2023.5.17.

スカイマークとスターフライヤーの2022年度決算

  営業損益;SKYは黒字、SFJは赤字

 

 

スカイマーク(SKY)とスターフライヤー(SFJ)の2022年度決算について比較分析しました。
(注)指標は筆者独自の手法で算出したものです。

 

1.収支状況

 

  SKYは売上高847億円で営業損益35億円を計上、
SFJ
は売上高323億円(SKY38%)で、▲13億円の赤字であった。

また売上高の42%はANAへのコードシェア座席の販売収入であった。

 

 

  但し今後の利益から発生する税金の相当部分はこれまでの赤字その相殺で軽減できるものとして
調整(税金の繰延効果)したことが大きく影響して、最終利益はSKY57億円、
SFJ
1億円の黒字となった。

 

2.輸送・稼働実績と指標

 

  保有機材はSKY29機、SFJ11機であり、
1
機当りの収入は両社ともに約219億円、機材稼働も1機日当り5便とほぼ拮抗。

(1便当たりの距離はSKYがやや長い)

 

  便数は機材の規模とほぼ同じで、SFJSKY39%。

しかし機内の座席数に大きな差があって、SFJSKY33%である。

SKYLCCに近い高密度(スシズメ)の177席でSFJより18%も多い。

SFJ; 大手2社(165席程度)よりゆったりの150席。

 

  SKY959万席で702万の旅客を獲得し、搭乗率は73%。

 

便あたりにすると、177席に旅客は130人。
SFJ
315万席のうち144万席をANAに販売、自社席171万席で117万人の旅客を獲得し、

搭乗率は68%。 便あたりにするとANA70、自社席82に旅客が56人。

 

3.収益性指標

 

1便当りの収益性をみると;

 

  SKYは収入156万円、費用150万円で、営業利益は6万円。

  SFJは収入154万円、費用160万円で、赤字が▲6万円。

即ちSFJの赤字は収入が2万円少なく、費用が10万円多いことによる。
費用の差がより大きく影響うしているといえる。

 

旅客単価※と座席コストをみると;

 

  旅客単価はSKYが約12,000円なのに対し、SFJが約16,000円と約4,000円(33%)高い。 (SKYは搭乗率の高さでカバーして収入を稼いでいる。)

  座席コストはSKYの約8,500円に対し、SKYが約11,700円※と約43%も高い。

1便に費用が多いことに加えて、座席数が少ないためである。

 

  採算ライン(旅客単価と座席コストの関係でみる)は、SKY70%、SFJ74%である。

即ちSKY70%の採算ラインに73%の搭乗率 →その差3ポイントが利益となっている。

SFJ74%の採算ラインに68%の搭乗率 →その差6ポイントが赤字となっている。

 

      ※旅客単価; ここでは旅客以外含めた収入を旅客数で除した値を旅客単価とした。

SFJの座席コスト; ここでは費用からANA収入を控除したものを自販座席数で除した値を

 

                    自販座席のコストとした。

. 財務状況

 

 (SKY

・ 12月に東京市場に株式再上場、その際発行した新株式により139億円を調達、
うち68  億円を累損一掃に充て、71億円を資本に積み増した。

   その結果今期の純利益57億円がそのまま利益準備金となった。

 

  手元資金は期首から倍増して225億円となった。
ただし借入金が310億円残っている。
300
億円超をリース機返還時整備への引当金として計上しているが、それに見合う額を手当てして、手元資金とは別計上している。

 

  これまで累積した税務上の赤字は、今後の黒字で解消できるものとして、その税金軽減分229億円を繰延税金資産として計上している。

 

  旅客収入は原則として予約成立時に得て「前受け債務(=契約負債)」として処理し、
搭乗によって収入とする。 契約負債の122億円は搭乗の約1.7カ月前に得ているという

ことを示している。

 

SFJ

  90億円を増資等で調達したが、累損を解消できず、純資産は18億円にとどまっている。

  借入金は31億円と少なく、手元資金はそれを上回る67億円。

 

 

  前受け債務にあたる契約負債がほとんど無いのは、旅客収入のほぼ全てがANA経由で入る
(=ANAの予約/発売システムの中にあって、旅客からの収入は一旦ANAの財布に入り、
  搭乗することによってそこからSFJに支払われることによる)

 

5.まとめ

   以下はあくまでも筆者の個人的見解である。

 

SKY) 低コストで高搭乗率を達成し易い小型機を需要の太い市場(羽田等の基幹空港)に

投入して、高密度座席・低運賃・低コスト・高搭乗率で稼ぐという点ではLCC事業モデル
に位置づけることができよう。(いわば羽田ベースの準LCC

 

コロナ前は安定して80%超の搭乗率を達成し、利益率も10%超を維持してきた。

コロナが落ち着けば2023年度は更に高い(コロナ前並みの)収益性を得られるものと

思われる。 

但しネットワークの拡大は、現在より小さい市場への拡大がメインであろうから、その部分の収益性は易しくはないであろう。

 

SFJ 150席というプレミアム客室仕様で収益性を維持するには高収入単価が不可欠となるが、
その需要は大きなものではないことから、収益性上路線展開も選択的なものとなろう。

 

       このため安定的利益計上のためには、コードシェアによるANAからの固定的定収入獲得と、
自社座席規模の圧縮(搭乗率の高位維持)、そしてANAへの業務委託による生産体制の
スリム化によるコスト圧縮が今後とも必要であろう。 


150
席という客室使用は、強味であるとともに、一種の足かせともなると思われる。

 

        

 

                                                   以上(赤井)