2017年 運航乗務員の動向展望

2017年 運航乗務員の動向展望

 

2017125

 主席研究員 樫原利幸

 

今年も乗員不足が各社の事業計画に影を落とすであろう。

 

2017年は日本航空の破綻から7年目である。日本でのLCCの発足やSKYMARKAIRDO,など中堅航空会社の運航を可能にしてきた日本航空のOBパイロット達が一線を退く時期が始まる。また若くても制限乗務等を理由に整理解雇された者、破綻後の日本航空の待遇に不満を持った若手の優秀なパイロット達は海外の航空会社にも流れ、我が国の航空会社はギリギリの運航を強いられている。国も危機感を覚え平成25年に国土交通省航空局が我が国のパイロット数の現状と課題についての検討を行っている。この中で国は今後のパイロットの需要予測から2022年のパイロット数を確保するためには年間200〜300名の養成が必要としている。また短期的には外国人パイロットの採用、防衛省パイロットの民間への転出、現役パイロットの健康促進による有効活用を示しているが実際のところ効果はあまり出ていない。

 

危機的な機長の不足から、今年も各社でパイロットの引き抜きが起こり運航の維持に支障をきたすであろう

 

外国人採用の拡大に踏み切る会社が出ているが、応募者は多くても実際に採用できる人員は少なく、また採用したとしても日本のパイロットライセンスを取得できないもの、働き始めても海外を含めた他社にすぐ移ってしまうなど流動性が高いため、確実な事業計画を遂行できるか否かは不確実である。

 また、大手2社を除く会社内での機長昇格も年間数名程度であり、退職者数さえ補完できない状況ある。このため即戦力として、日本の他社で働くパイロットに対して引き抜きが起こるのである。

 

乗員の労務管理の失敗がパイロットの流失を招く恐れがある。

 

LCCが日本でも生まれ、現在4社が運航しており今年また新たにエアアジアジャパンが運航開始予定である。各社それぞれ母体が違い、運航に対する文化の違いなどもあり、今後いかにパイロット達をまとめ、働く環境を維持していくか各社苦心していくであろう。場合によっては会社への不満から海外を含めた他社へ転職するパイロット達が出るとも限らない。これは大変なリスクであり運航の維持に支障をきたし運航便数の削減をせざるを得ない状況に陥る可能性すらある。

 

いずれにしろ、安全運航の最終責任者である機長及び副操縦士の動向は、公共の足である航空産業の大きなファクターであり今年もその動向から目が離せないのである。

 

以上

 

 

(参考資料)

我が国における乗員等に係る現状・課題 平成251118日国土交通省航空局

乗員政策に係る取組について 平成27年4月6日国土交通省航空局