バニラエア、「第5の自由」輸送の基地、台北に開設=東南アジアで最初の日本の大手LCCとなる

当分析はCAPAが2016年7月22日に発表した 

 

 

Vanilla Air launches Taipei 5th freedom base, becoming first major Japanese LCC in SE Asia: VIDEO

 

 

をJAMRが全文翻訳したものです。

 

22-Jul-2016

バニラエアはANAとエアアジアによる共同事業エアラインであるエアアジアア・ジャパン解消の危機の中から生まれた。ANA100%の所有者となり、戦略的価値とプライドのために、速やかにこのエアラインを再立ち上げした。問題は大きく、バニラエアの存在は脆弱なものだった。

 

今やバニラは、自分の分野を見いだし、外向けにも、内向けにもアイデンティティを形成して居り、それが明白となるよう努力して居る。20166月のCAPA北アジアLCCサミットでも表明した通り、同社は東南アジアで大規模な存在感を持つ、最初の日本のLCCになる計画を進めて居る。バニラは、日本が台湾や殆どの東南アジアの諸市場と結んだ、オープンスカイ協定のお陰で可能となった、台北から「第5の自由」輸送権による便を運航することで、日本と東南アジアの間の地理的な限界を、そして狭胴機の航続距離の限界を克服しようとして居る。その最初の東南アジア便は、台北から、東南アジアではシンガポールに次いで重要な、またANAにとって戦略的に重要なホーチミン行きである。

 

バニラエアは、「第5の自由」便の旅客の殆どは、台湾人と想定して居る。当面は、バニラエアが、日本への東南アジアの旅行客の拡大に貢献するとは思えない。然し、時とともに、より多くの日本人旅行客がLCCを受け入れると見て居る。バニラエアは台湾のLCCが、これまでのところ日本に焦点を絞り、東南アジアには殆ど向かって居ない好機を掴もうと考えて居る。

 

然し、台湾から「第5の自由」便を始める為に、バニラは、これまで以上に路線網を細分化する事になる。ジェットスタージャパンが持つ国内線の力や、ピーチアビエーションが持つ大きな国際線市場と違って、バニラには核となる市場が無い。中期的には魅力的だが、限りのある「第5の自由」便を使うのは、長期に亘る戦略では無い傾向が強い。

 

バニラエアは、台北「第5の自由」基地を東南アジアへの突破口と発表

 

日本と韓国のLCC各社は、戦略的な課題を抱えて居る。国内線の商機は、限られて居る:即ち、韓国では、国内幹線のジェジュ線は、ジェジュでの発着枠が少ないため、制限されて居る。日本では、未だに、旅客はLCCに乗る事に何かしら躊躇がある。フルサービスエアラインは、高価だけれど、強固な評価と、根強いファンに恵まれた企業である。市場は東南アジアの場合よりしがらみが強い。東南アジアも、大幅な自由化で、日本と同様に大きく恩恵を被って居るが、韓国では、特に台湾と中国本土に関して、より難しい状態だ。空港の発着枠が全般的に問題である。

 

これとは対照的に、東南アジアは北アジアのLCCに対して、広く開かれて居るが、日本と韓国からは、狭胴機の航続距離が問題となる。韓国から、LCCは幾つかの東南アジア都市に飛べるが、日本では、主要都市である大阪と東京から東南アジアには届かないのだ。もっと南にある日本の都市が東南アジアを飛行圏内に収める事が出来る。ピーチ・アビエーションは国際線の基地を沖縄に構築する事を計画して居る(台北から北へ1時間弱)が、未だ東南アジアの地点を開設して居ない。


異母姉妹であるLCCピーチの足を踏みつける事になり、ぎこちない、はっきりしない両社の関係に、新たな力関係(ANAはバニラを100%所有して居るが、ピーチには、少数株式を取得して居るだけだ)を生み出すのだが、バニラエアもまた、沖縄を東南アジアのハブにと考えた。

 

バニラはまた、東南アジアへの航続距離を獲得するために、広胴機の使用も考えたが、バニラには、エアアジアXやスクートの様な、低コストの基盤(或は攻撃的なLCCの文化)が無いので、これはリスクを伴う事だっただろう。広胴機を使えば、ANAが歴史的にJALより遙かに小さな存在でしか持って居ない、ハワイなどのリゾートや海洋観光路線市場で、バニラがANAにグループとしての存在感を与えられたかも知れない。

 

ANAは今やA380を手に入れて(ANAによる国内線エアライン、スカイマーク再生計画に対し、エアバスの支持を確保するために買ったもの)この存在感を実現するだろう。

 

<関連記事参照>

l  バニラエアの 親会社ANAとの二重ブランド計画=広胴機と新たな基地が再検討される中で 31-Oct-2015

l  バニラエア、ANAにより大きなグループの存在感を与える=ハワイ、太平洋の島々で7-Dec-2015

 

バニラエアが加盟して居る、バリュー・アライアンスを通じた東南アジアへのアクセスとは、補完的な旅客需要を提供する事を意味する。もしこれが、バニラエアの狙って居る規模を実現してくれるものなら、バニラは東南アジアでオンラインの存在である必要がある。

バニラは台北から「第5の自由」便を運航すると言う計画に自然に引き寄せられて行った。台北はバニラエアの主要な基地であり、殆どの東南アジアが(バリは主要な例外であるが)の狭胴機の航続距離の範囲内にある。東南アジアと台湾は、東南アジアのLCCを通じて、繋がって居るけれども、台湾の新しいLCC各社は日本に照準を置いて居る。

 

<関連記事参照>台湾のLCC、タイガーエアとVエア、日本路線の拡大に焦点=他市場を育てながら 17-May-2016

 

CAPA20166月の北アジアのLCCサミットの時期に、バニラエアは五島 勝也CEOが語って居る通り、台北のハブ構想を完成させようとして居た。

 

バニラエアの五島勝也CEO、自社を語る於CAPA北アジアのLCCサミット:20166

Source: CAPA TV

 

台湾は日本のLCC各社にとって主要な市場である

2016914日、バニラエアが沖縄/那覇=台北/桃園の毎日便を開設すると、バニラエアは台湾にてピーチと同等の規模になる。因みに、最大のLCCタイガーエア・台湾は台湾全体で4番目の規模のエアラインである。

台湾で9番目に大きなエアラインは、台湾で2番目のLCCVエア)より多い、週間28,000席を供給して居る。 

 

 

エアライン別、台湾のLCCの供給席数:2016919~25日 (表1)

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

台湾は、ピーチとバニラにとって最大の市場である。(国際線路線網がまだ生まれたてのジェットスター・ジャパンにとっては、台湾は香港より僅かに大きい)バニラは、唯一の他の国際線である香港に比べ、3倍の供給席数を持って居る。20169月には、バニラエアは東京/成田を除く日本のどの空港より多くの座席を台北発着で運航する事になる。

 

 

台湾行き日本のLCCの運航便概要:2016916~25

Airline

Routes And Weekly Frequency

Weekly Total Taipei

Weekly Total Taiwan

Number of Taiwanese Airports

Number of Japanese Airports

Jetstar Japan

Osaka Kansai-Taipei (7)

Nagoya-Taipei (7)

Tokyo Narita-Taipei (7)

21

21

1

3

Peach

Tokyo Haneda-Taipei (7)

Osaka Kansai-Kaohsiung (7)

Osaka Kansai-Taipei (21)

Okinawa-Taipei (14)

42

49

2

3

Vanilla

Osaka Kansai-Taipei (7)

Tokyo Narita-Kaohsiung (7)

Tokyo Narita-Taipei (28)

Okinawa-Taipei (7)

42

42

2

3

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

注)台北便は全て桃園空港行き。

 

バニラエアの台北での存在拡大は、台北/桃園をバリュー・アライアンスのハブとする方針を更に固める

 

バニラエアの台北での存在拡大は台北/桃園を、地元の加盟社は居ないものの、バリューアライアンスのハブとする方針を更に固める。

タイガーエア(シンガポール)とタイガーエア豪州が加盟社であるにも関わらずタイガーエア台湾は、未だ加盟して居ない。

 

バリューアライアンスの便数による北東・東南アジアの空港ランキング:2016612~18日(表2)

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

他のバリューアライアンスのメンバーのハブを含む、どの空港に比べても、より多くのバリューアライアンスのメンバーが台北に就航して居る。 

 

 

バリュー・アライアンス加盟社数による北東・東南アジアの空港ランキング:2016612~18日(表3)

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

<関連記事参照>バリュー・アライアンス:ハブ、焦点空港そして路線=メンバーがシナジー効果を享受できる可能性 20-Jun-2016

 

バニラエアは、ANAホールディングにとって重要なホーチミンを選ぶ

 

バニラエアは、最初の東南アジアの、そして台湾からの最初の日本以外の目的地として、ホーチミンを選んで居る。2016914日に、A320による、東京/成田=台北/桃園=ホーチミンシティ線を毎日1便開設する計画だ。

バニラエアは殆どの乗客は台湾人と想定して居るが、ホーチミンから台北行きの、全ての搭乗客はゲート近くに確保された待合室を利用可能で、乗継旅客用セキュリティエリアに行く必要が無い。東京からホーチミンへの距離は、台北経由が、直航より、ほんの4マイル長いに過ぎない。

 

東京/成田、台北/桃園およびホーチミン地図(表4)

Source: Great Circle Mapper

 

ホーチミンは、ANAがベトナム航空の少数株式を取得したことから、ANAグループ(ANAホールディングズ)にとっては、戦略的に妥当である。バニラエアがホーチミンを発表すると同時に、ANAは東京/成田=ホーチミン線の、20161030日から毎日2便化を発表した。

 

これは、日本=ベトナム間で供給過剰を生む様に見え、リスクとなる可能性がある。然し、多分見た目ほどでは無いかも知れない。上述した様に、バニラエアは日本=ベトナム間の乗継需要では無く、主として地元需要を狙って居るからだ。

 

ANAの追加便は主として北米路線網への送客が目的である。ANAはユナイテッドが香港=ホーチミン線を休止する事から、毎日2便目を追加して居る。ユナイテッドのホーチミン線旅客は、ユナイテッドが、より実収単価の低いホーチミン=北米間の旅客の為に、香港=北米間の実収単価の高い旅客を諦めねばならない圧力を感じて居た、香港経由便でなく、東京でANA/ユナイテッドの太平洋横断共同事業便を使って、北米に乗り継ぐ事が出来る。日本にはより豊富な供給席数と目的地がある(ユナイテッドは、香港から北米の、僅か3地点にしか飛んで居なかった)。

 

<関連記事参照>

l  ベトナム航空、2016年の展望:ANAとの戦略的提携=IPOと域内での拡大を支える 19-Jan-2016

l  ジェットスター・パシフィック、2016年、保有機材と国際線の拡大を計画=べトジェットとの競合が激化する中で 9-Mar-2016

 

ANAの選択の妥当性が、何故バニラがホーチミンの様な強力な路線を選んだかを説明できるだろう:即ち、このベトナムの商業的首都は台北から東南アジアでは、シンガポールに次いで最大の目的地である。ホーチミンはまた、台湾から近い東南アジアの目的地のひとつである;中華航空の、また特にエバー航空の、長距離便を使った、北米の乗継旅客の極めて重要な市場である。

ハノイにはLCC運航会社が無く、台湾からの供給席数で言うと、ホーチミンの半分の規模しかない。

 

東南アジア内の台湾からの就航空港、供給席数別ランキング:(2016718~24日)

Rank

Airport

Total seats

1

SIN

Singapore Changi Airport

41,905

2

SGN

Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport

35,004

3

BKK

Bangkok Suvarnabhumi International Airport

35,002

4

MNL

Manila Ninoy Aquino International Airport

28,611

5

KUL

Kuala Lumpur International Airport

22,400

6

HAN

Hanoi Noi Bai Airport

14,518

7

CGK

Jakarta Soekarno-Hatta International Airport

8,876

8

DMK

Bangkok Don Mueang International Airport

8,556

9

DPS

Bali Denpasar Ngurah Rai Airport

8,202

10

BKI

Kota Kinabalu Airport

6,242

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

20167月時点で、台北/桃園=ホーチミン線のLCC浸透率は18%で、全てべトジェットの供給席である。

 

ナショナルフラッグのベトナム航空は全供給の9%を占めるが、残りの72%は台湾のエアラインが占めて居る。然し、他の選択肢と比較して、ホーチミンはバニラエアにとっては安全かも知れない。近距離である事から、しばしば「第5の自由」便では高くつく、運航コストを低減できる、一方で、他の東南アジアのトップ市場は、遠すぎるか、LCC占有率や、LCCの存在感という点で、より激しいLCC競争に晒されて居るかのどちらかである。

 

東南アジアの例で言えば、べトジェットの18%の占有率はLCCにしては比較的に小さく、べトジェットは未だ台湾での存在感を構築して居る最中である。べトジェットは、またベトナムでの売り上げの方が大きい。台湾のLCCがホーチミンに飛んで居ない状況で、バニラエアは台湾で獲得して居る自社の地位を活用する事を試せるだろう。

ベトナム航空のLCCであるジェットスター・パシフィックが成長するにつれ、ANAとベトナム航空の間で、衝突する事があるかも知れない。今のところ、香港とマカオがジェットスター・パシフィックの北アジアでの唯一の市場である。

 

<関連記事参照>ジェットスター・パシフィック、2016年、保有機材と国際線の拡大を計画=べトジェットとの競合が激化する中で 9-Mar-2016

 

 

台北/桃園国際空港からホーチミン/タンソンニャット空港(週間供給席数、片道ベース):2011919~201712日(表5

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

ジェットスター・ジャパン、東南アジアに飛ぶ最初の日本のLCC、然し撤退して居る

 

台北/桃園=ホーチミン線を開設することで、バニラエアは東南アジアで最初の日本のLCCとなる予定だ。然し、バニラエアは、技術的には東南アジアに飛ぶ最初の日本のLCCでは無いだろう。ジェットスター・ジャパンが20163月にマニラ線を開設してフィリピンに就航して居る。ジェットスター・ジャパンの唯一の東南アジア路線はマニラ線で、東京/成田、大阪/関西、そして名古屋から飛んで居た。

 

この便は、20166月に休止された。その際ジェットスター・ジャパンは、「20167月と8月の間、暫定的にマニラ線を運休する。日本の国内線の夏季旅行繁忙期には国内線の便に大波が押し寄せ、この需要に円滑に対処するために、国内線に、より多くの原資を注入する予定である。また、同時期はマニラ線のローシーズンに重なる。」と述べて居る。

 

ジェットスター・ジャパンは、2016年、北半球の秋に復便する計画だが、スケジュールはまだ決まって居ない。

最盛期には、日本=フィリピン間市場で、ジェットスタージャパンはJALよりも大きくなったが、これは全体像として市場占有率が低い事から来て居る:即ちフィリピン航空が市場の55%を占めて居るからだ。セブパシフィックとANAが、有効供給席数のほぼ11%を占めて居る。

 

 

日本からフィリピンへ(週間供給席数、片道ベース):2013715~201712日(表6

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

東南アジアの日本行き観光が増大、然し、市場には更なる解決策が必要

 

日本のLCCが、近い将来、日本=東南アジア間市場に影響を及ぼすとは考えにくい。主要な東南アジアの国々から日本への訪問者数は2000~2010年の間、年間約50万人のところで留まって居たが、2013年に100万人を突破し、2015年には200万人を超えて居る。

市場は円安と、航空サービスの自由化、そして日本が煩わしかったビザ要件を自由化した事から、4年間で4倍に膨れ上がった。

 

 

東南アジアの主要国からの訪日客数及び中国本土を除く占有率:2006~2015年(表7

Source: CAPA - Centre for Aviation and JNTO

注)東南アジアの主要国とはタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン及びべトナム

 

<関連記事参照>JALとエアアジアの提携=東南アジアでJALANAに追い付くのに役立つ可能性あり 30-Mar-2016

 

バニラエアの台北「第5の自由」輸送基地は、スクートがやはり「第5の自由」便を追求して居るのと重なる。これらの運航は、しばしば言われる「第5の自由」便は維持するのが困難であると言う評価に対する挑戦である。ANAホールディングズが、ピークを過ぎたと思われる日本の市場に関わらない、新たな事業の流れを開発する事を意識して居るとは言え、例え、採算がとれたとしても、バニラの台北「第5の自由」ハブが大きな戦略的価値を齎すかどうかを判断するのは難しい。台北で良い経験をすれば、ANAとバニラは、ピーチアビエーションが、構想したものの、未だ手を出して居ない、外国人のAOCAir Operators Certificate航空事業者免許)を考える事になるだろう。

 

当面は、日本は主としてインバウンド旅客で、高度成長のモードに入って居る。バニラはこの成長過程を如何に原資に取り込んで、他社が参入する前に長期的な地位を確保する事が出来るかを考えなくてはならないだろう。広胴機を使わないのは、たぶん短期的には賢かったかも知れないが、将来に向かって採るべき道だったのかも知れない。然し、理想的には、次世代狭胴機が広胴機の多くの利点を、より低いリスクで実現してくれるかも知れない。

 

<関連記事参照>スクート、高雄-大阪、バンコク-札幌を計画=長距離LCCとして第5の自由の商機に的を絞る 17-Apr-2015

 

ピーチアビエーション井上CEO、自社を語る於CAPA北アジアのLCCサミット:20166

Source: CAPA TV

 

現在のところ、日本のLCC各社は依然、新たな拡大を求めて居る。

 

ピーチアビエーションはCAPAの北アジアのLCCサミットで語った様に、東南アジアに興味を持って居る事を再三繰り返して居るのだが、未だに確固たる計画は持って居ない。東南アジアが広大である様に、日本のLCCは最終的には、それより広大でより近くにある国、中国に向かって行くのだろう。

以上

 


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