「JAMR研究員による2017年頭の小論文・随筆など」

国内線は「低価格ブランド」へのうねりが徐々に加速するだろ!

 

                       201714

                 航空経営研究所所長 赤井奉久

 

「低価格ブランド」とは「普通のサービス」と「低価格」の組み合わせである。

つまり「普通に安全運航」し、「普通に定時性が保たれ」、「不快感や違和感のない普通の取り扱い」を受けられれば(ここではそれらを「普通のサービス」とした)、飛行時間の短い国内線では、『低価格』が格段の威力を発揮することになるのは世界的潮流からみても明らかであろう。「おもてなし」を標榜する人手とお金をかけたサービスも、『低価格』の前には神通力を失っていくと思われるのだ。そして国内のLCC3社はその「普通のサービス」を着実に身につけてきている。2015年度には3社そろって80%超という高搭乗率と黒字化を達成した。

 

確かに漠然としたLCCへの‘不安感’が払拭されたわけではなかろう。

しかしその根拠となっているであろう「安全」と「定時運航」で、LCCでも「普通」のこととの認識が一般化してきている。サービスも「移動の流れがスムーズ」であれば、特別の不快感さえなければそれでよしとの考えがLCC利用者を拡げているし、LCC側も気持ちよい使い勝手に力をいれているのがうかがえる。

LCCの低価格は、安全や定時運航を犠牲にしたものではなく、「コスト効率の高い小型機」と「サービスの単純化」、そして「高い搭乗率を前提とした価格設定」というビジネスモデルから産み出されたものとの理解が浸透してきたともいえよう。

 

 

現在大手2社や既存の中堅会社は、レベルの高いサービスと低搭乗率を前提とした価格設定で利益をあげているといえるが、今後は「低価格ブランド」への大きな潮流に合わせてモデルを変えていくことになるだろう。ヒトの接し方だけでなく、ネットやスマホなどを活用し「流れ」が重視されるサービスの形、そして伸び悩む所得の中でいわば賢く生活していこうとする消費者の動向がそれを後押しすることになるであろう。

 

《図表1》国内線の旅客単価比較(千㌔当り;円)

 

2015年度国交省資料をもとに算出
LCC
はこれに付加収入(1020%)を上載せしたものが旅客当り実収単価と考えられる。

《図表2》国内線の搭乗率比較(%)

 

2015年度の各社公表資料をもとに算出

《図表3》国内線の旅客シェア(%)

2015年度国交省資料をもとに算出(リージョナル会社を除く)

            国内定期路線の総旅客数は95百万人

 

以上

海外事情

 

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。

 

 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。

 

 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)