せとうちSEAPLANES

せとうちSEAPLANES

20161025

() 航空経営研究所

主席研究員 稲垣 秀夫

 

先日、広島県にある「せとうちSEAPLANES」をお邪魔した。新聞でこの新ビジネスを目にした方もおられると思うが、ご覧になっていない方のために説明すると、この会社は尾道市で水上機を使った遊覧ビジネスを始めた会社である。筆者は仕事上、これまでたくさんの種類の飛行機に搭乗したが、水上機には乗ったことがないため興味を抱いた。この魅力的なアトラクションはけっして安いものではなかったが、経験してみたいという気持ちが勝って搭乗した。このレポートは「せとうちSEAPLANES」の訪問レポートである。

() せとうちSEAPLANES

 

設立:201411月。開業:20168月。資本金:1億円。

代表取締役社長:須田 聡     所在地:広島県尾道市浦崎町。

 

 

せとうちSEAPLANESの運航拠点は瀬戸内海にある。広島県東部の瀬戸内海に面した福山市、尾道市の境界に位置する。 しまなみ海道としてよく知られる松山に向かう本四架橋の広島県側に位置する。筆者は新幹線福山駅からレンタカーで水上飛行機の運航拠点があるバラビスタマリーナ尾道に向かった。所要時間は約40分。帰りは尾道に寄ったが、こちらへの所要時間もほぼ同じであった。

せとうちSEAPLANES社は「常石造船」に隣接するマリーナにある。同社は常石造船を母体とする「つねいしホールディング」社のグループ会社である。常石造船は国内竣工量73万トンで国内生産5位(2013年)=日経。造船業界では大手に分類される。中国浙江省とフィリピンに国内工場に匹敵する造船所がある。

マリーナ背後の丘の上にはグループが経営する高級リゾートホテル「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」がある。このホテルの前身は常石造船のゲストハウスで、ヘリコプターによるアクセスが可能であり、西日本の広い地域からのお客様が来られるとのこと。ホテルのホームページで見ると、16万円~10万円弱の西日本有数の高級リゾートである。

 

 

2.航空機および運航態勢

航空機種は米国クエスト・エアクラフト社製「KODIAK100」。単発(エンジン1基)の多目的機。スカイ・ダイビング等にも使われる。コクピットはグラスコクピット。陸上機が標準だが、オプションでフロートを装備し、広島に配置している機体はいずれも水上機である。

巡航速度は300km/(高度:3,700m)、航続距離5001,000km、離陸(水上)距離:710m、着陸(水上)距離930m(フロート付)

定員は10名(=乗員1+乗客9

 

エンジンはプラットアンドホィットニー社のPT6A-34エンジンを装備する。出力は750馬力 (559 kW)


つねいしホールディングス社は航空機の製造メーカーであるクエスト・エアクラフト社を買収し、米国での航空機製造事業を始めているとのことで、国内で航空運送事業を始めたそもそもの理由はクエスト社が製造する航空機の知名度の向上と販売促進に置いている模様。こういった試みは国内では初めてである。

所有機数は3機+2~3機。更に増機を予定しているとのこと。ベラビスタマリーナの格納庫に入らないものは国内の他社の格納庫施設(神戸、鹿児島など)を借りて格納している。

 

 

事業認可は固定翼の航空運送事業、航空機使用事業免許を所得している。写真は航空機の運航施設。下側に見える長方形の台は鋼鉄製のフロート(浮き)構造で、元は水族館として使用されていたものを改造して使っているとのこと。

 

パイロットの訓練は①米国水上機免許⇒②国内水上機免許⇒③国内事業用操縦士免許取得の手順での訓練となり、陸上機とは異なる。

 

整備については、せとうちSEAPLANESの施設内にある格納庫で実施しているが、頻繁なエンジン水洗いのリクアイアメントなど水上機固有の整備があるとのこと。

 

・整備、運航の体制が事業規模以上に充実している。パイロット訓練や機体の整備体制の充実は上述のKODIAK100の国内販売のために有効な手段となりうる模様。これは国内の航空機メーカーとしては初めての試みであり、その効果が期待される。


搭乗

初めての水上機への搭乗でしたが、瀬戸内上空の遊覧で楽しい1時間を過ごすことができきました。興味のある方は是非乗ってみてください。

 

余談ですが、周辺の海は魚がたくさん泳いでそうな海なので聞いてみたところ、大きなクロダイが群れをなしているそうで、小生自身、釣りの趣味はありませんが次回訪れる際には是非釣りにチャレンジしてみようと思いました。 

 

 

以 上

海外事情

海外事情12月9日号

 

 

2つのIATA NDC標準に関する記事「4. NDC進捗状況」、「16. 航空会社の3つのテクノロジートレンド」が有った。4.の記事は、NDCは安定的に進展しているものの、乗り越えなければならないハードルがまだまだ存在すると述べている。その反対に16.の記事は、開発進展状況は計画通り順調だと述べている。後者は、IATAが主催した航空会社リテーリングシンポジウムに関する記事のため、多分にIATA寄りになっていると思われる。4.がより正確に実態を表しているのだろう。「技術的な問題よりも“人と金と政治”(people, money, politics)の問題が進展を阻んでいる」と言っている。NDC APIで接続して流通経費をできるだけ削減したい航空会社と、反対していたNDC に今では積極的に対応して、新たに登場したアグレゲータとの競争に勝利するためと、航空会社に“中抜き”させないための両方で頑張っているGDSとの、これからのせめぎわいが激しくなるだろう。

 

 

 

グロバールOTAの第3四半期決算で、EXPE22%大幅減益となった「9. エクスペディア 3Q 減益」。その反対にBKNG10%増益した「15. ブッキング3Q、増収増益達成」。どちらもnet incomeベースだ。EXPEの減益は、GoogleSEOに関するアルゴリズム変更が影響しているという。BKNGは、このチャネル規模がそんなに大きくなく影響が軽微であったという。TRIP3Qも減収減益となった「12. トリアド、トリップ・コムと中国合弁設立」。TripAdvisorブランドホテル収入が、Google自身のホテルプロダクト検索増加が原因で14%減少したのだ。Googleの旅行領域参入がますます本格化しているようだ。

 

117日、3社の株価は、EXPE27%BKNG8%TRIP22%、と値を下げた。市場は、オンライン旅行市場におけるOTAの今後の競争力維持を懸念しているのだろうか。OTAは、サプライヤー直販拡大はもとより、Airbnbなどの新たな販売モデルの台頭やGoogleなどのグローバルプラットフォーマーとの競争激化に直面している。(編集人)

5. (TJ) オヨ、15億ドル追加調達」と「14. スタートアップに200億ドル注入」の2つの記事から、今までOYOは累計で20億ドルほどの資金を調達し、その規模は過去10年間の世界の旅行領域スタートアップ総投資額200億ドル(約22兆円)のほとんど10%を構成していることが分かる。この多額の資金調達を支えている主要投資家には、ソフトバンクのビジョンファンドが含まれる。ソフトバンクは、最近、上場延期を余儀無くされた米WeWorkに(支援策として)50億ドルを出資することを決定した。(ビジョンファンドは、すでに累計100億ドル=約1.1兆円)をWeWorkに投資している。)出資しているUberの株価も上場時より25%も下がっている。まさかOYOWeWorkの二の舞なんてことには・・・? ビジョンファンドの主要投資先には、旅行関連では、OYO, Uberに加えライドシェアのGrab(シンガポール)と滴滴出行(中国)がある。 

 

15. トーマスクックと中小旅行会社」と「16. トーマスクック倒産の教訓:流通ミックス重要」は、トーマスクック(TCG)の倒産原因が、アイデンティティー(企業の独自性)・リダーシップチーム・市場のトレンド・テクノロジー戦略、の5つに重大な問題(瑕疵)が存在したためだと解説している。そして、近代のトラベルテックが進化した市場では、API、オープンシステム、提携(後述再掲)の方法によって、中小旅行会社と雖もTCGと変わらない在庫にアクセスすることが可能であると説いている。むしろ中小旅行会社の方が、小回りがきいて、経営環境の変化に迅速に対応し、社内のコミュニケーションにも優れていると書いている。また、大手ツアオペに送客をべったり依存するのではなくて、複数のデジタルチャネルを利用するチャネル管理が極めて重要だと教えている。 

 

10. テクノロジー・コンバージェンス」は、スタンドアローンの複数のシステムを繋げば(コンバージェンス/融合すれば)、より優れたアウトプットが生まれると言っている。恥ずかしながら、この言葉を初めて聞く者には即ピンと来ないが、その一例として記されている、Disney+ABS+Pixar+MarvelViacom+Paramount Studio+CBSM&Aによる企業の混ぜ合わせを見ると少しは理解が進む。要すれば何から何までの自前主義は(あるいは個別システムの独立させたままの寄せ集めでは)もはや通用しないので、これからはテクノロジー・コンバージェンスをよく理解して、自分に相応しいパートナーとの提携戦略(あるいは個別システムの繋ぎ合わせ)が必要だと言っていると解釈した。DisneyViacomの場合はM&Aによりそれを実現している訳であるが、M&Aだって提携の究極的な形である。トラベル・エコシステムの発展も、ここ辺りにそのレゾンデートルがあるのかもしれない。観光MaaSだって企業間提携をベースにしている。そう言えば、TCG倒産ニュースでも提携について触れている。また「1. (TJ)ブッキング、航空便予約開始」で、Booking Holdings CEOConnected Tripと言っている。コンバージェンス、コネクテッド、融合、繋ぐが重要なキーワードとなりつつあるようだ。インターネット社会のIoTが進んでいる訳だ。(編集人)