ジェットスタージャパンの今後について思う

ジェットスタージャパンの今後について思う


 

日本のLCCの草分け的な存在の1社であるジェットスタージャパン(以下、Jetstar-J)が、先般、20146月期決算を公表した。 事業の収益性は依然悪く、資金的にも厳しい。 

示された至近の経営実績、ならびにJAMRで試算した搭乗実績に基づき、今後のJetstar-Jの経営を展望し、課題を整理してみたのでご紹介する

その際に参考として、業績好調のPeachや、同型機や類似型の機材で運航しているスターフライヤー、スカイマークとの比較も加えた(3社の実績は20143月期)。

(なお当研究所で概算推定した搭乗実績は、国交省資料などに基づいている。)



    (要旨)年内にも、JAL等から追加資金が注入されるであろう。

       更なる収支改善策、中でもコストの引き下げが急務である。

JAL主導による強力なリストラが必要だろう。



1.急がれる資金の追加投入


Jetstar-Japanは、6月末決算で100億円を超す赤字を計上した。

昨年11月にJALとカンタスから追加出資された110億円の資金が1年にして消えた。

繁忙期である夏休み月を除き、毎月10億円ずつ消えた勘定になる。

6月末の流動資産は38億円であり、追加出資前の昨年同時期並みまで減少している。

流動資産には営業未収入金や前払金、貯蔵品などが含まれているため、手元資金は30億円を下回っていると推定される。

経験的には、航空事業の運営には、最低でも費用の0.5か月分程度の手元資金(少なくとも十数億円程度)が不可欠である。計算上では11月末頃には資金がショートする。また6月末で純資産は4億円となっているが、今では債務超過状態になっている可能性が高い。

JALが、間接的ではあったが、追加投入の意思を早めに発表したのは、それらも見据えてのことであろう。

 

(参考)Peachの場合(20143月決算)

 営業収益は、Jetstar-Jとほぼ同じの約300億円であったが、20億円の営業利益を計上した。Peachの流動資産194億円の多くは現預金やその同等物と考えられ、資金的に余裕があると言えよう。(150億円の出資が、ほぼそのまま手元に残っている勘定になる。)その後今日までの客況からも、その好調は続いていると判断される。


 

 

1.Jetstar-Jの収益性指標(Peachとの比較


Jetstar-Jの収益性の悪さを分析するにあたり、Peachとの比較を行った。

(注1)両社ともに平均路線距離は1000km前後(スカイマークやスターフライヤーも同様)であり、発着ベースでの指標比較はほぼ妥当と考えている。

(注2Jetstar-Jの便数、席数、旅客数はJAMRの推定によるが、実際の数値と大きな

    乖離はないと考えている。

 

    営業利益はPeach20億円に対して、Jetstar-Jは▲107億円、差は▲127億円。

これを収入単価差、搭乗率差、コスト差の3要素に分けると;

  収入単価差▲46億円;Jetstar-Jの旅客当り収入単価は8,800円でPeachより▲14%低いため。

  搭乗率差▲26億円;Peach84%に対してJetstar-J77%。

  座席コスト差▲55億円;Peach8,000円弱に対して、Jetstar-Jの座席コストは9,200円強。これはスカイマークの8,800円をも上回る。

となり、座席コスト差の影響が最も大きい。

 

    便当りでみると、Jetstar-Jの収入は122万円で、Peachより格段に少ない。

収入単価が低いことと、搭乗旅客数が少ないことによる。

他方費用は166万円と、Peach144万円を大きく上回り、スカイマークやスターフライヤーをも上回る。低コストを標榜するLCCがこのコストでは苦しい。

 

2.収益性改善のために

 収入単価向上、搭乗率向上、座席コスト引下げの同時達成が必要であるが、

 

① 特に重要なのは前年に比べて改善度が低い座席コストの引き下げであろう。

高コストの理由として、関空展開の遅れによる余剰機材の費用が挙げられている。確かにその要素はあるだろう。しかしそればかりとは考え難い。

もともと機材費が費用に占める割合は10%程度だからである。

他方、チェーン展開する他の合弁会社に見られるように、オーストラリアのJetstar本社に対する種々のライセンス料も大きいのではないかと推測される。

また機材も、豪州の本社主導で提供される機材数にあわせて路線を張るのではなく、日本の環境を十分考慮しての適正路線に機材数を合わせるのが本筋である。

 

② 収入面についても関空の有利さ(空港運用時間や関西地域における市場ハンデ

の低さ)に対して、「成田のハンデ」(運用時間、羽田に対する市場ハンデ、LCC振興策等)が否定できないが、戦略の差もあると考える。

日本のマーケットの特性に合わせて、「お得感のある運賃(安さと信頼・好感の合わせ技)」を目指すPeachに対して、Jetstar-Jは「格安運賃(安さ)」で勝負しているとういうことである。即ちPeachは「信頼(欠航率の低さ等)と好感(使い易さ、親しみやすさ)によって、LCCとしては若干高くても既存会社よりは十分低い運賃で、高い搭乗率を得ている」のである。

一方Jetstar-Jは、安さによって旅客を獲得するという、世界のLCCの典型的な戦略によって動いていると考えられる。この差が、両社の旅客単価と搭乗率の差にも繋がっていると思われるのだ。(勿論根底にある成田ハンデも否定できない。)

 

3.今後のJetstar-Jのあり方、JAL主導での強力な体質転換を!


2年後の黒字化を目指して投入された追加資金が1年にして消失し、しかもいまだ黒字化の青写真が見えない。ここで再び資金が追加投入され、若干の収支改善があったとしても、高コスト体質は変わらず、基本的には今と同じ赤字状態が続くことになろう。JALが投入した資金が、オーストラリアのJetstar本社に流れるという「貢ぐクン状態」の温存になりかねない。日本では無名であった「ジェットスター」ブランドを、JALの資金力で日本国内に定着させる構図が続いているのだ。

 

「成田ハンデ」はあるものの首都圏マーケットは他の地域とは比較できない程大きい。また世界的な動向を見ても低価格事業に対する潜在需要は極めて大きい。

国が成田空港をLCCハブにするという方針の下に動いていることも、将来の成長を担保するという意味で価値が大きい。LCCにふさわしい低コストが実現できれば、将来の発展余地は他LCCを大きく凌ぐ。

そのためにはオーストラリアのJetstar本社方式の事業運営に任ねず、資金の再投入を契機に、JALのリーダーシップにより、コスト引下げと路線展開や運賃戦略について、強力なリストラを進めるべきであろう。  

 

                                                                以上

Y.A/H.U/H.I/K.M

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)