東京成田の展望 第1部:嘗てのメガハブ=国際線と乗継旅客の衰退

当分析は、CAPAが3月23日に発表した 

Tokyo Narita Outlook Part 1: once a mega hub, international and transit passengers decline 

をJAMRが翻訳したものです。

 

23-Mar-2015 9:02 AM


その通り、確かに存在する。アジアの空港で殆ど成長の止まった空港があるのだ。


嘗て、「日本株式会社」の成長を推進する震源地であった東京成田空港が、発着枠はふんだんにあるにも拘らず、2014年には、旅客数の伸びは辛うじて0.6%だった。発着枠が中々自由にならない地域空港の中では、北京首都空港は2014年に2.9%、上海浦東空港が9.5%、そして香港が5.5%の伸びを記録して居る。2014年、成田の0.6%成長と言うのは、最初の5ヶ月間が5.7%の増加、残りの7ヶ月間が2.7%の減少と言う内容だった。20151月は更に6.7%のダウンを記録して居る。

 

乗り継ぎ旅客数は、過去最高である2009年の21%から2014年は18%に減少している。成田はまた、中国のハブがついに実力を発揮し始めたために、旅客数の減少に悩むソウル仁川空港と同じ結果を迎えて居る。エアライン各社は東京羽田空港に移ってしまい、一方で米国エアラインは、成田のハブを経由するより、他のアジアの都市に直航する方を好んで居る。将来を見れば、エチオピア航空の就航が計画されて居ることや、ANAJALがより多くの便を設定すれば、長距離便の増加は幾らか考えられるが、米国エアラインの存在が薄れて行く事と戦わねばならない。2015年のデルタ航空の成田での供給は11%下がり、ユナイテッド航空の方は15%減少する。アメリカン航空も、ロサンゼルス便を成田から羽田に移すとすれば、規模縮小の可能性がある。

 

 

国内線旅客数は23%増加、だが肝心の国際線旅客は3%減少

2014年、東京成田は3,560万人の旅客数を記録し、2013年対比0.6%の増加だった。

 東京成田空港年間総旅客数:2008年〜2014

Source: CAPA - Centre for Aviation and Tokyo Narita

成田の総旅客数の83% は国際線旅客で、2013年の国際線占有率86% から落ちて居る。長期に亘り成田は、旅客数を増やして来たが、国際線は、2014年の3%減など、減少して居る。

東京成田空港の国際線年間旅客数:2008年〜2014

Source: CAPA - Centre for Aviation and Tokyo Narita

 

少数派の国内線は、2014年に23%伸びて居る。

 

東京成田空港の国内線年間旅客数:2008年〜2014

Source: CAPA - Centre for Aviation and Tokyo Narita

国内線の拡大が無ければ、2014年、成田は総旅客数の減少に見舞われて居ただろう。

東京成田の客体別旅客数:2008年〜2015

この2014年の前半は、5月まで全体の伸びが5.7%と順調な方だったが、残りの期間が2.7%減となった。そして20151月の総旅客数は、6.7%減で、その内、国内線が5.7%増、国際線が8.8%の減少となって居る。この20151月の国際線旅客数は、過去5年間で最低となって居る。それ以前の各年にも、1月に中国の旧正月が当たった年は無いので、旧正月の変動の影響は大きく無いだろう。

東京成田空港の国際線月間旅客数:2009年〜2015

Source: CAPA - Centre for Aviation and Tokyo Narita


成田の国際線供給席数は160万席減少。90万席は羽田に移転


2014年、東京成田は、国際線供給席数が100万席増加したものの、160万席が減少と言う、純減を経験して居る。成田が喪失した席数の内の幾らかは、羽田に移転したので無く、東京地区から全く消えてしまって居る。エジプト航空は、2014年、成田を撤退し、23千席を引き上げ、マレーシア航空は成田への供給を3万席減らし、ウラジオストク航空は36千席の供給削減を行った。これらのエアラインは羽田への供給増は、一切していない。

 

幾つかのエアラインは、成田と羽田双方から供給を削って居る。アシアナは成田から95千席、羽田から6千席を削減して居る。大韓航空も成田から41千席、羽田から29千席を減じた。

 

2014年、成田での供給席数減少の最大の原因は、JAL、デルタ、ルフトハンザ、エアフランス、ANAそしてユナイテッドである。JALは成田から27万席を削ったが、増やしたのは羽田に237千席のみだった。デルタは成田から26万席を削減し、羽田に3千席のみ追加した。ルフトハンザは、成田から189千席を外し、羽田に174千席加えた。総合すると、成田から羽田に移転されたのは、879千席だけだったのだ。

 

この数字は、東京地区から全く無くなってしまった供給席(エジプト航空、MAS、大韓航空などの例)について、及び、例えばシンガポール航空(SIA)が成田から32千席を減じて、羽田に78千席を追加した様に、成田から引き上げた以上に羽田に供給を開始したエアラインは含めて居ない。この例では、SIAが成田から削減した席数だけ(32千席)を考慮した。

 

ANAは成田から167千席を引き上げ、羽田に564千席を加えたが、ここでは、成田から削った167千席だけを、成田が失った席数として算入した。もし羽田の発着枠が手に入らなかったら、ANAが成田発の便をもっと張れたかも知れないという議論もあるだろうが、ここでは考慮しなかった。

 

下のグラフは、東京成田でエアライン各社が削った供給を示し、また東京羽田に追加したか、若しくは、削減したかを示して居る。2013年に比べて、2014年に東京成田の国際線供給を削ったエアライン27社中、東京羽田に増やしたのは10社だけだった。4社は東京羽田でも削減し、残りは以前から羽田での供給が無かったか、変更をしなかった。

エアライン別、東京成田国際線席数の削減状況とそれに伴う                                                          東京羽田での対応:2013年対2014

東京成田はソウル仁川と同様に、乗継旅客を失う

 

2014年、東京成田の乗継旅客数は、前年対比6%減の530万人だった。この数字は、過去10年間で、20113月の地震と津波で旅客数が激減した年と共に最低の記録だった。

 

2014年の乗継旅客数は2011年に比べてほんの1%多いだけだった。乗継旅客数が、国際線旅客数全体に占める割合は、ピークの2009年の21%から、2014年には18%に落ちて居る。 

東京成田の乗継旅客数と全体に占める割合:2004年〜2014

Source: CAPA - Centre for Aviation and Tokyo Narita

 

2011年以来、ソウル仁川は、東京成田よりも多くの国際線乗継旅客を扱って居る。2014年は、仁川は成田より36%も多くの国際線旅客を扱って居る。然し、国際線旅客数の比率では成田(18%)は、仁川(16%)を上回って居る。

東京成田とソウル仁川の乗継旅客数占有率:2004年〜2014

Source: CAPA - Centre for Aviation, IIAC Tokyo Narita


仁川は、2014年に、乗継旅客数の減少を記録して居る。仁川は減少の原因として、中国と日本のハブを挙げて居る。成田の乗継旅客数は増えて居ない、然し、仁川の乗継旅客を奪って、米国エアラインの減少分を相殺した可能性がある。然し、中国の空港、そして東京羽田空港での乗継旅客数が拡大して居るからだと言う方が、より有りそうな話だ。

東京成田とソウル仁川の乗継旅客:2004年〜2014

<関連レポート参照>

仁川空港、新たなパラダイムに直面=日本・中国のハブが乗継旅客を奪う     10th February, 2015

 

エチオピア航空とANA、そしてLCCが成田で拡大

 

東京成田で、いくらか国際線の成長が起ころうとして居る。エチオピア航空が香港経由(摘み取り権無し)の便を開設しようとして居るのだ。エチオピアはエジプト航空が撤退した後、東京で唯一のアフリカのエアラインになる予定だ。ANAは新たな長距離路線をヒューストンに開設する計画で、東南アジアにも拡大しようとして居る。事業拡大は地元(ジェットスター・ジャパン)と外国のLCC各社からも起こるだろう。

これらの事業拡大の幾つかは、ガルーダなどの供給削減を相殺する事になるだろう。

 

<関連レポート参照>

シンガポール航空業界 3:北アジアが成長を牽引=中国が回復し、日本、韓国が拡大 5-Feb-2015

ガルーダ・インドネシア航空、国際路線網を更に調整=豪州、日本路線を休止15-Jan-2015

日本、来訪客増、エアラインの成長を図るため、対中国ビザを緩和=東南アジアでの成功に続けて13-Jan-2015

ANA、東南アジアの新路線で拡大=エアライン提携と改良された新商品で11-Dec-2014

 

 デルタとユナイテッドは東京成田の供給を削る、アメリカンも同調か

 

日本とその他の国のエアラインによる拡大は、中期計画の方針を維持する米国エアラインが存在を減少させる事で相殺されてしまう。成田で最大の米国エアラインであるデルタは、2010年以来、毎年供給を減らして来ており、一方、ユナイテッドも2009年以来、同様である。OAGのデータに依れば、デルタは2015年成田の供給(発着分、アジア圏内往復の便を含む)を11%削る。ユナイテッドは15%削減する、一方でアメリカンは777−200の客室仕様を改修して増席する事から1%増加して居る。アメリカンは2010年以来、毎年成田での供給を減らして来たが、2015年には、全ての米国エアラインが2005年に比べて小さくなる予定だ。

デルタは、成田と太平洋横断路線全体で、中期計画上、より小さな広胴機を使うため、更なる削減を計画して居る。より近い時点では、アメリカンが、若し現在デルタの持って居る羽田の発着枠を、代わりに与えられれば、成田の供給を減らすだろう。アメリカンは、ロサンゼルス=東京羽田線の開設を提案して居るが、これは間違いなく現在の同社のロサンゼルス=東京成田線を置き換えるものだ。

<関連レポート参照>

アメリカン、デルタそしてハワイアン、羽田の夜間発着枠を争う=戦いは昼間帯枠でも

12-Jan-2015

アメリカン航空、デルタ航空及びユナイテッド航空の東京成田供給席数:2005年〜2015

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

注)デルタにはノースウェスト、ユナイテッドにはコンチネンタルの供給席数を含む

  

 

展望:東京成田は良くやっている。JALのリストラと米国エアラインの削減が厄介な問題

東京成田の2014年の低成長と2015年の旅客数減少の可能性は、特に高度成長のアジアの中で、立ちはだかる問題だ。然し、成田には難しいカードが配られて居るのだ:即ち2008年と2015年を比べると、成田はJALと北米のエアライン(最大の減少はデルタとユナイテッド)によって片道490万席を奪われて居る。これは1日、13千席を超え、LCCの飛ばすA320なら74機分だ。

東京成田のエアライン別、エアラインタイプ別、地域別・総席数の増減:2015年対2008

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

かつてのJALと北米エアラインの輸送旅客数というものは、比較的容易に達成出来た:即ちJALは旗艦であり、デルタとユナイテッドは馴染みの顔だった。日米オープンスカイ協定には多くの政治的な作業を必要としたのだが、2015年の輸送旅客数を達成するにはとても大きな変化が必要だった。

成田は、実質的に3社の確立されたフルサービス・エアライン(JAL、デルタとユナイテッド)による旅客輸送実績を、多くの小規模エアラインに入れ替えねばならなかったのである。

 

2008年と2015年の間に、東京成田では、およそ1ダースのエアラインが純増して居る。多くの新規参入社と急速に拡大するエアラインは、皆LCCであり、その他は湾岸(そしてイスタンブール)からの、新たなハブ・キャリアーである。これらのエアラインが必要とするのはこれまでとは違ったもので(だからLCCTなのだ)、湾岸エアラインの場合では、政治的に快く思われて居ない。

新しいタイプのエアラインの成長は、しばしば、オ-プンスカイ協定の下に達成されて来た。日本の航空当局は自由化が遅かった。然し、2010年に、ひとたびそれが始まると動きは早かった:即ち、20152月には東京成田は23ヵ国3地域とオープンスカイ協定を締結して居る。2014年には国際線旅客の79%がオープンスカイ協定の下で飛んで居る。残りの21%はと言うと、そのうち11.5%が中国発着、1.6%がドイツ発着、そして7.7%がその他の(湾岸の様な)市場からである。

東京成田へのオープンスカイ・アクセスを持つ市場:20152月現在。

Source: Tokyo Narita

航空政治学的環境で見た、国際線旅客の構成:2014

Source: Tokyo Narita

 

国内外のLCCはより大きな成長を約束して居る。然し、全てがLCCTの使用を希望して居る訳では無い。全てにぴったりのサイズは無いし、またわずかでも最高にぴったり来るサイズがあると言う事を思い出させてくれる。全体として、成田や日本にはまだ為すべき事があるのは確かだ。日本には、外国のカードを受け付けて呉れるATMはわずかしか無いが、これは、まだ数年先だが、東京オリンピック迄には変わるだろう。企業は、訪日客にWiFiへのアクセスをより容易にしようとして居る。日本にはGSMが無いために、訪日客は地元のSIMカードを簡単に手に入れる事が出来ないのは問題である。

 

まだ幾つも為されねばなら無い事がある中で、日本の、そして東京成田空港の変化は意味深いものである。

 

これは過渡期なのだ、と言う捉え方は持ち続けるべきだ。然し、それが更なる展開には中々進まない事への口実に使われてはならない。より大きなリスクとしては、日本の国際旅客の分岐点である、2013年の1千万人から、2020年迄に2千万人と言う目標は、控え目に過ぎるのでは無いかという事だ。

 

                                                            以上