「JAMR研究員による2014年頭の小論文・随筆など」

 

航空会社は燃油価格の上昇にどう立ち向かうか

                                  

                                      主席研究員 稲垣 秀夫

 

 

2014年を迎えるにあたって、今後の民間航空ビジネスの動向をもっとも大きく左右する燃油価格上昇の航空会社への影響と対応について分析を加えた。

 

今後の航空会社の経営を左右する最も大きな要因は、イベントリスクとしての中国の経済動向やバブルリスクのほか、燃料価格の上昇、為替水準、パイロットの確保と養成を上げることができるが、このレポートではその内、燃料価格の上昇について分析した。

 

このレポート中において客観的な事実については、既に公表されている情報に基づいており、分析および評価については、筆者自身の責任に基づいて行っていることを予めお断りする。

 

 

《燃油価格の歴史と今後の見通し》

 

   燃料の高騰は世界中の航空会社の経営に大きなダメージを与えると同時に、競争環境を変化させている。 原油価格値上げの歴史は、40年前に遡るが、1974年、1979年と2度続いたオイルショックの後、20年間は安定した燃油価格の時代が続いた。 再び大きな変化が訪れたのは2000年である。 燃油価格水準を原油価格INDEX(WTI)で見ると、約20年の間、原油価格はバレル20ドルの水準で安定していた。 2000年を境に、原油価格は再び上昇を始め、10年弱で、1990年代の約5倍の水準まで上昇し、今日ではバレル100ドルの水準に至っている。

 

今後の航空燃料価格の見通しについては、エアバス社、ボーイング社ともにそれぞれの将来見通しの中で、中長期的には暫くの間、上昇傾向を辿るとの見方を示している。 マクロに見た上昇要因については新興国の急速な経済成長に伴う原油需給のアンバランス化である。 したがって、新興国の経済動向が原油価格に影響を与えているとすると、中国をはじめとする新興国が抱えている不動産バブルのリスクが今後の原油需給に影響を及ぼす可能性もある。また、シェールガスの動向(米国の原油貿易)にも注意を払う必要がある。

 

《燃油価格上昇の経営への影響》

 

燃油コストはどの飛行にも共通して必要となるコストであるため、燃油上昇は、基本的には各航空会社が共通に抱える経営リスクである。 航空燃料価格の上昇は、短期的には各社の財務体力や調達におけるヘッジ効果からくる燃油コスト上昇の吸収能力の各社の差により、経営への短期的インパクトには違いが出るが、長期的には、航空会社に平等に影響を与え、理論的には、各社間の競争に直接的な影響を与えることはないということになる。 ところが、実際には、以下のような競争上の差別化要因が存在すると考えられる。

 

各社が使用する航空機種ごとの燃費性能や各社の運航路線の違いにより、燃料コスト上昇の影響度合いは異なってくる。 同一路線で競合する各社間のコスト競争においては、このことは致命的な差となる。 現在、航空機メーカー各社は、燃費改善型の新型機を続々と提供し始めている。 航空機の座席あたり燃費でみると、開発の新旧と、航空機サイズの大小が基本的な燃費能力を決定し、また、加えて新型機は在来機種より航続距離を伸ばしていることから、後述の通り、中距離路線の競争に新たな要素が加わることになる。

 

《燃油価格上昇に伴う運賃転嫁の経営への影響》

 

エアバス社のマクロ分析によれば、運賃は需要に対して-0.2の弾性値を持つ、すなわち1%の運賃上昇は0.2%の航空旅客需要の低下を招くとしており、現在も燃料サーチャージを運賃に付加せざるを得ない状況にあるということは、これにより需要にブレーキをかけていると考えられ、燃料サーチャージの徴収で原油価格の上昇に伴うコスト上昇を運賃に転嫁しようとすると、これによる需要低下を招くことになる。

 

《燃油価格上昇に伴うコストへの影響》

 

昨年のボーイング社のレポートによると、世界のエアラインの平均的な数値として、航空燃料コストの全運航コストに占める割合は、単通路機(シングルアイル機)で30%、2通路機(ツインアイル機)で50%にまで増大している。

 

燃費コスト低減の要請から、暫くは新型航空機の開発における燃料消費の低減はさらに進むものと思われる。

 

《新旧機種間の燃費効率の優劣の影響》

 

今後予測される燃料価格の上昇と、新型航空機の燃費改善は、上述に加えて、新旧機種間での競争を誘発する。 減価償却費やリース料の増加を勘案しても、燃油費の削減効果により、トータルの運航コストで旧型機に優る新型機が出てくるものと思われる。 新旧の航空機の交替が進むことで、燃費の悪い旧型の航空機は供用年限を待たずに退役を余儀なくされ、また、急速にその資産価値を失う。 したがって、旧型機を数多く所有する航空会社やオペレーティング・リース会社は経営圧迫要因を抱えると思われる。

《シングル・アイル機の中距離路線へ進出の影響》

 

航空機の燃費性能の向上の過程で、シングル・アイル機(単通路)の航続距離は更に伸びていく。 このタイプの座席・距離(ASK)あたりの燃費性能はツイン・アイル機より、格段に優っており(767・A300クラスと次世代737、A320の間では30-40%前後の席あたり燃費の差が生ずるものと思われる。)、新たにシングル・アイル機が到達する都市への路線運営は、運航コスト競争から、現在これらの路線をカバーしているツイン・アイル機からシングル・アイル機への移行が始まるものと思われる。 また、機材の小型化により現路線網より需要の小さな都市間の路線開設もあり、路線網は充実する。 これにより、LCCの本格参入も含めて、このマーケットにおける航空業界の地図は大きく塗り替わるものと思われる。 因みに、東京発の路線では、バンコクやホーチミン他の東南アジア諸都市、インド諸都市、インド周辺国諸都市、ホノルルなど、枢要な路

 

線がこのマーケットに該当する。 尚、この変化は追加のパイロットを必要とする。今後、経営資源のネックになると思われる、新型機およびパイロットのうち、パイロットの調達能力がこの事業展開の行方を左右することになる。

 

 

以上

 

■4月5日 NEW!

 

日本や世界の航空事業について諸々のデータから読み解く「マラソン講座」

の掲載を開始致します。

どうぞご期待ください。 

 

TD(旅行流通)勉強会

旅行流通に関する世界のニュース

 

■4月16日  NEW!

 

 

「オフラインの世界に戻る Part 4(最終回)ハイテック対ハイタッチ ホテル」が、H.I.S.の「変なホテル」とForbes 5つ「Boston Harbor Hotel」の極端な2つのケースを比較していて面白い。宿泊業界は、ハイテックで割安なホテルと、高価であるがそれに見合う人的サービスを提供するホテルの2つのセグメントに別れるのだろう。航空業界におけるLCCFSAの違いと似通った話なのかもしれない。それにしても、Boston Harborの徹底したCRMは物凄い。

 

しかし宿泊施設では、これにホームシェアー(private lodgingとかalternative lodging facilityとも呼ばれている)の新経済が加わる。

 

 

Google 民泊拡大」は、GoogleHotel Searchにバケーションレンタル施設を加えたと報じている。

 

Expedia Groupなどの提携サイトの掲載施設をリストすると言う。これはバケーションレンタルのメタサーチ?Googleの旅行市場への参入はとどまるところを知らない。そのGoogleが、先々週、欧州委員会から独禁違反で14.9億ユーロの制裁金支払いを命じられた。これでGoogleの独禁違反は3回目となる。中核事業(特に個人情報集約)の先行きを案じて旅行業を含む事業の多角化を目指していると勘ぐる。

 

 

「エアビー5億人利用」によれば、民泊本家のAirbnbが累計で5億人の利用者獲得を達成し、600万軒の代替宿泊施設をリストしている。Booking.com570万軒を上回ったと言っているが、即予約(インスタント・ブッキング)できる施設数ではBooking.comが追い抜いていると理解している。Airbnbは、OTAHotelTonightを買収したと思ったら、今度はインドのOYO$150M~$200Mを投資したらしい。年内上場を睨んで、Airbnbの事業拡大戦略が継続している。

            (編集人)