカル空港とローカル空港をつなぐリージョナル路線がきっと開設されるに違いない。

 

 日本発着の国際線リージョナル路線網も、国内線同様にあまり育っていない。一衣帯水の地理的関係にある日韓と日中路線では、ローカル空港発着の路線網が多く存在する。特に日中間では、最近の訪日中国人旅行者の著しい増加に後押しされて、日本の約20都市と中国の約30都市を結ぶ100以上の路線網が存在し、週間1000便以上が飛んでいる。8月初旬の中国経済の陰りが露呈した後でさえも、日中の航空会社は、新規路線の開設を含む供給拡大に余念がない。

 

 これらの日中路線のかなりの部分が、日本発着の本格的リージョナル国際線路線網となるに相違ない。最近初飛行に成功した中国国産機のリージョナルジェットARJ型機も、型式証明取得に時間がかかっているものの、MRJと競ってこの路線に参入してくるのは時間の問題だ。

 

 日本の国内線や国際線における本格的リージョナル路線網が構築されるためには、もう一つ大きな条件が存在する。空港の運用時間の問題だ。日本の約100空港で24時間運用空港となっているのは、たったの5空港(羽田、中部、関西、北九州、那覇)にとどまる。航空会社にとって航空機の稼働時間は、命取りとなるほど採算性を左右する重要な問題だ。MRJ就航に伴う本格的リージョナル路線網の構築には、空港の24時間運用が欠かせない。

 

                                                           以上

海外事情

 

84~16日の主要ニュース19本のうち、いつもはPhocusWire Dailyにはほとんど表れない法人旅行に関する記事が7本(目次の下線箇所)もあった。取扱高ベースで米国市場のおよそ3割が法人旅行市場にあたり、そしてそれに加えておよそ2割程度のunmanaged business 旅行市場が存在すると言われている。つまり米旅行市場のほぼ半分あるいはそれ以上が、法人旅行で構成されていることになる。それだけ大きな市場にもかかわらず、業界ニュースが少ないのに驚かされる。(尤もこれにはPhocuswrightの親会社であるNorthstar Travel Mediaが、法人旅行市場専門誌であるBTN=Business Travel Newsを編集していることも影響している。)

 

7本の記事を読むと、この市場のセルフ予約ツールの使い勝手が極めて劣悪で、法人旅行管理会社(TMC)のサービスに対しても出張者の不満が多く、その上企業の出張規定のかなり厳しい遵守の要求のために、出張者のモラルと生産性の低下が発生している可能性がある、という何やら暗い話が連続する。要するに観光旅行市場の方が法人旅行市場よりも、旅行の計画や手配のプロセスで、テックを含めてずーっと先進洗練先行しているというのだ。

 

しかし、最近になって、この遅れた法人旅行市場に目をつけた新規参入者たちが参入しつつある。そして彼らは、企業のコスト削減最優先に変えて出張者ファースト、出張者セントリックの戦略を敷いている・・・というようなことが、これらの記事に書かれている。観光旅行のベストプラクティスを法人旅行が真似ようとしている。これはFSCLCCを真似て、FSCLCCの境界線がぼやけ始めている話と似ている。出張先で仕事の前後に休暇旅行までしてしまうブレイジャーの拡大も、法人旅行のセルフインベンションの一つのきっかけとなっているのだろうか。

 

11. OTA4つの神話」は、“高い手数料をふんだくっている悪者OTA”の評判(風評?)に対するOTA の恨み節が書いてあって面白い。(編集人)

 

 

海外事情 916日号B 

 

81923日のニュースに加え、法人旅行に関する特集シリーズ3部作の第1部を掲載する。(お盆休みのために、1週間のニュース配信となります。)

 

前々号の楽天キャピタルの都市エクスペリエンスプラットフォームFever(ロンドンとマドリッドベース)出資に引き続き、「3. 楽天、東南アジアのバジェットホテルに投資」した。

 

2. 電子IDと旅行」は、プライバシーの問題について何も触れていない。生体情報は、整形手術をしない限り究極的個人情報なのでプライバシー保護には細心の、最善の、最大限の注意が必要だ。

 

6. 米司法省、セーバーのフェアロジックス買収を否認」は、この買収が実現しない場合は、SabreNDC開発に遅れが生じる可能性がある。これは、FarelogixGDS代替システムの能力に、DOJが“お墨付き”を与えたということか。(編集人)