「JAMR研究員による2015年頭の小論文・随筆など」


もしかして勘違いしている方はいませんか?

 

主席研究員  森崎 和則

 

 昨年は日本の航空業界も話題に事欠かない年でした。その中で4月以降にLCCで機長を中心にしたパイロット不足による大量欠航が発生したことがありました。これをきっかけに、将来にわたるパイロット不足問題(いわゆる2030年問題)が話題になりました。

 このパイロット不足問題に関連して筆者は複数のメディアから取材を受けたことがありました。その取材の中で比較的多くの方たちが勘違いをされているのではないかと思い当たることがありましたので、ここで少し整理してみたいと思います。

 

 その勘違いとは、「機長」や「副操縦士」という名称が、必要な操縦免許(ライセンス)の名称と同一のことと思われているのではないか?ということです。

ライセンスについては航空法に基づいて複数の証明書(免許)や資格を取得する必要がありますが、ここでは基本的な操縦免許との関係について簡単に整理してみます。

2名以上のパイロットが乗務する飛行機で、「機長」として乗務するために最低限必要なライセンスとして「定期運送用操縦士技能証明」(加えて国土交通大臣の認定)が、「副操縦士」として乗務するには「事業用操縦士技能証明」というライセンスが必要です。これらのライセンスは自動車の運転免許と同様にその個人に発行されます。

一方で、「機長」や「副操縦士」という名称は勤務する会社の役職名と言えます。即ち、一般の事務職で言うところの「部長」「課長」などと同じと考えると分かりやすいかもしれません。

即ち、航空会社で「機長」になるための最低要件は「定期運送用操縦士技能証明」を所持していること。その前段として「副操縦士」になるには「事業用操縦士技能証明」が必要になります。

この「機長」、「副操縦士」が役職名であることが理解しやすい事例を最後に2件ご紹介しましょう。

その一つは「副操縦士」だったパイロットが「機長」になる際、「機長昇格」として社内で人事発令がなされます。その条件としてライセンスを持ち、必要な全ての要件を満たしたパイロットが「昇格」して晴れて「機長」になります。

もう一つの例は、A社で機長であっても、B社に転職した場合にはB社では最初に「副操縦士」として発令を受け、新たに国土交通省審査(国土交通大臣の認定)と社内で機長昇格訓練をパスしてから「機長」に発令されるという場合があります。

 かなり単純化して説明をしましたが、「機長」「副操縦士」という名称は、免許の名称とは別であることを理解する一助になれば幸いです。

 

以上

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)