バニラエアの収益性簡易分析

バニラエアの収益性簡易分析

2016730

 

黒字化したバニラエアの2015年度収益性などを簡易分析するとともに、競争関係にあるLCC2社と収支・財務状況を比較した。

 (数値は、各社や国交省の公表値と、若干の試算を加えたものによる。)

 

1.バニラエアの2015年度収支と旅客収益性指標

 

 ① バニラエアの収支; 前年比で大幅増収となり黒字に転じた。

   ・営業収益は+77%増の218億円

   ・初めて黒字化し、営業利益15億円を計上。

法人税等の調整があって、当期利益は24億円。

 

 ② バニラエアの旅客収益性指標; 

   ・供給席数+37%増、旅客数はそれを上回る+48%、搭乗率は向上して85%に。

   ・旅客収入単価(付加収入を含む全収入を旅客数で除した)+19%アップ。

   ・座席コストは▲8%低下。

   ・これによりB/E(採算ライン)は80%を切るようになった。

 

  (1便当りでみると)

   ・1便当りの収入は前年比+29%増の198万円、営業利益は14万円。

    搭乗率のアップ(142154人)と平均収入単価のアップに加え、費用が少なくなったことが効いた。

 

  (内際別旅客状況)

   ・国内線席数+30%に対し、国際線は+47%と大きく上回った。

   ・国内線は、低かった搭乗率が大きく改善して85.9%となった。

   ・国内線の旅客当り運賃単価(付加収入を含まない国交省数値)は
8,012
8,132円と上昇。

   ・高かった国際線の搭乗率もさらに改善した。

 

    ・その高い搭乗率を維持しながら規模が大きく増えたことが収益性改善に寄与。

 

 

2.国内LCCの収支・財務比較

  バニラエアの実績を、業績好調なPeachと比較するとともに、2015年度業績未判明(6月決算)のJetstar-Japanについては2014年度数値を参考として掲示した。

 

 ① バニラエア; 利益計上により累損が▲24億円減少。

    流動資産(現預金・業未収入金など)と固定負債(整備引当金等)が増加。

 

 ② Peach; 479億円の営業収益で、62億円の営業利益を計上。

    累損を解消して、留保利益を抱えるまでになった。

    流動資産が266億円と多いことからは、手元資金が潤沢なことが伺える。

 

 ③ Jetstar-Japan2014年度では大幅赤字で、期末(20156月末)の累損は

226億円と債務超過寸前、流動資産も少なく資金のひっ迫を伺わせる。

    (その後JALとカンタスは追加資金を投入している。)

 

    搭乗率、旅客単価ともに改善していることで、2015年度は黒字化したかどうかが注目される。

 

 

以上

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)