東京/羽田空港、アジアのNo.1に=国際線の拡大で北京首都を抜く

当分析はCAPAが2018年2月24日に発表した  

 

 

Tokyo Haneda Airport to become Asia's #1, overtaking Beijing Capital, as international grows

 

  

をJAMRが全文翻訳したものです。

東京/羽田空港、アジアのNo.1に=国際線の拡大で北京首都を抜く

 

24-Feb-2018

 

東京/羽田空港は、北京首都空港を追い抜いてアジア最大の空港の座を取り戻そうとして居る。北京首都は2009年に旅客数で、東京羽田を追い抜いたが、羽田の伸びと国際線による将来的な拡大が、旅客数を押し上げると見られる一方、北京首都は一部エアラインが新たな空港、北京大興に移転して減少する予定である。

 

然し、ランキングとタイトルの意味合いは限定的だ。東京羽田は2020年に、2020東京オリンピックのそなえとして、約53の新たな国際線往復枠を受け取る。

 

以前の国際線拡張と同様に、多くの羽田の新たなフライトは成田の現存便からの移行となるだろう。日本では、ANA対JAL、フルサービス対低コスト、ANAとJALの共同事業提携社対独立系エアラインという構図を考慮して政策が決定されるため、この発着枠の配分は、国内的にも、国際的にも政治的なものとなるだろう。

 

この議論の始まる前でさえ、ANAとその提携社は、同じターミナル内で、国内ー国際の乗り継ぎが可能になる、ANAの国内線羽田ターミナルで国際線も取り扱えるようにする事を意味すると思われる、拡大工事の計画に便宜を図って貰って居る。

 

概要

   東京/羽田は2017年、北京首都に比べ1,080万人少ない8,500万人を扱った。

   旅客は新たな空港施設が開業し次第、北京首都から北京大興に移る。この結果、東京/羽田が再度アジア最大の空港になるだろう。その他の世界的空港(ドバイ、ロサンゼルス)は羽田より大きくなるだろう。

   羽田では国内線、国際線ともに旅客数が伸びて居る。

   羽田には年間39,000枠の国際線発着枠が加わるだろう。

   ANAとその共同事業提携社(ルフトハンザ、ユナイテッド)はANAの羽田国内線ターミナル(ターミナル2)が国際線便も乗り入れる改修工事をすることから大いに恩恵を受ける。

   日本政府は、新たな国際線発着枠をどの様に配分するか、そして日本のハブとして何が最善なのかの難しい議論に直面する。

 

東京/羽田は、5年連続で拡大を果たす;それでもアジア第2の空港

 

東京/羽田は2009年に北京首都空港に抜かれるまで、アジアで最大の空港だった。これは北京首都の自然増と2008年に始まった羽田の旅客数減退の結果だった。羽田の2007年の旅客数記録(6,680万人)は、2013年(6,870万人)まで破られることが無かった。羽田はそれ以降、毎年成長を記録し、2017年は5年連続の拡大の年となった。

 

北京首都は2009年に羽田を追い抜いたが、北京首都が伸び、羽田の旅客数が縮減した後、伸び悩みが続いたために両空港の差は広がった。

 

2011年に北京首都は東京羽田より26%大きくなり、2017年までその差は概ね20%で推移した。その年、北京首都にとっては停滞の、羽田にとっては強力な成長の年は、両者の差が13%に縮まり、旅客数の違いは1,080万人となった。2017年の取り扱い旅客数は羽田の8,500万人に比べ、北京首都は9,580万人だった。

 

羽田はアジア第2の空港に留まって居る。2017年、第3位は7,290万人の旅客数で香港だった。

 

 

北京首都と東京羽田、年間旅客数の推移:2004年~2017年 1

Source: CAPA - Centre for Aviation and airports.

 

2020年に東京羽田は北京首都を上回る可能性あり

 

2020年に東京羽田はアジア最大の空港として、北京首都を上回りそうだ。

 

東京羽田は、国際線発着枠の拡大計画(後述する)の結果、凡そ800万人の旅客を追加して受け入れる可能性があるのだ。

 

これにより、羽田の旅客数は9,300万人近くに押し上げられるが、これは2017年北京首都の9,700万人よりかなり低い。然し、北京は新たな空港、北京大興を2019年に開港する準備中なのである。可なりの供給が北京首都から北京大興に移行する予定で、この結果、北京首都の旅客数は減少するのだ。この移行から生まれて来る北京首都の発着枠は、段階的にしか再配分されないだろう。

 

<関連記事参照>

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東京羽田の成長は、国内線、国際線双方の拡大によって加速する

 

羽田の2017年の成長率7.4%は、この10年間で最大であり、前年を上回って居る;2012年は6.9%だった。国際線旅客数(11.3%)は国内線(4.8%)より、大きく伸びたが、量的な貢献で言えば、国内線が310万人の旅客増を創出し、国際線の伸びは170万人増である。

 

拡大は、大きな発着枠の増加が無いにも拘わらず発生して居る。国内線では、エアラインの搭乗率が上がり、国際線では、米国路線の昼間帯の運航が年間通じて実現した事が好影響になって居る。国際線の旅客は、2010年には、羽田の実績総計の6%から増大して、20%近くを占めて居る。

 

東京羽田、旅客数の内訳(左軸)と総旅客数に対する国際線の占有率(右軸):2006年~2017年 2

Source: CAPA - Centre for Aviation and airport.

 

東京羽田は、2020年オリンピックに先駆けて国際線発着枠を追加しようとして居る

 

東京羽田に於ける発着枠は2020年のオリンピックに間に合うように追加され、日本はその年に年間訪問旅客数4,000万人達成の目標を掲げて居る。

 

2017年には訪日旅客数は2016年の2,400万人から2,870万人に増えて居る。確かに目標達成は険しい道だが、成長も早い。

 

羽田の発着枠の増加は、ちょうど良いタイミングでもある。何故なら、便が増えると言う事は、騒音も増える事を、そして増加する便を受け入れる為には、空域のいくつかの部分を再編しなくてはならない事を意味して居る。これにより、より多くの住民が騒音に曝される事になるだろうが、発着枠の拡大はオリンピックを成功させようと言う大命題の下でなら、より容易に受容され得るからだ。

 

年間訪日旅客数:2008年~20181月 3

Source: CAPA - Centre for Aviation and JNTO.

 

羽田の発着枠(単位は合計数、一対の枠ではない)は年間39,000増え、447,000から486,000になる予定だ。追加枠は全て国際線用である。国際線用には現在、有効な枠が90,000ある(昼間と夜間時間帯)ので、国際線は129,000枠になる予定だ。枠の配分の詳細(昼間、夜間、エアライン別など)は未だ発表されないが、追加ゲートのスペースは2020年3月から使用可能になる計画になって居る。

 

全ての新たな枠が、枠ごとに平均200人の輸送旅客数になると仮定すると、羽田は新たに780万人の旅客を獲得することになる。この数字は近似値であり、枠は狭胴機の運航社に行くかも知れないし(日本のLCC各社はより多くの羽田発着を要求して居る)、一方ANAとJALは、低密度の広胴機を飛ばして居る。

 

発着枠拡大はANAのターミナルで国際線が発着する事を意味する:ANAと共同事業提携社には大きな勝利

 

全ての羽田国際線は、今後ターミナル3と改称される、国際線ターミナルから出発する。この施設は拡張可能性が限られて居る、そのため、代わりにターミナル2が拡張される。

 

ターミナル2は国際線ターミナルから最も遠い位置にあり、ターミナル2と国際線ターミナル(ターミナル3)への移動は明らかに最も時間がかかる。

 

然し、またターミナル2は、JALの経営破綻後の財政支援問題のために、現在の政府とずっと良い関係にあるANAの本拠地でもある。ターミナル2では7つのゲート(全体の約1/3)で国際線を扱う事が可能となる。そのうち2つのゲートは国際線専用ゲートとなる予定である。これらの改修や関連工事には750億円(7億200万米ドル)かかると見込まれて居る。

 

この再開発工事により、同じターミナルでの国内線ー国際線乗り継ぎが可能になるため、ANAには大きな恩典を与える事になる。JALにはそれが出来ないのだ。

 

羽田が長距離国際線に再び門戸を開く事と域内国際線が拡大される事は、羽田が成田に比べ東京都心に近い事から、そして羽田が乗り継ぎの利便性を高める、はるかに多くの国内線路線網を持つ事から、地元旅行者には恩恵である。

 

ターミナル2の開発とは別に、羽田は、現在は成田より劣って居る、ミニマム・コネクション・タイムを空港全体で改善しようとして居る。

 

羽田と成田空港のMCT(分):2017年

 

Domestic to International

International to Domestic

Haneda

70

80

Narita

45

75

Source: Haneda

 

 

然し、ターミナル2に国際線の施設を創る事には難点もある:ANAは国際線の運航を2つのターミナルで行わなくてはならなくなり、ANAとその顧客にとって複雑になり、サービスが2重になることでANAにとっては費用増となるだろう。ANAは出来る事なら国際線の全てをターミナル2で扱うことを望んだであろうが、幾つかの国際線を国内線と同居させる事で、JALに対し大きな優越性を手に入れると言う、より現実的な選択肢を与えられるのだ。

 

この利点はANAとその共同事業提携社双方に与えられる。ゲートの正確な配分は、まだ公表されて居ないが、おそらくANAは自社の国際線を出来るだけ多く、そして選び抜いた共同事業提携社の便をターミナル2に持って来ようとするだろう。

 

2018年2月23日の例では、ANAは、9:00~12:00の間に13便の羽田発国際線を持って居る。これは7つのゲートにとっては、そしてそのうち5つは国内線との兼用では、国際線の数が多すぎる。

 

 

ANAと共同事業提携社(ルフトハンザ/ユナイテッド)及びスター加盟社の時間別 東京羽田発国際線:2018年2月23日 4

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG.

 

ANAはスターの加盟社であり、ANAとの共同事業に加わって居ないスター加盟社もターミナル2に移る事は可能である。ANAの共同事業提携社はルフトハンザ・グループとユナイテッド航空である。ルフトハンザはグループのエアラインの中では唯一羽田に乗り入れて居る。オーストリアとスイスは成田を使って居るのだ。

 

これが、そして他にももっと多くの事が、新たな羽田発着枠の配分後に変わる可能性がある。39,000の追加国際線枠は、凡そ53往復のデイリー便に相当する。

 

多くのエアラインが、新たな、或は追加の羽田乗り入れを希望して居る。ルフトハンザとユナイテッドがより多くの国際線を羽田に持つのに加えて、オーストリアとスイスも羽田に移動する可能性もある。ANAは独自に羽田国際線の拡大を考えるだろうし、と同時に、時とともにあるエアラインがANAにとって重要な提携相手になる可能性もある。

 

 

展望:羽田の戦略的展開と政策のバランス

 

羽田は、主として北京大興が開港する時に、北京首都が旅客数を振り分ける事が原因となって、アジア最大の空港の座を取り戻そうとして居る。

 

然し、ランキングやタイトルは、結局は大きな意味を持つ訳では無い。遥かに大きな影響は、この事態の展開から来るのだ。

 

北京大興の開港と北京首都の再編は、中国国際とスター加盟の提携社たちが、いまだに乗り継ぎ需要の商機のほんの一部にしか摘み取れて居ない、北京首都でのハブ機能を改善する事を意味するのだ。中国東方と中国南方、そしてそれぞれの提携社たちは北京大興にハブを確立するだろう。

 

北京、ソウル、そして東京は、ともに大規模なアジア=北米、アジア=欧州間市場には絶好の地理的位置にある。

 

然し、ANAとJALは国際線ハブが成田と羽田に分断されて居るのを余儀なくされて居る。彼らは一つの空港から運航したいと望んで居るものの、これは実現しそうにない。国際線発着枠が増える事には大きな意義があるのだが、彼らが一体どの国、どの市場を配分されるかについて、激しい政治的な争いを生み出すのだ。日本のエアラインの間では、日本分の枠が地元エアラインにどの様に配分されるか、大規模なロビー活動が繰り広げられるだろう。

 

日本の航空業界にとって何が最善なのか(ANA/JAL対その他の日本のエアライン、ANA/JALの国際共同事業提携社対その他のエアライン、フルサービス対低コストの利害にとって)、そして北京、ソウルと戦う日本の国際線ハブとして、深甚で異論百出の議論が行われるだろう。

然し、必ずや巻き起こる熾烈な政治的駆け引きが、この常に政治的な環境の中で、日本の航空業界にとって最善の結果をもたらすことは無さそうだ。

 

 

Tokyo Haneda Airport to become Asia's #1, overtaking Beijing Capital, as international grows