航空業界の生存への脅威はCOVIDでは無いー環境問題だ。

当分析はCAPAが2021年9月7日に発表した

 

Aviation’s existential threat is not COVID – it’s the environment

 

をJAMRが全文翻訳したものです。

2021年9月13日

航空業界の生存への脅威はCOVIDでは無いー環境問題だ。

07-Sep-2021

 

自然環境の持続可能性は、エアライン産業の主要な脅威として迫って来て居り、それに依存する旅行分野全体にとっても同様である。

 

正確で効果的な排気ガスの測定が、本当の削減のために最も重要な鍵となる。

 

今月、CAPA Liveは環境的な持続可能性と航空業界についての話題を探索する予定だ。排ガス削減の目標を達成するために、最も重要なステップは、正確で効果的な個々のエアラインの排出ガスの測定である。

CAPA とその持続可能性分析パートナーである、エンヴェストは、2021年10月に出版予定のこの問題に関する記念碑的なレポートに先立って、エアライン業界にとっての持続可能性の意味に関する、幾つかの初期段階の発見を明らかにする予定だ。

2021年9月8日のCAPA Liveに於いて、CAPA とエンヴェストは、全業界の排出量総計のおよそ55%を構成する、世界の主要エアライン25社のデータを提示する。ASK及びRPK当りの二酸化炭素の排出については、このクラスの最善と最悪の間には極めて大きな違いがある。

 

*IPCCの報告が熱い議論を呼ぶ、そして多分通常の基本的位置には戻れないだろう

 

歴史的に、航空業界も含め、ほぼ全ての産業で、環境の変化、即ち進歩に於いては、2つの主要な牽引車がある:(1)しばしば社会の要求と期待の変化に対応した政府の政策と規制;そして(2) より良いビジネスの成果を上げようとするアクションが取られる事が、またより良い環境保護の成果を産む、ビジネスの改善と運用の実効性

より最近では、それは、特に気候変動との関連で、ますます持続可能性のアジェンダを主張する顧客と投資家である。

エアライン業界は新たな科学技術、事業運営とインフラの効率性を取り入れながら、そして保有機群の稼働率の改善を通じて、一貫して炭素排出濃度の相当な削減を達成して来た。1990年以来エアライン業界は、1乗客/km当たりの炭素排出を50%以上削減して来た。

然し、目覚ましく歴史的な効率性の向上にもかかわらず、この業界は、今日、多分その最大の財政的な持続可能性の障害に直面して居る。

2021年には、エアライン業界は、COVID-19パンデミックの最中でも、寧ろ増えこそすれ減ることのない、投資家、顧客、そして管理当局、外部からの、温室効果ガス(Greenhouse gas=GHG)排出を減らせと要求する圧力により、持続可能性の転換点に達して居る。

 

訳注)*IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル) 

 

直近のIPCCの報告によれば、既に逃れられない気候変動への影響の大きさ、また、この惑星にとって破滅的な結果になる可能性を避けるために、大気へのCO2排出とCO2凝縮を減らすための時間が差し迫って居る事についての、深刻で悲観的な影響評価を提示して居る。

このレポートは、どのエアラインが飛び、どのエアラインが投資に値するかの彼らの決断が、ネットゼロへと加速するパンデミック後の世界に、市場のリーダーとして台頭するエアラインに対し、甚大な影響を与える、有力な顧客と投資家の持続可能性の緊急性への危機感を募らせる事になりそうだ。

この最新のIPCC報告はまた、政策決定者や管理当局者に、更にその行動へのタイムラインを圧縮し、航空業界を含む全産業に対する要望と必須要目を提示する様に促す事になりそうだ。

間も無く(2021年10月31日〜)開かれるグラスゴーでの国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26) でまとめられる結果と合意は、行動に関する地球規模の政治的、そして規制の取組み、そしてエアライン業界にとっての、意味合いについての初期の指標となるだろう。

COP26の第1の目標は、「今世紀半ばまでのネットゼロ達成に添った、野心的な2030年炭素排出削減目標」に対する各国の公約を取り付ける事だろう。これが一度なされれば、必ずや、大規模な排出者に対し行動を早める様、指示が降りてくる事になるだろう。 

 

企業顧客と投資家たちは、エアラインが出来るより速く動くだろう

 

主要なエアラインの顧客達は、殆どが2050年までにネットゼロ達成を目標として居る(或は明白な炭素削減の目標とタイムラインが無い)エアライン各社より、ずっと積極的なネットゼロ軌道に乗って居る。顧客とエアラインの目標が揃って居ない事は、若しエアラインが削減目標にマッチ出来ないなら、より積極的な目標を持つ企業に、彼らの業務渡航を減らさせる事になるだろう。

業務渡航の削減による否定的な影響は、全てのエアラインに均等に広がる訳では無い。競争相手より低い炭素オプションで差別化を図れるエアラインは、そのカーボン旅行予算の中で、企業に一番多くのマイルを獲得させることが出来るので、市場占有率を高めるのに良い位置に置かれる事になるだろう。

カーボンプライシングは、幾つもの理由から大きな意味を持つが、まず第一には、殆どのエアラインは、同じ広義のネットゼロ戦略を採って居て、それは以下の内容である:

  • 新しい燃料効率の良い航空機
  • 運航/機材効率性
  • 市場に基づいた手段(カーボンキャプチャーやカーボンオフセットなど)
  • SAF(持続可能な航空燃料Sustainable Aviation Fuel)
  • 水素及び電気航空機

中期的には、SAFは最大の影響力をもつだろう、また長期的には、可能性として水素と/または電気航空機である。然し市場に基づいた手段は短中期的な脱炭素のリスクを制御する鍵となるだろう。

然し、ますます強まる地球規模の炭素集約型産業への要求は、カーボンオフセットの在庫と価格に圧力をかけるだろう。炭素の市場が依然、進化の途中であり、カーボンオフセットの価格は流動的であるが、若しカーボンオフセットの価格が70米ドル/トンであれば、2019年に年間約9億トンのCO2を排出した産業にとっては、大きなそして未だ認識されたことのない負担が生じる。 

 

エアラインには何が出来るのか?

 

もしまだやって居ないとすれば、エアラインは、戦略の構成と方向性について見直すため、事業展開の、財務的な、そして将来のあり得るトレンドとしての炭素とSAFへの投資そして価格と言う観点から深く分析すべきである。

エアラインはまた、SAF、水素、電気などの、将来の抜本的で経済的に妥当な価格での解決策を創り出すために、提携(企業の顧客、外部の投資家と科学技術の提供者/改革者と)を形成しなければならない。

エアラインはまた、以下のように問う事で、アライアンスの役割も考えることが出来る:即ち、中長期的な解決策を促進し、協調する為に、第三者の投資をテーブルに呼び込み、そして業務とレジャーの旅行市場に、明確な価値の提示をする為に、エアラインのアライアンスはどの様な役割を担えるのか、である。

 

今や変化の時だ。

 

エアライン業界は(再び)生存の危機に直面して居る。

COVID-19 を越えた向こうでは、責任ある事業運営、*ESGと持続可能性、そして最終的にはこの惑星への悪影響を軽減させる取り組みへの、より大きな要請に対応する為に、投資家と大規模な企業顧客の世界は変化しようとして居る。

 

訳注)*ESG:Environment,Social,Governanceの3つの観点から長期的な事業機会や事業リスクを

把握する必要があるという考え方

 

事業を運営する際の、これらの力と速度を理解して居るエアラインは、資本と顧客にとって相応しい提携相手であると言う点で、一群の先頭を行く事になるだろう。ここに同期性があって(同時に起こるのが)、生じて来るエアラインの競争的環境が、エアラインに運営経費を削減するよう(特に、より燃費効率の高い新型航空機を使う事などによる排出ガスの削減と言える)巨大な圧力をかける。

COVIDは、今日明日の障害であるが、気候変動のリスク、炭素排出削減そして究極的な企業としての生き残りは、エアラインの役員会そして幹部経営者のレーダーに映し出される、そして、映し出されるべき問題なのである。

以上