ムンバイ空港ターミナル再開、インドがCOVID-19蔓延について考え込む中で(インドのコロナ禍の現状)

当分析はCAPAが2021年3月9日に発表した

 

Mumbai terminal reopens as India ponders the spread of COVID-19

をJAMRが全文翻訳したものです。

2021321

ムンバイ空港ターミナル再開、インドがCOVID-19蔓延について考え込む中で

09-Mar-2021

 

航空業界のパンデミックの影響からの「回復」の程度は、国によって異なる。ある国では、未だにあらゆる種類のまとまった航空便の復旧までには、長い道のりがある所もあれば、一方で別の国は非常に近くまで来て居る。

インドは可能性として後者に属して居て、ムンバイの空港が来たるべき国際線の運航に、より多くのスペースを与えるために、国内線ターミナルを再開する中で、このレポートは、インドに於ける比較的に低い感染率について、そしてその原因は何かを検証する。

結果として、航空輸送が正常化を熱望する中で、インドは、少なくとも短期間は、営業的優位性から恩恵を受けるのかと言う質問を投げかける。

概要Summary

      ムンバイ空港のターミナル120213月再開予定。

      国内の低コスト便の交通量は2020年水準の2/3に戻って居る。

      供給席数は、ほぼ2020年水準の2/3まで回復して居る。

      インドはパンデミックから抜け出すアジアの航空業界をリード出来るのか?それは、低いウイルス感染率が続くかにかかって居る。

      その原因は不明であり、逆に変異ウイルスによって悪影響を受ける可能性がある。

外国人がインドの空港に到着した場合の運用手順は、ギョッとさせるもので、全ての責任あるサプライチェーンに対し、この手順について何とかする様に注意を喚起すべきものである。

ターミナル1は2021310日に再開する

ムンバイ・チャトラパティ・シヴァージー・マハラジャ国際空港(MCSMIA)は、2021226日、コロナウイルスの影響により、2020年早々以来一時的に閉鎖して居るターミナル1の運用を、2021310日に再開すると発表した。

ゴーエア、スターエア・インディア、エアアジア・インディア、そしてトゥルージェットは、2021310日に彼らの全ての国内線便をターミナル2からT1へ移すことを計画して居るが、他方インディゴは一部選ばれた国内線をT1に移す予定だ。ターミナルはそもそもサンタクルス空港として知られて居たが、主として国内線低コスト便の基地である。

 

国内線と低コスト供給がこの空港を存続させる

全供給席数の72%が現在のところ「低コスト」であり、87%が国内線である事から、何故、この空港の管理者がこの専用空港を、急ぎ、そして全面的に再開したいかが良く判る。

MCSMIAは、大都会ムンバイへの表玄関であり、インドで2番目に繁忙な空港である。

今や、アダニ・グループが過半を所有して居り、以下の最近のCAPAレポートが報じて居る。

<関連記事参照:アダニ・エアポーツ:インドに於いて更に拡大、ムンバイにより多くの投資

 

MCSMIAに於ける旅客交通量の伸びは、2015年以来減少して居て、ウイルスの影響が感じられる前の2019年には▲6%の停滞に陥って居る。

2020年には、65%の減少を記録して居るが、その数値は20211月には▲60%と僅かに改善して居る。(20212/3月までは、まだ「正常」な運航の月との比較になる)

 

ムンバイ・チャトラパティ・シヴァージー・マハラジャ国際空港:旅客数と伸び率、2010~2021

 

青棒:旅客数 黄線:旅客数伸び率

Source: CAPA - Centre for Aviation and Airports Authority of India.

 

時間ごとの稼働は依然として高い

現在のMCSMIAの稼働は、ある日の時間ごとの供給席数で測った以下の図表の様に、かなり幅広い。

この図表は202132日のターミナル2のものである。24/7運用で、0600から0100までの間、可なりバランスの取れた使用がなされて居る。

 

ムンバイ・チャトラパティ・シヴァージー・マハラジャ国際空港:202132日、ターミナル2での時間ごとの供給席数

 

青棒:出発 黄棒:到着

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG.

 

供給は、2020年の61%に回復した

3番目の図表は、パンデミックの供給席数全体への影響である。

20214~20217月の間での断続的な回復の後で、グラフの線は概ね上向きで、20213月の第1週に2020年の同じ週の水準の61%に至るまで、本質的に途切れ途切れが弱まって居る事を明らかにして居る。

この図表の2つの線が、今年の線(緑色)が依然伸び続けて、20214月の始めに交わるかの様に見える。

 

 

ムンバイ・チャトラパティ・シヴァージー・マハラジャ国際空港:週間供給席数総合計

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

予想ほど高く無いウイルス感染者数-インドに競争の優位性を与える可能性があるか?

この事は、インドに於けるパンデミックのより広い意味に疑問を投げかける。ウイルス感染者数が予想されたほど高く無い特異な状況、そして理由について皆全く明らかになって居ない。確かに、インドはアジアの航空業界がパンデミックから脱け出すのをリードするかも知れないと示唆する声さえ聞かれる。

CAPA/Humanitarian Data Exchangeからのデータによれば、インドの感染者総数は2021228日に11,112,241人に達し、そのうち1,063,491人は回復して居る、過少報告を考慮したとしても異常な数値である。

更には、202010月以来、可なりの数の現感染者数の改善が示されて居て、228日現在、168,600人に下がって居る。

 

COVID-19: インド国内での蔓延

 

:確認された感染者数、:現感染者数、:治癒した感染者数、:確認された死者数

Source: CAPA - Centre for Aviation and HDX - The Humanitarian Data Exchange

 

インドの毎日の平均感染率はブラジルと米国を遥かに下回る....

日々の感染負荷(新たな感染者数)についての更に深い研究では、グラフがベルの形のパターンを辿り、20209月から着々と減って居り、225日には16,600人と、7日間平均14,300人以内に入って居る。

これを米国(77,800/69,550)とブラジル(66,000/51,400)の数字に比べて見よう;両国ともインドに比べ、遥かに少ない人口の国である。

実際、インドの感染者数合計11,112,241人は、全人口の0.8%にあたるが、これに比べ 、矢張りとても貧しい都市部を持つブラジルは4.9%、そして米国は驚くべき8.6%である。

 

 

インドにおける毎日のCOVID-19の新たな感染者数:20203~20212

Source: JHU CCSE COVID-19 Data.

インドの現感染者の数が、168,358人まで落ちる一方、この国は依然として世界で2番目に感染の影響を受けて居る国であり、現感染者数では世界中の痛打を受けた中で13番目にランクされて居る。
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つの最も影響を受けた各州の感染者数の合計は、マハラシュトラ州(2,161,467),ケララ州 (1,061,341)、カルナタカ州 (951,600)、アンドラプラデシュ州(889,974)、そしてタミナドゥ州 (852,016)である。

そして全人口の1%以下に収まって居る...

然し、インドの巨大な人口を勘定に入れると、この望ましくない統計数値は、この国の規模が為せる技に過ぎない事は明らかだ。意味のある数値は、人口に対する感染者数で、僅か0.8%と非常に低い。

一体何が起こって居るのかを説明するのに、多くの理論が唱えられて居る。ワクチン接種計画は、148万クロール(約1,500万人分)が投与され、急速に進められて居るが、それでも人口の1.1%に過ぎないため、ワクチンは統計上、重要な役割を果たすには時間も、流通量も不十分である。

多くの初期のモデルが何百万人もの死者を予言したが、一貫した感染検査と、デリーの様な都市部での何回かの短期間の激しい感染の突出にも拘らず、死亡率と新規感染者数は、20209月中旬から下降し始め、そして以来、事態は目覚ましく改善して居る。

今や毎日の感染者数平均が、1万人を下回り(ここ12週間で小規模な感染突出はあったが)、そしてこの疫病による毎日の死者数の7日間の移動平均が、100人以下に落ちて来て、インドの半数以上の州はCOVIDによる如何なる死者も全く報告して居ない。かつて感染スポットの一つだったデリーは、10カ月間で初めて一日のCOVID死者が一人も無かったのを記録して居る。

更には、百万人当たりの死者数は110から115と、欧州あるいは北米よりずっと低い。また、感染者数の減少は感染検査の数が少ないからでは無い事も明らかである。

 

「集団免疫」が達成されたのか?見解は多様である

この疫病の厳しさの度合い、そして犠牲者数が、比較的に低い事に対する、可能性のある原因は山とある。

提示されたものの中には、「集団免疫」(集団の大部分がワクチンにより、或は疫病の大々的な蔓延により免疫を獲得した時)の状態になったと言うのがあるが、多くの専門家はそれには遥かに到達して居ないと考えて居る。

最近の調査:抗体について取り上げた研究では、成人の21%、そして子供の25%が既にこのウイルスに感染して居た事を示唆して居る。彼らはまた、スラムに住む人々の31%が、スラム以外の都会の人々では、そして田舎の住民の19%がこのウイルスに感染して居た事を発見して居る。

これは、プネーやデリーの様な大都市の幾つかで報告されて居る数値、50%を可なり下回って居る。それらの地域で更に高い水準のウイルスへの感染の証拠があり、これらの場所では集団免疫に、より近い可能性をほのめかして居る。然し、数値は依然、全体として低すぎる。

インド公衆衛生財団の理事長は、小規模のポケット(孤立した例)は存在するかも知れないが、この国に、集団免疫を獲得したとを想定出来る地方は無いと思うと述べた。よって、高度に感染が蔓延して居る土地でウイルスに未だ感染して居ない人々は、コミュニティの中で保護され続けて居るのだが、もし感染水準がより低い所へ出かけた場合は、弱いだろう。

その他にも感染者数が落ちて居るのには、幾つか違った理由があり得るだろう。

 

インドの広大な田舎では、影響も限られるパッチワークのパンデミック

まず、インドは、感染者数が、違ったタイミングで、国内の地域によって増加したり減少したりする「パッチワーク」パンデミックを体験して居るのだ。都市部では、特に人口過剰のスラム地区で、そして開発が進んだ都市化された地区で、小さな町や村に比べ、より多くの人々が感染して居る。これら全ての地域で、彼らのウイルスへの感染状況は、大きく異なって居る。感染者数は、今や殆どの都市部で鈍化して居るが、田舎では未だにちょっとした謎のままである。

デリー、ムンバイ、プネーそしてバンガロールの様な幾つかの都市では、60%に上る人々がウイルスの抗体を持って居るのが見つかり、と言う事は全てが恐ろしく不均等なのである。

もう一つの説明は、インドは、主に多くの感染者が全く無症状であるか、非常に穏やかな感染であるために、多くの感染例を見逃した、また見逃し続けて居ると言うものだ。

一方で、もし多くの無症状、或は極めて穏やかな感染例があるなら、既に集団免疫の閾値が達成されて居たかも知れないと言う議論に重みを加える事になる。然し、これは何故これほど多くのインドの感染例が穏やかなものだったのかを説明できない。

同様に、死亡率が過少報告されて居る可能性もある。

インドは、死亡を証明する記録が貧弱で、多くの人々が死亡の記録がなされる病院でなく自宅で死亡して居る。

また、そのような、過少報告は、もしそうだった場合、大衆にパニックを起こさせたり、病院を大混乱させて居ない。インドには約60万の村がある。もし毎日、それぞれの村で一件のCOVID-19による死者が報告されなかったとしても、公衆衛生のシステムが混乱する様な事は無いだろう。

 

都市封鎖が役立ったかも

ウイルスの蔓延を止める為に、20203月下旬から70日間続いた、強制全面封鎖は、感染を防ぐのに役立ったかも知れない。

マスクの着用を拡大し、物理的距離を保つ事を強化し、同時に学校、オフィスの閉鎖と人々が家からリモートワークにしたことから、厳しく打撃を受けた各都市での伝染の速度は鈍化した。

一方で、主として西欧諸国などの他の多くの国では、似た様な事をしたが有効な成果が得られなかった。それらの国々が強制を緩和した時には、ウイルスはすぐに戻って来たが、多分マスクと距離をとる事が守られた所為で、インドでは起こらなかった。

科学者はまたインドでの死亡率の低さの原因として、若い人口の多さ、混雑した都市部との繋がりが無視できるほど少ない、巨大な田舎の人口、遺伝学的なもの、貧弱な衛生状態(?)、そして肺を守る充分なタンパク質などを上げて居る。

言い換えれば、原因は依然として不明である。

 

新たな変異ウイルスの到着が、再び計画をひっくり返す可能性がある

インドが直面する可能性としてあるひとつの問題は、未知の変異ウイルス(英国、ブラジル、そして南アフリカのもの)の何れかが到着する事である。

英国変異ウイルスは、20209月に検知され、同国での第2波を引き起こしたが、以来、50ヵ国以上で見つかり、世界の主流の系統になって居る。

それは、変異株であるが、そして更にもっと多くがあり得るのだが、インドの計算を全て覆す可能性がある。同国には、多くの科学研究所があるが、若しこれらの変異株が到達した場合に変異株を未然に防ぐため、ゲノム配列決定の技術を緊急に高める必要がある。

国際線の便が再開されると、そのどれかがムンバイ空港に到着する可能性がある。所有者の変更と関連して、航空便の再開は国際航空業界と言う観点でムンバイの、同時に、まだ建設中のナヴィ・ムンバイ空港の存在感の拡大に大いに役立つだろう。これは航空業界という世界全般に於けるインドの存在感を若返らせる事に役立つだろう。

少なくとも、新しいウイルス株が水際で留められる限り。

 

インドの外国人入国者の運用基準は迷宮の様だ

一方で、所轄官庁は気が気ではない。以下は、インドに外国人旅客が到着した際の取り扱い手順フローチャートである。もし他の国々が、国を再開するときに「新たな常態」とはどの様なものなのか、誰かが知りたいと思うなら、これを詳しく調べて見るのも悪くない。

このSOPは、エアライン、空港、旅行会社、観光局、DMC、ホテル業者たちへの課題を投げかけて居り、実際に、この業界に関係する誰もが、インドに到着した外国からの旅行客に、出来る事は何でもして上げねばと頑張るようにと言って居るものだ。

旅行しようと思い立った人が、ただ単にインドに入国する為に、ケララの浜辺で日光浴をするだけの為に、この数々の極端な要求項目を通過しなくてはならないのなら、寧ろ家に居てズームで会議を開こう、或はゴルフを1,2ラウンドする事にしたとしても、誰も責める事は出来ないだろう。

 

 

インドへの外国人入国者のための現行運用手順書