「JAMR研究員による2014年頭の小論文・随筆など」

 

 マリコジェットが象徴する「上からLCC?!」 

 

                                      主席研究員 田島由紀子

 

 

もしかしたらLCCのビジネスモデルは、「上からマリコ」 ならぬ「上からLCC?!」なのかもしれない。人によるサービスを甘いスパイスにして、そのシビアーな経営は傍からは見えない。そしていつの間にか利用者に浸透し、利用者を変えていこうとしている。図らずも、ピーチ・アビエーションがコラボレーションした「マリコジェット」がそれを象徴しているとしたら、、、。

 

 

「おもてなし」という言葉が日本中を沸かせた一年だった。エアライン業界では、Low cost carrier 通称LCCが国内シェア4.1%を占めるまでに成長した。そのビジネスモデルは、日本人の好む、人によるサービスまで軽視しているのでは、と勘違いをされることもあった。LCCはそれを払しょくするかのように、初就航便ではゲートでのハイタッチや桃マーク、CEOが現場に立って‘お客さまとの距離の近さ’をアピールした。一方既存の航空会社(FSA=Full Service Airline)は、感謝の横断幕、部門を越えたランウエイでの笑顔のお見送り、伝家の宝刀である歴代の客室乗務員の制服で対抗した。

 

LCCにおける「人によるサービス」はこうだ。LCCは、面白い事をし、そのことで自分たちは勿論、利用者を喜ばせたいと考える。言い換えると、働く人の個性も大切にし、それをアピールすることで各社の付加価値を作り上げているのだ。例えば、大阪弁をうりものにしたピーチの機内アナウンスやマレーシアで訓練したエアアジア・ジャパン(現在のバニラ・エア)のセクシーな制服やメイクでの大変身。その様子は、マスコミに好意的に取り上げられ、お茶の間に届けられた。LCCも既存の航空会社(FSA=Full Service Airline)と同じフライトという商品を販売しているが、「人によるサービス」の幅がFSAより広く、時にはそのサービスがいびつであったとしても、それをよしとしているようだ。ピーチの社長は自社のフライトを、「空飛ぶバス」と言うが、確かに搭乗してみると「人によるサービス」を含めてその感覚がよく分かる。

 

 エアライン業界にとって、「人によるサービス」は、商品の重要なファクターである。FSAの客室乗務員に代表されるそれは、高品質なサービスが売り物で、庶民にとっては、いわば高嶺の花という部分があったが、LCCはより庶民的なサービス、身近なものとしてアピールにこれ努めている。またLCCは、定期的なバーゲン運賃や他業種とのコラボレーションなど話題作りで認知度を上げながら、その裏ではあらゆる場面でコストカットの努力をしており、そうやって実現した安い運賃を提供することで需要拡大を図っているのだ。

 ただ、利用者にとっては、なじみにくい点もあるようだ。かなり不便な時間帯でのスケジュール設定、ホームページ中心の航空券の販売などすべて、利用者側が慣れることが必要なのである。

 といって、パソコン利用者にとってLCC利用はそれ程難しいことではないだろう。かなり乱暴な言い方になるが、利用者はホームページを訪問し、そこでその時一番安い航空券を購入する。ただそれだけの事だ。

 

LCCが主にターゲットとしているのは、パソコン・スマホ世代の若い人達で、よくわからない人達に手取り足取りお世話することまではしない、というのが前提となっているのである。そこでは人によるサービスというのは、付加サービスであり、当然ながら有料となる。電話での礼儀正しい対応を当然のように求めるのはお門違いなのだ。

 

LCCの出現で、料金面だけでいえば、誰でも空を飛べるようになってきた。

そしてLCCは、サービス・価格などあらゆる面で従来の空の旅のあり方を変えようとしている。そのためにLCCは今、日本人利用者を啓蒙している時期なのだと言えよう。

 庶民派に姿を変えているが、本当はしたたかなLCC

さてさて日本人は、合理的で安価な桃や星やバニラを選ぶのか、或いは昔ながらの「夢の空の旅」を買うのか。

 今年の日本の空には、幾つの「上からLCC?!」が飛ぶのであろうか。

 

                                                 以上

海外事情

 

Thomas Cook Groupが倒産した「3. トーマスクック倒産」。デジタル化への遅れが原因で、顧客のパッケージ離れが原因ではないとSkiftの記事「14. トーマスクック倒産後の欧州パッケージツアー」が述べている。アウトバウンド観光大国の英国とドイツでは、国際(海外)パッケージ旅行者がそれぞれ年間2,000万人存在して、国際旅行需要の40~43%を構成すると言う。観光庁統計によると2018年度の海外募集型企画旅行は191万人なのだから、日本と比べて欧州のパッケージ市場は10倍も、とてつもなく大きいことが分かる。尤も観光庁統計は、たったの50社程度の主要旅行業社の統計であり日本の市場の全体を表してはいない。その上欧州は、欧州連合域内を国内旅行とみなして把握するべきかもしれないので単順な比較は困難だ。日本の国内募集型企画旅行者は3,370万人だ。

 

規模の比較は別にして、このSkiftの記事では「OTAのダイナミックパッケージに対してパッケージの大きな利点の1つは、ツアーオペレーターがプロダクトとエクスペリエンスをエンドツーエンドでコントロールして、より高いレベルのサービスを提供できることである」と説く。そして「Ryanair会長のMichael O’Leary の発言『パッケージは終わった』は間違っている」と伝える。

 

この記事は、パッケージ離れが進んでいると言われている日本の旅行業界にとって、誠に参考になる話だ。 

 

4. DMOはグーグルに勝てるか」で登場する英DMOVisit Greenwichが、「自分たちが集めるローカルコンテンツは、Googleのお粗末な情報とは段違いだ」とえらい自信のほどを見せている。Googleより優れているとは俄かに信じがたい話ではあるが、DMOは本来、Visit Greenwichのようにならなければならないのだろう。日本では、GoogleDMOとも協力して地方の“町おこし”に積極的に取り組んでいる。

 

Visit GreenwichVR(仮想現実)やAR(拡張現実)のデバイスを旅行者誘致に活用すると言っている。そういえばFacebook925日、VR端末向けの新たなSNSHorizon」を2020年に始めると正式発表した。VRARが旅行にも広く使われるようになる時代がやってくるかもしれない。そうなれば、パーソナルなエクスペリエンスの旅行の新時代となる。(編集人)

 

海外事情 中国特集

海外事情 中国特集

 

これは、PhocusWire Daily が今年の2月、中国正月である春節のタイミングで編集した4つの記事にまたがる中国特集である。中国市場は、その巨大な人口をバックに2019年に1,900万人が国際旅行すると予測している。その49%が中華圏の香港・マカオ・台湾行きの旅行で、残りの51%がその他の海外旅行となる。最近の香港の社会的混乱と台湾への個人観光旅行の実質的全面禁止により中国人の海外旅行比率はますます高まるだろう。海外旅行では、韓国への旅行が韓国THAAD配備による影響で減少を余儀なくされており、日本旅行が漁夫の利を得る形で大きく中国人の訪日需要を伸ばしている(1月〜8月前年同月比 13.6%増)。

 

中国は、巨大なアウトバウンドを外交上のカードに使い始めている。日本だって、日中関係が何らかの影響でこじれたりすれば、あっという間に中国人の日本旅行が減少することになるだろう。事実、日韓関係悪化で訪日韓国人需要は8月に48%減少した(1月〜8月前年同月比 9.3%減)。

 

訪日4,000万人への道のりは国際政治の問題も介在して厳しいものがある。

(編集人)