ウクライナ紛争、アジア太平洋のエアライン運航を阻害=多分、長期に及ぶ

当分析はCAPAが2022年3月4日に発表した

 

Ukraine conflict disrupts Asia-Pacific airlines' operations - probably for an extended period

 

JAMRが全文翻訳したものです。

2022年3月7日

 

ウクライナ紛争、アジア太平洋のエアライン運航を阻害=多分、長期に及ぶ  

04-Mar-2022

アジア太平洋のエアラインの幾つかは、ウクライナ危機の影響で、ロシア上空通過を避けるため、運航中止や航路変更を余儀なくされ、欧州路線網の運航阻害に遭遇して居る。

 

2022年3月3日まで、アジア太平洋のエアラインは、欧州の各社に比べると、ウクライナ紛争から、より軽微な影響しか受けて居なかったが、日本の主要エアラインが、ほぼ全ての欧州便を少なくとも数日間、運休した時に状況は変わった。運休は延長されそうである。

 

ロシアの上空通過はアジアのエアラインの西欧路線にとって、特に北西アジアのエアラインの多くにとって、重要なものである。

 

ウクライナでの戦争について、アジア太平洋のエアラインから、多様な反応が示されて居る。これには、欧州への便の殆どをキャンセルする、モスクワ便をキャンセルする、或はロシア上空を避けて航路変更をするなどがある。その他は、ロシア領空を飛んで居るが、状況を注視し、緊急時の対応計画を立てて居る。

 

欧州と北米のエアラインの多くは、報復条項のため、既にロシア領空の使用が出来なくなって居る。

 

これは、既に回復に後れを取って居る、欧州=アジア間航空旅行市場にとっては重大な影響をもたらして居る。

 

概要 Summary:

  • JAL、ANAはウクライナ紛争のため、殆どのロシア領空通過便を運休。
  • 幾つかの欧州便は日本から運航して居るが航路変更されて居る。
  • カンタスは、ロシア領空を避けるために、より大圏航路に近い航路をとって居る。
  • ロシア領空を使う、その他のエアラインは既に緊急事態対応計画を準備して居る 

 

<関連記事参照:欧州=アジア間航空:ウクライナ危機の前に既に回復が失速Europe-Asia aviation: recovery stalled even before Ukraine crisis

 

JALは欧州便、そしてコードシェア便も運休

 

JALは当初、他の欧州路線に影響を与えなかったが、2022年3月4日に、状況の変化のため、急な知らせとして、東京・羽田からモスクワへの便だけをキャンセルした。

 

それは、同エアラインが欧州線の運休を劇的に増やした、2022年3月3日、正に起こった事である。

 

JALは2022年3月3日に予定されて居た、東京とロンドン、モスクワ、パリ、ヘルシンキ、そしてフランクフルトの間の便をキャンセルした。そのうち何便かは片道、或は往復とも貨物専用だからとの事だった。

 

2022年3月4日については、同エアラインは、モスクワ、パリ、ヘルシンキ、そしてフランクフルト路線をもキャンセルした。もう一つのロンドンからの帰り便はキャンセルされたが、東京とロンドン間の便は、航路とスケジュールを変更して運航する予定だった。

 

ロシア上空を通過して西へ飛ぶ代わりに、ロンドン直航便はアラスカ上空通過の北東行きの航路をとった。これは飛行時間が、行きはほぼ3時間も長く、帰りは4時間半も長い事を意味して居る。

 

JALは乗組員の乗務時間制限から、他の欧州路線では同様の代替案は取れなかったと言う。

 

同社は、2022年3月5日以降の欧州便に関する決定を発表して居ない。

 

下のグラフは、キャンセルが発表される前、2022年2月28日の週に、JALの国際線供給席数のうち、西欧線は13.1%を占めて居る事を現わして居る。ASKで見るとほぼ18%を占める事になる。

 

JAL:出発席数で見た、地区別国際線上位の市場(2022年2月28日の週)

 

 

 Source: CAPA and OAG.

 

JALは、殆どの便のキャンセルが発表される前に、既に可なりのコードシェアの調整を済ませて居た。

 

2022年2月28日から3月26日までの間のJALの欧州便に於ける、英国航空とフィンエアとのコードシェアを休止して居る。

 

この措置はロシア領空での欧州エアラインの通過を制限する動きのためであり、JALは「ロシア当局による我が社の運航の差し止めを避け、信頼できる便の運航を維持するためだ。」と言って居る。

 

ANAも欧州便を1便のみ運航して居るが、その航路を変更して居る

 

ANAも、同様の対策を打って居り、暫定的に、通常はロシア上空を通過する、殆ど全ての欧州便を運休して居る。

 

同エアラインは、2022年3月3日と5日までの東京とロンドン、パリ、そしてフランクフルトの路線の便を、その3日間にスケジュールされて居ない幾つかの便は除き、キャンセルした。

 

SIAはモスクワ便を止めたが、他の路線は影響を受けて居ない

 

シンガポール航空は、2022年2月28日からのシンガポールとモスクワの間の全ての往復便を、「運航上の理由から」として運休した。

 

SIAの他の欧州便に変更は無い。同社はウクライナを横切る、或はロシア-ウクライナ国境地域の近くを飛ぶ路線を持って居ないし、モスクワ便の運休以降はロシア領空内の路線は無い。 

 

カンタスは既にダーウイン=ロンドン便をロシア外に航路変更して居る

 

カンタスは、その豪州ダーウインとロンドン間の便の航路を、2022年2月27日以来変更して居る。同エアラインは「現在の環境と複雑な状況から」、ロシア上空を通過しない代替航空路の一つを使って居る。 

 

この便は、以前はロシア領空の北部を通過して運航されて居り、現在はその代わり中東と南欧州を通る路線を使って居る。これにより飛行時間は約1時間長くなる。

 

大韓航空は便の航路変更のため緊急事態対応を検討

 

大韓航空のモスクワ便は、現在のところ、通常通り運航して居る。同エアラインには現在制限されて居るウクライナとロシアの一部の領空を通過する便は無い。

 

然し、大韓航空は、もしロシアの領空が全て閉鎖されるとするなら、同社の殆どの欧州便は影響を受けるだろうと述べて居る。

 

同エアラインは、紛争が何らかのスケジュール阻害を起こした場合の、緊急事態対応計画を検討して居る。 

 

マレーシア航空は、忌わしい記憶を呼び起こすこの地域を既に避けて居る

 

マレーシア航空は、同社のクアラルンプールからロンドンへの便はスケジュール通りであると語った。

 

同エアラインは、欧州目的地発着の同社の全便について「引き続きウクライナ、ベラルーシ、そしてロシアの領空を避ける事を継続する。」と述べた。

 

勿論、マレーシア航空は、2014年にMH17 が同国上空で撃墜されたウクライナには、悲劇的な歴史を持って居る。 

 

紛争が長引けば、アジア太平洋のエアラインにとって、問題は拡大して行くだろう

 

ウクライナ紛争の影響は、特に日本のエアラインにとって、既に、スケジュールと航空路にかなりの問題を惹き起こして居る。

 

その他のアジア太平洋のエアラインは、もしロシアの領空を使わないと言う決断がなされれば違うが、今のところ、より軽微な影響しか被って居ない。東南アジアのエアラインは、北アジアのエアラインに比べ、代替の航空路を取る、より大きな余地を持つ傾向がある。

 

これらの運航上の障害に加え、アジアのエアラインには、更にもっと大きなリスクが突きつけられて居る。幾つかの欧州の提携相手が、アジアの路線を運休すると言う事実は打撃となるだろうし、もし紛争が続けば、欧州行き及び欧州発の航空便への需要は、大きく影響を受けかねない。長引く戦争は、また、世界経済にとって邪魔者となり、旅行への気分を削いでしまうだろう。

 

物理的な衝突が鎮静化したとしても、経済制裁とその報復は、ウクライナとロシアの領空通過航路の使用を危険にさらし、しばらく継続するだろう。これは市場が開放されようとする中で、航空便のスケジュールに大きな再調整を生じさせるだろう。

以上