フラポート、16年経って西安空港の持ち株売却:「満足だが失望」

当分析はCAPAが2022年4月2日に発表した

 

Fraport sells Xi'an Airport stake after 16 years: 'satisfaction but disappointment'

 

JAMRが全文翻訳したものです。

2022年4月20日

 

フラポート、16年経って西安空港の持ち株売却:「満足だが失望」

02-Apr-2022

 

この数週間、CAPAは疑問を投げかけて来た:今は空港の運営企業たちが、或は投資家たちが、世界の出来事に照らして再評価をする時なのだろうか。フラポートは確かにロシアのサンクトぺテルブルグ・プルコヴォ空港への投資でそれを実行した。

 

今や、フラポートは、中国の航空産業への投資家たちの誰にとっても、数少ない外国人投資先の一つである、西安空港への投資も辞めると発表して居り、既に地元の買い手を見出だして居る。

 

今回の理由として上げられるのは、この国へより多くの投資をする事に感じられる商機の欠如に絡むもので、確かにこの例がそれだろう。CAPAの分析が示して居るのは、西安は、*ボストンーボックスの表現で言う、「負け犬」は言うまでもなく「問題児」でもないのだ。

 

同時に、悪化する政治的な関係が、世界的に、この決断に如何なる影響も与えなかったと言うのは、信じがたい様に見える。

 

訳注)* Boston-Box terminology:ボストン コンサルティング グループ(BCG)が提唱した、事業の選択と集中を行う際の評価方法で、「相対的な市場シェア」を横軸に「市場成長性」を縦軸にしたシェア・マトリクスに各事業をプロットすると、各事業は「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4象限に分類さる。 

 概要 Summary

  • フラポートは、16年間に亘る中国の西安空港に対する投資を辞めることを発表した。
  • この決断は、ロシアのサンクトペテルブルグ・プルコヴォ空港の運営会社への投資から撤退したほんの数週間後にやって来た。
  • この例では、フラポートは、中国で他の投資機会が欠如して居る事への懸念を述べて居る。
  • 西安空港自体は、フラポートによって充分に開発されて居り、2019年には中国第7位の繁忙空港になり、COVIDの大波にも関わらず、殆どの経済指標はプラスを示して居る。
  • マクロ経済/政治的決断もまたフラポートの計算の中で役割を演じた事が有り得る。

 

ロシアの投資から撤退した後、フラポートは中国への投資の終焉に動く

 

最近の二つのCAPAの記事で、世界の政治は、益々空港の所有と経営に影響を及ぼして居る姿が検証されて居る。

 

ウクライナ侵略:フラポート、サンクトペテルブルク・プルコヴォ空港撤退。空港投資家たちへの警鐘が鳴る」では、空港への世界で最も大きな投資家であり運営会社の一つであるフラポートが、ロシアのサンクトペテルブルクでの自社の事業に、どの様に「止まれ」を決断したかをレポートした。

 

同社は、2009年以来プルコヴォ空港を運営する、ノーザン・キャピタル・ゲートウエイの25%の株式を持って居た。明確な意味合いでの「中止を宣言する」事は出来なかったが、フラポートのCEOの強い言葉が、同社はコンソーシャムから長期に亘り距離を取る事とし、持ち株の買い手が見つからないものかと示唆して居た(持ち株を売ることが許されると仮定して;それには若干疑問がある)。

 

この記事はまた、フラポートは、空港やそれを支える構造に対する外国、西洋からの投資家が稀な中国の西安でも運営企業代表だと述べて居る。フラポートは、2008年から(サンクトペテルブルクでの契約の前年)、西安咸陽国際空港の24.5%の株式を持って居る。

 

そこで同社は専門的に地上インフラ要素(ターミナル、駐車施設、管理棟、消防施設、医療その他の施設)そして付随する地上物件、と同時に商業エリアの管理を含むターミナルの運営に携わって居る。

 

別の記事「パンデミック、政治が複雑化して北京首都空港への資金調達を阻む」(そしてそれに続く香港に関するものでも)にて、中国に対するパンデミックの長引く衝撃にも焦点が当てられて居る。

何かしら平常な状態の様なものが回復されるまでには、またもう一年かかる可能性がある。

 

地球規模の政治展開が両方の投資に暗雲を投げかける

 

従って、フラポートの投資がドイツの北と東に関する限り(アンタルヤとデリーを除けばサンクトペテルブルクと西安が唯二つの例)、これら投資に影響する要素には、中国に於ける長引くパンデミック対策と、ロシアのウクライナ侵略(この両方とも「周知の事実」として明らかである)が含まれ、そして「未知のもの」が2つある。

 

フラポートAGの稼働中の空港

Source: CAPA - Centre for Aviation.

 

それらは、まず、中国が、ウクライナに関するロシアの(ますます不明確な)目的を支援すると決める可能性。

中国の習近平主席には、どちらかを決断をするための絶好の機会があって、この記事が発信される時までには、そうしてしまって居るかも知れない。

 

もし彼が決断した場合、米国とその他の国々によって中国に対し急速に制裁が科され、必然的に、極めて明白な世界の東西分裂の始まりを伴うだろう。

 

もう一つの「未知なるもの」は、中国が台湾を侵略するかどうかだ。力の劣るとされるウクライナ国軍と市民の手によって、ロシアが袋叩きにあった事に鑑みて、習主席は多分、彼が既に下して居るかも知れない決断を、それが何にしろ、緊急に見直して居るだろう。

 

然し、もし彼が侵略したとしたら、経済的な見通しは、誰にとっても劇的に悪化する事になるだろう。

 

これらの理由からサンクトペテルブルクの記事は、「今や、どの空港投資家も全ての投資を顕微鏡で調べて居るに違いない」と結論づけ、「フラポートはその国外投資を捨てて、フランクフルトに縮小しようとするのか、将来的に他の問題がありそうな所の損失切りだけをするのか?他の同業者達もそれに追従するのか?」と付け加えて居る。

 

フラポートの西安についての決断は、より実際的な要素からなされた様に見える

 

だから、ある意味では、2022年3月末日にフラポートが西安咸陽国際空港の24.5%の持ち株をチャンアン・フイトン株式会社に11億1千万元で売ると発表したのも驚きでは無い。然し、この例で示された理由はより具体的である。

 

フラポートCEOステファン・シュルテは語って居る:「我々は西安での活動を大変満足して、然し同時に幾らかの失望とともに振り返って居る。」加えて、「過去14年間、フラポートは西安を年間ほぼ1千万人の旅客を持つ中規模の地方空港から、年間4千万人を取り扱う、中国最大の空の玄関口の一つに開発する事に成功した。」

 

シュルテ博士は述べて居る:「一方で、我々は常に、西安での少数株式を我々の中国での事業を拡大する出発点だと考えて来た。。。然しこれは西安でも、他の中国のどの空港でも実現しなかった。従って、我々は今、中国市場での活動を停止する事を決断した。」

 

フラポートは、株式譲渡手続きを2022年第二四半期に完了する予定である。

 

現時点では撤退するのは最初では無く、最後となるだろう

 

グループADP(アエロポルト・ドゥ・パリだった時代に)、ヴァンシ・エアポーツ、そしてコペンハーゲン・エアポーツなど、幾つかの会社が、中国では、小さく始めて、より大きな報償を狙って居た;然し、彼らの全てが撤退して居る。BAA plcは、その国外投資期間が最高潮だった時期に、香港が依然として英国の植民地だったにも拘わらず、束の間の興味しか示さなかった。

 

主にアジア太平洋地区に活動を集中して居るシンガポールのチャンギ・エアポーツ・インターナショナルでさえ、投資の好機を求めて、まだ中国の扉を叩いて居ない。

 

そして、過去10年間、中国政府もこの分野への外国からの投資を受け入れる姿勢ではなかった。

 

西安はフラポートにとって堅固な業績を上げて来た。。。

 

空港の成長については、シュルテ博士が、西安はフラポートの経営する期間中に主要な玄関口となったと言うのは正しい。2019年には、4,720万人の旅客数で、中国で7番目の繁忙空港だった。

 

下の図表は、フラポートがその投資をした2008年から2022年までの旅客数で見た、空港の成長を記録に留めて居る。2008年から2017年までは、毎年2桁成長、平均で15.1%だった。

 

西安咸陽国際空港旅客数/成長率2008年〜2022年(1月〜2月、今年度始めから現在まで)

Source: CAPA - Centre for Aviation and CAAC.

 

それは中国の全空港の記録を越える成長率で、+12.5%である。

 

つい最近まで、どの空港よりもパンデミックに上手に乗って居た

 

図表はまた、西安が、2020年にその旅客の34%しか失わず、パンデミックの最悪の衝撃を上手く乗りこなすことが出来て居り、2021年には僅か▲2.9%と、甦りを体験して居る素晴らしい姿を明らかにして居る。

 

然し、2022年の最初の2ヶ月で、西安はCOVID-19 の新たな襲撃の犠牲となって、旅客数が63.1%下落した。2021年12月22日から2022年1月24日まで、同市は何処に導入されたものよりも厳重な対策の幾つかとともに、厳しい都市封鎖がなされた。

 

これにより、空港は2022年1月10日の週には25万1,000席に減少し、2022年の最初の2ヶ月間のパンデミックの期間を通して、最低水準の供給席数を体験して居る。然し、規制の緩和は、これらの水準が105万席と、2019年の数字よりも高く、過去4年間でほぼ最高水準へと劇的に上昇した事を意味して居る。

 

西安咸陽国際空港の週間総供給席数 2019年〜2022年*(想定)

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

同空港は未だに、その国際線便を回復して居ない;それは現在、供給の僅か0.2%であり、そのうち外国エアラインは僅か0.1%である。

 

中国東方航空が供給席数の34.1%、便数の37.6% で筆頭エアラインである。中国東方は、最近起きた同社の737−800の1機による原因不明の極めて重大な墜落事故により、現在、困難な状況にあるが、これがフラポートの決断に影響する要素となった事はまず無さそうだ。

 

西安には低コストの需要が欠如して居る。LCCの供給は中国全体が14.6%なのに比べ、僅か7.4%である。西安の供給の51%は「非同盟」エアライン によるもので中国全体より僅かに低い。

 

殆どの日に、同空港は、営業中の各時間帯に於いて(02:00~06:00を除く終日運用)、到着、出発活動で、その稼働が一定して居る。

 

西安は、多くの点で維持する価値がある

 

従って、経済的指標はまちまちである。

 

最も大きなものは、西安の旅客分野での何年にも亘る堅実な拡大で有り、それが、貨物分野でも同様に強力な成長、殊に2018年と2019年(それぞれ物量で+ 20.3%、+22.1%)で増強されて居る。2021年にさえ伸びがあった(物量+5.1%)。

 

殆どのアナリストは、これらの数値を見て、西安はフラポートにとって維持するに値すると結論付けるだろうが、もしこの空港が、より大きな、例えば北京、上海、或は広州のものへ向かう発射台だと言うつもりなら、それは起こって居ないし、多分これからも起こりそうにない。

 

この理解が中国がロシアと同様に、世界のステージで、投資対象として除け者になると言う見通しに付け加えられたら、フラポートのこの件に関する判断は適切なものに見える。

 

購入企業であるチャンアン・フイトン株式会社は西安にあり、「その他の投資プール及び基金」業界の一部であり、それは株主、投資主、受益者に代わって、証券やその他の資産(保険と従業員福利基金を除く)をプールするために組織された法人(即ち投資プール、及び/或は基金)からなる企業グループである。チャンアン・フイトン株式会社の企業ファミリーには4つの会社がある。

 

従って、運営会社と言うより投資企業と見るべきで、CAPAが知る限り、これまでに空港分野での直接の経験を持って居ない。

 以上