2023.5.9.

 

需要はどこまで回復した? ~GW期間の旅客実績~

  国内線はコロナ前の85%まで回復、国際線は62%まで

   ANAは供給圧縮が大きい、他方でPeachの国内線は大幅増

 

国内航空主要11社がGW期間中(4/295/79日間)の旅客実績を発表した。

巷間、客況の大幅回復が叫ばれているが、実のところコロナ前と比べてどこまで回復しているのだろうか? 
主にコロナ前の2019年と比べながら、数字で検証してみた。

 

 

1.実績および前年対比


(国内線)

   このGW9日間の旅客実績は前年より+15%多い278万人であった。

この間座席数は+2%増であり、搭乗率は+9ポイント上昇の76%であった。

 

  Peachが前年より大幅供給減となり、ANAが大幅増となっているのは、前年にANAPeach
運航便一部移管があったことも影響している。

 

  LCCPeachJetstar-J、そして中堅FSCAirDoが搭乗率で90%を超え、SKY(スカイマーク)も
85%の高レベルであった。

 

  JALは搭乗率でANAを大きく上回った(但しコロナ前に比べれば遥かに低い)。

 

(国際線)

 

   コロナの影響を強く受けていた昨年と比べると、今年は供給座数が2.5倍、旅客数が
2.9倍の39万人と伸び率は大きく、搭乗率も改善したが、完全な回復にはなおかなりの

   距離があるといったところである(後述)。

 

 

2.各社の駈け込み需要は?

 

421日時点での各社の予約状況と最終実績を比べ、その差を「駈込み需要」とみなすと、

 

  国内線では約34万人(搭乗率9ポイント分)がそれにあたる。
駆け込み旅客数はANA/JALが多く、搭乗率上乗せはLCC3社とSKYSFJ(スターフライヤー)が大きい。

 

 

  国際線は駆込み需要が少なく、搭乗率にして4ポイント分(2万人相当)である。

 

3.コロナ前との対比

     各社の2019GW実績(4/265/611日間)x9/11日をコロナ前数値とした。
 Peachの2019値には、統合前のVanilla Airの実績を含んでいる。

 

(国内線)

  全社の供給座席はコロナ前の98%(364万席)、旅客数は85%の278万人でなおコロナ前を▲48万人下回るレベルである。

 

   特にANAの減少が目立っている。
供給減(▲9%)、旅客減(▲26%、▲37万人)で搭乗率も▲16ポイント低い。

 

   ・  JALも傾向は似ていて、供給▲3%、旅客減は▲15%(▲16万人)、搭乗率▲11ポイントである。

 

  Peachは供給、需要ともに1.5倍と大幅増で、搭乗率も全社中最高の91%である。

  反対にJetstar-Jは供給を削減し(▲10%)、需要も▲12%となった。

 

(国際線)

  総供給はコロナ前の70%で、総需要は62%、搭乗率も▲9ポイント下回っている。

 

  ANAは供給▲35%で、需要は▲40%、搭乗率は▲6ポイント低下して76%。

 

  JALは供給▲25%と減少はANAより小幅だったが、需要は▲37%と大きく、
搭乗率は▲14ポイントも低下して、レベルもANAと逆転した。

 

     既存の LCC3社は供給を復元しつつあるが、大手2社より遅れている。

 ・ 前年登場のZIPAIRは28千人の旅客を獲得し、搭乗率は76%であった。

 

 

 

4.旅客シェアの変化(コロナ前との対比)


(国内線)

  ANAが供給減の影響で、旅客シェアが43.437.7%と▲5.7ポイント低下

 但し傘下のLCCPeach4.17.2%と+3.1ポイント
上昇

 SKY6.47.6%と上昇

  JALJetstar-Jはほぼ横ばい。

   ADO、ソラシド、FDAも若干上昇。

 

  (国際線)

   ・ ANAが▲1.3ポイントシェアを落とし、JALが+0.6ポイント
    増やした。
    ・既存のLCC3社の復便が遅れている分、シェア」減となり、  
      新規参入のZIPAIRが7%強のシェアを獲得した。

 

 

結論として、需要回復のムードは急上昇しているが、GWの実績で見る限りは、国内線はもう一息、
国際線はまだまだこれからと言えそうな感じである。

 

                                                      以上(赤井)