2021.5.22.

コロナ禍下で黒字に転換;台湾の中華航空

  旅客需要消滅 < 貨物収入倍増

台湾の中華航空(China Airlines)は、コロナの影響で旅客需要が

ほぼ消滅という中で、

貨物収入がほぼ倍増、前年の赤字から黒字に転換した。

 

同じ台湾の長栄航空(Eva Airways)も貨物収入が倍増と健闘したが、黒字には至らなかった。

両社の差は貨物事業の規模といえよう。

 

 

ここでは2020年の中華航空の業績について、至近の状況を交えながら紹介する。

(注)TWD3.89円で換算して円貨で表示

    画像は同社のHPより。

1.赤字から黒字に転換(中華航空の収支)

 

 旅客収入は(前年)3741 ↘(2020798億円と 約8割減。

 貨物収入は(前年)1688(2020) 3178億円と 約1.9倍に。

 その他の収入を含む営業収益は▲27%減となったが、旅客減便による変動費減や
固定費等の営業費用がそれを上回る減少(▲31%)を示した。

 

 その結果、営業利益は190億円となり、支払利息や関連事業での損失を補って

 

税前利益7億円を計上した。(前年は▲46億円の赤字であった。)

 (機材の状況)

 

  国際線専業(国内線は子会社のマンドリン航空が運航)であることから、旅客機では中大型が7割超を占め、貨物機は全て大型である。

 

 

  当期に入って、旅客機ではB747が退役し、B777F(貨物)3機新規導入されて、貨物機は計21機体制となった。

2.旅客と貨物の状況

 

(旅客)

 コロナ前は、毎月130万人規模の旅客を運んでいたが、20204月以降、現時点まで、

  せいぜい3万人という「需要消失」状態が続いている。(4月以降に限れば▲98%減)

 

(貨物)

 コロナ前の約4.5億㌧㌔(/月)から増加を続け、6億㌧㌔規模(3割超の増加)となった。

 

 加えて収入単価もコロナ前に比べて6割も高く、その基調は依然続いている。

3. 財務状況

  僅かながらも黒字であり、設備投資(主に機材)

  の財源は減価償却費で賄えたようにみえる。

  しかし前受運賃の減少(次期首の旅客収入が

  入らない;前期はそれがあった)のために減少

  した手元資金を補うために約400億円の借入(返済Net後)をしている。

 

期末現預金はコロナ前収入の1.6ヵ月分と少なく、借入金残高は9.5ヵ月分と多い。

 

このため恒常的に100億円を超える金利負担が発生している。

貨物に救われた黒字化であるが、その事業基調は今も続いている。

 

次回はもう一方の航空会社「長栄航空(Eva Airways)についてレポートします。

 

なお「台湾の航空市場構造については、下記レポートをご参照下さい。

 台湾の航空市場と主要2社の現状(1

 台湾の航空市場と主要2社の現状(2

 台湾の航空市場と主要2社の現状(3

                                                       以上(Y.A