「JAMR研究員による2016年頭の小論文・随筆など」

ご好評を頂いているエアライン採用関連レポート、第4弾です。

 

 <過去掲載レポート>

 

 

   併せてお読みください。

 

2016年度、客室乗務員・グランドスタッフの採用を予測する

(今年も空前の大量採用)

 

2016.1.11

主席研究員 光岡寿之

 

 2015年度の客室乗務員(以下、CA)とグランドスタッフ(以下、GS)の採用は、旺盛な訪日外国人需要と全日本空輸(以下、ANA)の積極的な事業拡大に支えられ過去最高の大量採用でした。

 

 新たな2016年度も、テロ、戦争、経済危機など突発的な国際航空の需要減退がなければ、日本国内でのCA・GSの採用は、引き続き、訪日外国人の強い需要とANAグループの更なる事業拡大などに支えられ、空前の大量採用になると思われます。

 

まず、CA採用から見てみましょう。

ANAは、最近、2016年度から3年間、新卒・既卒合計で毎年1000人のCA

を採用すると発表しました。 CAを目指す方には、朗報です。

 

この4年間のJAL/ANAのCAの募集実績は以下です。

客室乗務員

募集数

JAL

ANA

合計

新卒

既卒

合計

新卒

既卒①

既卒②

合計

2012

200

400

600

400

50

 

450

1,050

2013

200

150

350

450

150

 

600

950

2014

200

100

300

500

260

100

860

1,160

2015

330

120

450

600

440

経験者採用実施中

1,040

1,490

 

JALが採用を再開した2012年から3年間は、両社で、年1000人程度の採用だったのが、2015年度は一挙に5割増の、年1500人の採用規模まで増加しました。

 

前文「JAL/ANA客室乗務員採用の特徴(誰もがCAになれる時代)、2014.9.03

で述べたとおり、私の大手航空会社での採用担当の経験から、良材確保のためには、募集数の20倍の応募者(受験者)が必要です。

この観点からは、ANAは2014年度から既に20倍を割り初め、2015年度も引き続き大きく20倍を割っているため良材確保が厳しくなっています。

JALも同様に、2015年度の採用から20倍の競争率確保が微妙になって来ました。

 

この結果、合格者のプロフィールに変化が生じてきました。私が勤めてきた大学や専門学校からJAL/ANAの2社に合格した学生の顔ぶれから、その変化が分かります。

ANA合格者では、2014年度から、全てに優れる“オールラウンド”な合格者が半数、残りの半数は、極めてホスピタリティがある、極めて語学ができる、極めて活発、極めてサークルで頑張ったなど、“一芸に秀でた”普通の真面目に頑張った学生が合格できるように変わってきました。

JALも2015年度の合格者から、“オールラウンド”な合格者に混じり、一部、“一芸に秀でた”学生の合格が見られるようになってきました。

これは、従来の合格基準ではもはや必要数を確保できないため、新たに柔軟な合格基準で評価を始めたものと思われます。

 

大手2社のみならず、全ての航空会社が慢性的なCAの人員不足に陥っていることは、以下からも見て取れます。

最近、JALは2016年度採用から、“CAを正社員として雇用”すると発表しましたが、これは、ANAとの合格者の奪い合いで不利にならないように採用競争力をアップさせるためです。

また、ANAは、現在も「CA経験者採用」や「ANAグループの元CAの再雇用」を行っていますが、これも必要数がまだ充足できないからです。

更には、昨年、いくつかの中規模の航空会社が、大手2社と同じタイミングで採用を行いましたが、結果は、大手2社の合格発表後、内定辞退が続出し、必要数を充足できず、年を超えた現在も追加募集をしています。

 

以上の環境変化を踏まえて、2016年度の航空会社のCAの採用を予測すると、

   採用規模は新卒既卒合わせて、ANAが約1000人、JALが約500人、その他国内中小航空会社・外資系航空会社が約700人、合計で、約2200人と、かつてない大量の採用になると思います。

   質的には、大手/中小の航空会社とも必要数を充足できていない現状を踏まえると、益々、“オールラウンドな極めて優秀な”学生の比率は減り、“一芸に秀でた”普通の真面目に頑張った学生の比率が高まって行くと思います。

   採用日程は、大手2社は就職協定を遵守し選考は6月から開始、中小の航空会社は2015年度の反省を踏まえ、大手2社の後での選考となると思います。

 

次に、GS採用を見てみましょう。

昨年2015年度の新卒・既卒を合計した採用規模は、首都圏空港のJALスカイ(羽田・成田)の360人、ANAエアポートサービス(羽田)の390人、ANA成田エアポートサービスの110人を中心に、基幹空港の関西/大阪/中部空港や全国の地方空港の旅客会社の採用を合わせると、おそらく1300人程度になるかと思われます。これも過去最大の採用数です。

 

昨年2015年度は、空前のCA大量採用が行われたため、CA/GS併願志望者の相当数がCAに合格してしまいGSへの受験者数が減少、GS採用で必要数が確保できず、GS分野においても人員不足が進んでいます。

年を超えた今も基幹空港や地方空港の旅客会社数社が追加のGS採用が行っていることからも推測できます。

 

 以上の環境変化を踏まえて、2016年度のGS採用を予測すると、

    採用規模は、2015年度と同様の規模、全国で1300人程度の採用が期待できます。 首都圏のJALスカイ、ANAエアポートサービス、ANA成田エアポートサービスを中心に大量採用が、基幹空港の関西・大阪・中部でも2015年度並の採用が見込まれます。

    質的には、昨年同様、上に述べたCA/GS併願志望者の相当数がCAに流れるため、優秀なライバルが減少し、従来より合格しやすい広き門になるものと思われます。“一芸に秀でた”普通の真面目に頑張った学生が合格しやすくなると思います。

    採用日程は、CAと同様、首都圏空港のJALスカイ、ANAエアポートサービス、ANA成田エアポートサービスの大手人気3社は、CAに少し遅らせての6月選考開始、それ以外の各空港の旅客会社のGS採用は、それ以降となると思います。

 

 最後に、毎年目まぐるしく変わる「就職協定」の影響を見てみましょう。

 

説明会開始

選考開始

内定開始

2014年度以前

前年12

4

10

2015年度

3

8

10

2016年度

3

6

10

 

 昨年2015年度、大学3年生の終わりまでは学業に専念できる体制をと、就職協定の日程が、3/説明会開始、8/選考開始と、従来より、大きく後ろにずらした日程に変更されましたが、結果は早期に良材確保しようと青田刈りをする企業が増え、学生にとっては従来より長い就職活動となり、一方中小企業では早期に内々定を出したものの、その後の大手企業の合格発表により内定辞退が続出するなど、混乱の就職戦線の1年でした。

この反省を踏まえ、2016年度は、再度日程が変更され、選考開始が6月に2ケ月繰り上げられます。

 

では、この日程変更の航空業界のCA・GS採用へもたらす影響を見てみましょう。

    繰り返しになりますが、JAL/ANA2社は就職協定を遵守しますので、JAL/ANAのCA採用とJAL/ANA系の首都圏空港の旅客会社GSの採用は6月の選考開始となることは間違いありません。従って、その他の中小航空会社のCA採用と全国の空港のGS採用はそれ以降の採用日程となると思います。

    6月以前の青田刈りで、航空業界以外の大手人気企業から内々定をもらった学生の相当数は、6月以降に実施される航空会社採用試験を受験しない可能性があります。 結果、航空会社のCA採用、旅客会社のGS採用の受験者数は減少するため、航空業界を第一志望とする学生にとっては、優秀なライバルが減り合格しやすくなると思われます。

   その他、選考開始が昨年の8月から6月への2ケ月早くなることによって、一部、海外留学生の帰国が選考に間に合わない可能性も高く、これも受験者数の減少と優秀なライバルの減少となりそうです。

 

終わりに、繰り返しになりますが、2016年度は、航空会社のCA採用は約2200人、空港旅客会社のGS採用は約1300人、合計約3500人と空前絶後の大量採用が行なわれます。 競争倍率もかつてよりは下がっており受験者にとっては“広き門”となっています。

 

“誰にも負けない強みを一つ持っていて”、普通に真面目に頑張れば、

    CA受験なら2200番目でも、GS採用なら1300番目でも合格できるのです。

 

“CAになる、GSになる”ことは、今や十分に“手の届く夢”になっています。

 是非、“夢”を掴み、平和産業/航空業界の一員になってください。

 

 そして次は、空港で、機内で、お会いしましょう!

 

 

                                                           以上

 

海外事情

 

今週号では、「7. アゴダの多角化戦略」、「8. ブッキング、民泊の新戦略」、「13.ブッキング、法人旅行テックプロバイダー買収」、「15. ブッキング、配車アプリのグラブと提携促進」と、BKNGの関連ニュースが4つもあった。BKNGの「Connected Travel」戦略の遂行が進んでいる。BKNGの場合は、Internet of Things (IoT)が、Internet of Travel (IoT)と読み替えているように感じられる? 

 

それよりも、3つの記事が印象深い。「10. 本当のディスラプション」、「22. ソーシャルメディアと旅行」、「24. 東南アジア市場の2つの問題、OYOとインスタ」の3つだ。

 

10. 本当のディスラプション」では、ディスラプティブのプロダクトは、必ずしも既存企業よりも良いわけではなく、今まで既存企業が不経済なために手を出さなかったサービスのニーズに取り組んだか、以前は特定できなかったニーズのいずれかであると説いている。そして、ディスラプティブを起こしているのは、テクノロジーでなくて、創造性を発揮したクリエイティブなモデルであることを再確認させてくれた。

 

22. ソーシャルメディアと旅行」は、旅行とソーシャルメディアの相性が抜群に良く、旅行業界がソーシャルメディアを誰よりもうまく使っていると言っている。ソーシャルメディは、人と人の繋がりをインターネットで補完するコミュニーケーションサービスなのだから、顧客とのエンゲージメントに優れているのは当たり前だ。これを上手に使っていないとすれば問題だ。

24. 東南アジアの2つの問題、OYOとインスタ」は、この地区における観光公害の実態を報告している。オンライン旅行ガイドTravelfishStuart McDonaldが、過去15年間で悪化している観光公害の実態を、歯に衣着せずのタッチで断罪している。(編集人)

海外事情12月9日号 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)