「JAMR研究員による2015年頭の小論文・随筆など」

今年の注目はJetstar-Japanだ!

 

                                         所長 赤井奉久

 

 世界の航空業界では、LCCが提供する「低価格ブランド」が、人の流れを活性化させ、経済の活性化にも貢献してきた。 世界には少し遅れているが、日本でもその流れは変わらないはずだ。

 日本のLCCは、関西マーケットでは、Peachが好調で、就航2年目にして経営も軌道に乗った。 首都圏では、Vanillaは収益性を確かめつつ規模を拡大しているが、そのテンポは緩やかである。 後発した春秋航空日本も冒険的拡大はしないであろうし、AirAsiaⅡの再参入は遅れているようである。

 

 一方、スカイマークが経営危機を乗り越えるには大手による支援が不可欠だが、それは羽田をベースとする「低価格勢力の後退」を意味する。 首都圏人口4000万人が秘める「低価格ブランド」を求めるエネルギーは、新たな発露を求めることになるだろう。

現時点でそれに応え得る可能性を持つのは、国内LCCで最大級のJetstar-Japanだ。

 

 しかしながらそのJetstar-Jは、就航開始から2年間「赤字垂れ流し」状態で、2度にわたるJAL等からの追加出資で何とか持ちこたえているが、経営上の課題も大きい。

2015年におけるJetstar-Jは、期待と懸念の幅が大きいのである。

 

(期待)スカイマークの低価格志向層の新たな受け皿となって搭乗率は更に向上。

    関西空港や国際線への展開が機材等の効率を高めて座席コストが低減。

    収益性が改善して資金の出血がとまり、黒字化への展望が拓ける。

    そして「低価格ブランド」の担い手として顧客の信任を得ていく。

 

(懸念)座席コスト、収入単価、搭乗率が、夫々改善しても微小に留まり、赤字(資金流出)がとまらず、規模を拡大した分が更に資金の困窮をもたらす。

    JALはもはやこれ以上の支援はできず、資金の元を絶たれて破綻にむかう。

 

(期待実現へのポイント)

  低コスト化の実現;「成田ハンデ」を抱えるJetstar-Jは、Peachに比べると、搭乗率や収入単価で下回らざるを得ない。 今は大幅に高いレベルにある座席コストを、少なくともPeachのレベル(約8,000/席)まで下げることが必須である。

(一部は機材稼働向上で補えたとしても、それだけでは不十分であろう。)

 

  日本の市場に合ったLCCモデル化; 豪州のJetstar本社主導によるグローバルLCCモデルではなく、日本の市場に合ったLCC運営が必要であろう。Peachはそれに成功したといえる。(例えば、安さだけが勝負の「格安運賃」ではなく、利用し易さや親しみ易さをとの合わせ技である「お得感のある運賃」)

 

  この2つを今年中に実現できなければ、日本におけるLCCの担い手としての役割を終えることになりかねない。

その実現のためには、経営を豪州本社に任ねず、JALが主導権をとって(金を出すが口も出す)、強力に改革を進めることが有力な選択肢だと思う。

 

     ⇒ JAMRレポート「Jetstar-JapanPeachの経営比較」を(後日掲載)ご参照下さい。

 

 

                                      以上

海外事情

海外事情12月9日号 

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「3.(TJ) NDC進展も課題山積み」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。3.(TJ) の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

 

 

 

今週号では、「7. アゴダの多角化戦略」、「8. ブッキング、民泊の新戦略」、「13.ブッキング、法人旅行テックプロバイダー買収」、「15. ブッキング、配車アプリのグラブと提携促進」と、BKNGの関連ニュースが4つもあった。BKNGの「Connected Travel」戦略の遂行が進んでいる。BKNGの場合は、Internet of Things (IoT)が、Internet of Travel (IoT)と読み替えているように感じられる? 

 

それよりも、3つの記事が印象深い。「10. 本当のディスラプション」、「22. ソーシャルメディアと旅行」、「24. 東南アジア市場の2つの問題、OYOとインスタ」の3つだ。

 

10. 本当のディスラプション」では、ディスラプティブのプロダクトは、必ずしも既存企業よりも良いわけではなく、今まで既存企業が不経済なために手を出さなかったサービスのニーズに取り組んだか、以前は特定できなかったニーズのいずれかであると説いている。そして、ディスラプティブを起こしているのは、テクノロジーでなくて、創造性を発揮したクリエイティブなモデルであることを再確認させてくれた。

 

22. ソーシャルメディアと旅行」は、旅行とソーシャルメディアの相性が抜群に良く、旅行業界がソーシャルメディアを誰よりもうまく使っていると言っている。ソーシャルメディは、人と人の繋がりをインターネットで補完するコミュニーケーションサービスなのだから、顧客とのエンゲージメントに優れているのは当たり前だ。これを上手に使っていないとすれば問題だ。

24. 東南アジアの2つの問題、OYOとインスタ」は、この地区における観光公害の実態を報告している。オンライン旅行ガイドTravelfishStuart McDonaldが、過去15年間で悪化している観光公害の実態を、歯に衣着せずのタッチで断罪している。(編集人)