2014年 航空界の乗員動向
主席研究員 樫原 利幸
1、 PILOTの確保が事業遂行に大きな影響をおよぼすであろう。
東京ではあまり話題にならなかったが2013年6月20日の琉球新報に以下の記事が載った。
「パイロット流出で減便 RAC那覇―久米島」
琉球エアーコミューター(RAC、那覇市、伊礼恭社長)は21日から30日まで、那覇―久米島線を現行の1日6往復から4往復に減便する。一方、5月は天候不良や機材の不具合で同路線が28便欠航、6月も15日までに6便が欠航した。久米島町の関係者らは19日、RACと親会社の日本トランスオーシャン航空(JTA)を訪ね、定時運航を求めて抗議する方針。
JTAの担当者は減便について「RACのパイロットが5~6月にかけて格安航空会社(LCC)へ流出し、乗員繰りが厳しかった」と説明。(以下 省略)
実は同様なことが、本邦の中堅航空会社でも起こりうるのである。
2010年のJAL破綻により希望退職、整理解雇で日本及び海外のPILOT市場に日本航空のPILOTが供給されることになった。このことによりLCC元年と言われた2012年PEACH Aviationをはじめとし、Jetstar Japan、Airasia Japan(後にバニラエア)の起業を可能にしたと言っても過言ではない。
LCC3社の機長の年齢構成を見てみると56歳から63歳に大きく偏り、これに運航を依存している状況である。(平成25年1月1日現在 国土交通省資料による)
各社は、事業遂行のためPILOTの確保に奔走しているが、外国人PILOTの確保を含めなかなか思い通りにいっていない状況である。PILOTはプロペラ機からJET機へ、
小型機から大型機へとの希望に加え、待遇面で良い会社を求めている。乗員の流動化がもう始まっているのである。
2、 PILOTの待遇を上げて引抜きが始まる。
2013年12月20日。これは、旧エアアジア・ジャパンがバニラエアとして就航を開始した日であるがこの日もう一つ注目すべき出来事があった。それはエアアジアXのトニーフェルナンデスCEOがもう一度日本でのエアアジアの立ち上げに日本のパートナーを見つけたとの発表したのである。
このエアアジアの日本での事業規模がどの程度になるかの詳細はまだ分かっていないが、新たなLCCがまた参戦することになる。そして夏には春秋航空ジャパンが運航を開始する。春秋航空ジャパンが運航するのはB737である。あえてこの飛行機を選んだのはB737のライセンスを持った既存のPILOTが日本国内にも多く、PILOT集めが容易であるからとのことである。乗員の養成には時間とお金がかかる。一説によると一人の機長を養成するには一億円ほどコストがかかるとも言われている。LCCはLOW COSTを実現するために機長は他社から引き抜くことで成り立っているのである。
3、乗員養成及び乗員集めは各社存続への重要課題。
2014年は JALが破綻してから4年目である。PILOTが旅客機の操縦を出来るのは65歳までであるから、そろそろ定年を迎えて飛行機を降りるPILOTも出始める年である。
LCC各社も自社で機長養成を始め出したが、軌道に乗る為にはまだ時間が必要であろう。
SKYMARK AIRLINESは春にA330の運航を開始し、2015年にはA380の運航を予定している。Jetstar JAPANは遅れていた関西BASEを作り事業の拡大を計画している。いずれにしろ計画を遂行していくには乗員の確保は不可欠なものだ。
2014年は乗員の不足が顕在化しはじめ、場合によっては計画された便を飛ばすことが出来ないことが懸念される。各社の本腰を入れた乗員の養成と確保の状況を注視したい。
以上