旅物語 海外 第11回 アンコール世界遺跡へ 前編(2016年2月)

2016年3月1日

 

(写真・文、 光岡主席研究員)

 

 長年の夢であった「アンコール世界遺産」を訪れました。
過去に訪れた多くの旅を遥かに超えた興奮と感動の場所でした。
 東洋の古代文明の発祥の地/インドでも中国でもないインドシナ半島に、こんなにも素晴らしく心を奪われる宗教寺院遺跡・王城遺跡が、何故にこんなにも多く残っているのか? 驚きと興奮の毎日でした。
 建築物の壯麗さ、壁に描かれるヒンズーの神々の神話レリーフ、仏教・観音様の彫刻、代々国王の功績を語るレリーフ・碑文・・・の目を奪われる美しさ、言葉には尽くせません。

 

 2回に分けて、ご紹介します。 少しでも感動が伝われば幸いです。

アンコールワット全景(5基の尖塔、高さ65m)

 

① アンコールワット・・・最大の遺跡

第一回廊とレリーフの風景


掘を渡る参道で入口に向かいます

アンコールワットの入口の西塔門です

更に参道を歩きワットに向かいます

 

 アンコール世界遺産は、西暦800年~1450年頃(平安時代から室町時代)にかけてインドシナ半島のほぼ全域で栄えたカンボジア/クメール王朝の代々の国王が地上に神の国を体現させたいと心を込めて建立した宗教寺院・王城の遺跡です。地震も台風もない大地、そして石作りであったため今に残りました。 奇跡です。

 

 

 東京都全域位の広い地域に1000もの遺跡が確認されており、主なものだけでも100前後、その中の代表的なものが、

 

 全盛期の12世紀の前半に30年かけて作られたヒンズー教の“アンコールワット寺院”、

 同じく全盛期の12世紀後半に、 1辺が3kmの城壁で囲まれた王都として造られた「アンコールトム」、ここの中心寺院「バイヨン寺院」は、国王が厚く帰依した大乗仏教寺院です。

 

 

 王宮や僧院は木造であったため、長年のシャム/アユタヤ朝との戦いの中で焼失しました。

 

 

 大半の寺院遺跡はヒンズー教で、一部は大乗仏教です。 (現国民の99%は「上座部仏教」です)
 “アンコール”とは、サンスクリット語で“都城”を意味します。


第一回廊とレリーフ

(第三回廊まであります)

中央祠堂(65m)

レリーフ抜粋(国王の戦い図)

アバター(女神)のレリーフ

境内

アンコールワットは、スールヤヴァルマン2世によって造られ、ヒンズー教3大神の中の「ヴィシュヌ神」に捧げられた寺院

アバター(女神)レリーフ


 

② 「アンコールトム」(王城)・・・城壁都城とバイヨン仏教寺院)
   ・・・12世紀後半、王朝最大の覇者/ジャヤヴァルマン7世によって造られた王都・・・

トム入口のお掘りの橋の綱引きをする阿修羅

バイヨン寺院入口・南大門の4面仏“観世音菩薩”

 

   *****************


 14世紀に入り、隣国シャム(現タイ)との70年もの長い戦争の結果、敗退、15世紀半ば、北部アンコールの王都を捨て、トンレサップ湖の南東部へ撤退、小国として生き残るものの、

 近世になってからはベトナムの侵略も受け、最終的にはフランスの保護国となり、近代を迎えました。

 植民地時代は、ハノイにあったフランスの「極東学院」が真摯な情熱を傾け、アンコール遺跡の調査と保護に当たってきました。

 

 現代においては、ポルポトの不幸な内戦の歴史の中で多くの国民を失いましたが、1993年、かつてフランスからの独立を指導したシアヌーク殿下が国王に復帰、平和国家を取り戻しました。

 

 日本では、戦後、国交の無い早い時代から、上智大学が遺跡の発掘、保護に携わってきており、大きな成果と貢献をしています。
  
 現在は、ユネスコが中心となり、世界各国が競って保護に協力・活動を行っています。


アバター(女神)レリーフ

見とれてしまう観世音菩薩

バイヨンの観音菩薩彫像とレリーフ


 

 

 

 

 

 

④ アンコールトム。バプーオン(右)

    ・・・「子隠し」の意、「子隠し伝説」を持つ。

 

    ・・・ 11世紀中頃、

     ウダヤーディヤヴァルマン2世が建造。

 

    ・・・ ヒンズー教/シヴァ神

 

    ・・・200mもの「空中参道」を持つ。

③ アンコールトム・ピミアナカス(左)

    ・・・ 「天上の宮殿」の意、

     11世紀初頭、ピラミッド形式

 

    ・・・クメール王の宇宙観、

     古代インドの「須弥山」を

     象徴する王族の 儀式の場所だった。

     「蛇」の伝説を持つ。

      象の像


テラスを支えるガルーダ、上にナーガ(蛇)が見える

 

⑤ アンコールトム・象のテラス

    ・・・12世紀末

      王朝最大の覇者/

      ジャヤヴァルマン7世が造る

 

    ・・・王族が閲兵を行ったテラス

 

 

アンコールトム・象のテラス
テラスを支えるガルーダ

 

ヴィシュヌ神の乗り物となる聖鳥
日本の天狗のルーツです


 

 

⑥ アンコールトム・ライ王のテラス

    ・・・12世紀末、

 

    ・・・三島由紀夫の戯曲「癩王の
     テラス」で知られる。


    ・・・レリーフには、神々と阿修

       が一緒に描かれる。


⑦ バンテアイスレイ(「女の砦」の意)
 シェムリアップから北東に40kmの静かな密林の中に佇む神秘的なヒンズー/シヴァ神・ヴィシュヌ神に捧げられた寺院、赤色砂岩が美しい。

クメール美術の最高峰と言われる。

 

限りなく神秘的で雰囲気のある寺院遺跡。

 

2代の王によって、10世紀末に完成した。 20世紀初頭に密林の中から再発見された。

バンテアイスレイ全景

ヒンズー神話のレリーフが美しい

中央祠堂遠景

祠堂を守る半神半獣の像

レリーフの美しい門

東洋のモナリザと呼ばれる

アバター(女神)のレリーフ

女神像に魅せられた作家アンドレ・マルロー(後の文化大臣)は盗み出そうとして逮捕された。


中央祠堂

重厚なバンテアイサムレの境内

    朽ち果てた参道を今も守る獅子像
     ・・・永遠の時間を感じる光景

 

 ⑧ バンテアイサムレ
   ・・・「サムレ族の砦」の意、重厚な建造物
   ・・・12世紀初頭、アンコールワットを造っ
      たスールヤヴァルマン2世が建造
   ・・・ヒンズー/ヴィシュヌ神
   ・・・ろうそく型の屋根飾りが特徴

 

   ・・・シェムリアップから東へ車で30分
       の密林の中にひっそりと佇む、
       訪れる人も少なく、
       時間が止まったような神秘的な空間


尖塔のアバター(女神)レリーフ

プレループの上から見た密林に沈む夕陽


⑨ プレ・ループ

   ・・・「体を変える」の意
   ・・・961年、ヒンズー/シヴァ神
   ・・・ラージェンドラヴァルマン2

      世が建造
   ・・・シェムリアップから東へ車で

      20分、夕陽の名所

 

   ・・・死者を荼毘に付した跡が残

      る国家鎮護寺院

 

 

 

 

               前編 終わり


海外事情

毎日、外国の旅行流通ニュースを読んでいると、トラベルテックの急速な変化 に驚かせられると同時に、それが達成する能力や機能のレベルの高さにワクワ クする高揚感を禁じ得ない。 OTA の市場における勢力が勢いを増し始めた 2010 年頃に、伝統的オフライン の旅行会社は無くなってしまうと喧伝されたが、それから20 年近くたった今で もそうなっていない。TTA のヒューマンタッチのサービスは、オンライン専業 のOTA には真似られないというのがその理由だ。しかし近のトラベルテック の凄まじい進化と発展を見ると、この理由は根拠を失いつつあるようだ。旅行 ではパーソナルなエクスペリエンスを提供できた者が勝利者となる。AI(人工 知能)を駆使してビッグデータを分析すれば、パーソナルなエクスペリエンス の提供が可能なると想像するのは間違いではないかもしれない。 すでに、「もの」の世界で Amazon がこれを実現して大きな成功を収めている。 「こと」の世界でも同じようなことが起きるだろう。事実、旅行者のポケット に収まる24/7のパーソナルアシスタントが実用化し始めている。こんなことを、 「12. ホスピタリティー教祖Dave Berks とのQ&A」を読んで考えた。(編集人)