パイロット不足深刻化…給料はコンビニ店員並み、減便続出 さらなる規制強化の真相

(コラム)

 

パイロット不足深刻化…給料はコンビニ店員並み、減便続出 さらなる規制強化の真相

 

20151110

航空経営研究所 主席研究員 風間秀樹

 

世界的な航空需要の増大に伴い、2030年には現在の2倍以上のパイロットが必要とされるといわれている。特にアジア・太平洋地域でのパイロット需要の伸び率は他地域と比較して数倍ともいわれており、日本の航空行政当局もこの問題への対応に苦慮している。いかに多くのパイロットを養成するかが喫緊の課題であり、なんとか短期間で多くの乗員を養成するべくさまざまな方策が検討されている。

 

 そんな中、米国ではパイロット養成促進の流れに逆行するような法改正が昨年の夏に施行された。飛行学校を卒業して必要なライセンスを取得した飛行時間250時間程度のパイロットでも、乗客を乗せた航空機の副操縦士として乗務してはならないというものだ。そして今後は、副操縦士として乗務するためにはATPLという機長資格を保持することが義務付けられた。そのATPLを取得するためには1500時間以上の飛行経験が必要で、加えてその取得に当たっては大型機のシミュレーターによる失速回復訓練を含む訓練課目を一定時間こなさなければならないのだ。

 

 乗客にとってはパイロットがより高精度で厳しい訓練を受けてくれることは好ましいことには違いないが、問題は今回の法制化がはたして安全性の向上に本当に必要なのかということである。

 

 今回の法改正のきっかけになったのは、20092月に米ニューヨーク州バッファローで起きた航空機墜落事故であった。この事故では地上で巻き込まれた1名を加えて50名の犠牲者が出たのだが、この事故の1カ月前にはハドソン川に不時着水してひとりの犠牲者も出さなかった事故があり、米国中で航空機事故に対する強い関心が沸き上がっていたことが大きく関係している。

 

 そこで、航空機運航の安全性を確保するためにこれまで以上に厳しい規制を設けるべきだという新たな法律が議会で承認され、それを受けてFAR(米国連邦航空規則)の改定となったのである。

 

 

軍からエアラインへのパイプ強化

 

 では、その結果何が起こったか。

 今、米国は深刻なパイロット不足に陥っている。若年パイロットのエアラインへの供給が途絶えてしまったからだ。米国の中小エアラインは軒並み減便を強いられ、その経営自体も危機に晒されている。さらには有資格者である飛行学校の教官は次々とエアラインに引き抜かれ、飛行学校は現在教官不足となってしまっている。また、仮に飛行学校でライセンスを取得できたとしてもその後エアラインに就職するのが容易ではない。就職できたとしても給料は決して高くはない。コンビニの従業員並みである。

 

 では、米国政府はこのまま現状を放置しておくのであろうか

 

ここからはあくまで筆者の推論である。前国防長官チャック・ヘーゲル氏は昨年2月に、米国議会による大幅な歳出削減計画を受け、米国陸軍8万人規模の削減、空軍のA10攻撃機の全廃などの軍事予算削減策を発表した。余剰となったパイロットの受け皿をどうするか。大きな問題に違いない。

 

 現在米国メジャーエアラインのパイロット数28000人の内、約50%が軍出身である。日本の場合は自衛隊出身者の割合は数%にすぎないが、米国ではパイロットの供給ソースとしては最も一般的になっている。この軍からエアラインへのパイプをさらに太くするために、民間出身のパイロットのエアラインへの道を今回の規制強化により狭くし、民間からのパイロットの供給を抑えようとしているとみることができるのではないか。いわば、政府による民業の圧迫である。

 

 飛行の安全性はパイロットのみが担っているわけではない。航空機の設計・製造メーカー、整備士、管制官、飛行場施設やその管理者、その他多くの人や組織がそれぞれの役割を十分に果たして初めて安全性の向上が達成されるものである。もちろん、パイロットが最終的な責任を負っていることは否定できないのも事実である。

 

 安全性の向上という錦の御旗を掲げているので、若い民間パイロットたちには不満があってもそれを口にできない。こんなことが今、米国の空で起きているのだ。

 

 

 (以上)

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)