デルタ航空の「俺の道以外はダメな道」的姿勢が米国と日本の利益を危うくする=羽田便の交渉に於いて

当分析は、CAPAが2016年1月21日に発表した 

 

 

 Delta Air Lines' our-way-or-no-way attitude risks subverting US & Japan interests on Haneda flights

 

 

をJAMRが翻訳したものです。

デルタ航空の「俺の道以外はダメな道」的姿勢が米国と日本の利益を危うくする=羽田便の交渉に於いて

21-Jan-2016

 

デルタ航空はこれまで、他のどのエアラインよりも、航空政治学的ロビー活動を使って、提携相手に接近したり、自分の事業を伸ばすのに成功を収めて来た。デルタは、前身のノースウエストを介して、世界初の独占禁止法適用除外(ATI)の共同事業(JV)をKLMと作り上げた。

 

もっと最近では、デルタは、米墨間にオープンスカイ協定が無いにも関わらず、アエロメヒコとのJVを承認する様、圧力をかけて居る。デルタは中国東方航空の、未だに中国政府の一部では疑念を抱いて居る持分取得に依り、同社と接近しようと試みて居る。また、デルタはロンドン・ヒースロー空港(バージンアトランティック)、欧州大陸(AF-KLM)の両方でそれぞれに強力なエアラインとのJVに参加して居る、北米唯一のエアラインである。その他の資本提携を通じて、デルタはこれら多くの市場(その内の幾つかでは、大規模な腐敗が疑われて居るが)で逼迫する発着枠の取得に有利な立場を獲得する為に、協調的な姿勢を示して居る。

 

これらの例では、デルタはより力強く、より前向きな姿で登場するが、デルタが勝ち目の無い所や、競争相手が、より多くを勝ち取る様な地域では、デルタは攻撃的な姿に豹変する。この例が、東京/羽田空港に於ける、米国エアラインに対する、初めての昼間帯の発着枠配分についての米国ー日本間の最近の交渉で示されて居る。デルタは、バラバラな結果になり兼ねないとして、提示された幾つかの枠を拒否した。デルタは成田の事業をそっくり羽田空港に移したいのだが、それには現時点で15組の発着枠が必要で、数が大きすぎて交渉の争点にさえなり得ない。デルタが合理性を取り戻すか、より冷静にならない限り、どのエアラインの為にもならない事態になり兼ねない。

 

デルタは新たな戦略的アプローチだった、スカイマーク買収に失敗。今や保護主義に逆戻り

 

デルタの余りにも大胆な羽田発着枠の要求は決して新しい話ではない。2013年に東京でイベントを開き、自社の成田のハブを羽田に移す権利を要求した。これは、多くの事が、決して、メディアの報道を勝ち取る行為によってではなく、閉ざされた扉の奥で行われる、保守的な日本においては、喧しい行動だった。この結果、デルタは味方を作らなかっただけでなく、最悪な事に、相手の敵意を強くしてしまった。

 

20156月、デルタは、再び、成田の事業を移転させる権利の要求を繰り返した。このコメントは本筋ではなかったし、多分不必要だったのだろうが、デルタの攻撃的なやり方を反映したものだった。丁度CAPAが書いたように、

 

デルタは、20156月、航空当局への書面に、米国エアライン間の絶え間ない諍いの元になって居る、シアトル=東京・羽田線の輸送権を返上すると書いた事から、再び日本政府の神経を逆撫でした。寧ろ、その大河ドラマに残された栄光を示す代わりに、デルタは、長きに亘り確立され、そして受け入れられて来た東京・羽田での方針を、この機会を捉えて悲憤慷慨して見せたのだ。:

「デルタは日本政府が、同空港を通常のオープンスカイの条件で開放し、デルタが希望する空港に対して東京ハブの運用をする事に同意しない限り、またする様になるまで、羽田空港の運用規則に対する如何なる変更を加える事についても、引き続き強く反対する。それ以前に発効する如何なる追加的な、或いは段階的な取り決めも、成田ハブのエアラインであるデルタにとって、有害で不公正な事態である。従って、デルタは、合衆国政府に対し、米国エアラインとその顧客に対して、公正で、公平なアクセスを実現する、羽田の完全なる開放を積極的に追求する事を要求する。」

事の良し悪しは別にして、これは、日本政府の肯定的な反応を期待出来ない様にする、最高に間違い無い方法だろう。

 

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デルタ航空のスカイマークへの出資提案=あり得べき大韓航空との合弁計画に暗雲を漂わす

17-Jul-2015

 

2015年の夏、デルタは、日本の国内線エアラインで、経営破綻したスカイマークの支援を試みた。デルタは、ANAと競合したが、CAPAはデルタ-スカイマークの取引に肯定的な見通しを献上した。

 

戦略的、資金的な提携が地元エアラインをパートナーにする事で、デルタの太平洋横断路線の魅力を高め、日本に於ける存在感をより相応しいものにする筈だった。しかし、デルタは、スカイマークの本拠地である羽田での乗継需要から、恩恵を受けた筈だが、彼らの羽田発着枠を自社便で使う事は出来ず、また、アジアの別の地点から、デルタ便に送客させる為に、スカイマークの国内線枠を国際線用に変える事も出来ないのだった。それでも、スカイマークをデルタの傘下に収める事は、殆どがANAJALの複占である市場に第3の競争者を祀り上げる事に成った筈だった。そしてデルタは、その潜在能力を、ANAースカイマーク提携に比べて、遥かに大きな度合いで発揮させる事が出来た筈だ。ANAは当然の事ながら、スカイマークに成功して欲しいのだが、自分の商売を横取りしない程度になのだ。

 

日本政府は、過去のデルタとの対決の経緯から、デルタ-スカイマーク提携を怖れて居たが、最後に債権者たちはANAを選んだ。デルタであれば、間違いなく、短期、そして長期に亘って、スカイマークとの提携を拡大する為に、航空政治学的な変革を追求した事だろう。

 

デルタの東京/成田のハブはまだ生きている=大韓航空とのソウル/仁川での取引は未完成

 

理想的には、日本政府はデルタが、希望通りに、大韓航空と組んで、ソウル/仁川にアジアのハブを構築出来て居れば、これ程の心配はしなかっただろう。仁川は、乗継旅客需要が減りつつある今、デルタを乗継需要を押し上げる途と見て、その考えを歓迎して居たのだが、スカイチームの大韓航空と言う提携相手の肝心の支援がない限り、ハブは上手く機能しなかっただろう。

 

大韓航空は、その戦略的恩恵ついて納得しなかった。デルタの高圧的な手法による反応(コードシェアや、FFPの還元レートを削る)は、大韓航空を提携に追い込む事を意図して居たが、容易に築く事も、容易に修復する事も出来ない、「関係」と言うものが極めて重要な意味を持つ世界のこの地域に於いては、逆に、デルタを大韓航空から遠ざけるだけだった。デルタは日本政府とも、大韓航空とも友好関係を築けて居ない。デルタのスカイマークを口説こうとする試みは、大韓航空との提携話の真意に疑問を投げかける一方、デルタが中国東方の部分所有をするのは、大韓航空との提携とは、矛盾するところがある。

 

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10-Feb-2015

 

米国と日本は、20162月に東京/羽田の発着枠で交渉

 

大韓航空との提携が実現せず、デルタ-スカイマーク提携のシナリオが頓挫した今、デルタは、北東アジアのハブ戦略として、成田の事業を羽田に移す要請をする事に戻った。やかましく、直截的だと顰蹙を買っているとは言え、これは理解できる希望である。

 

だが、デルタは、羽田発着枠の空きを全て、ひっくり返そうとして居る。この「俺の道以外はダメな道」「ゼロか全てか」と言うアプローチでは、羽田での大規模な存在感と言う、デルタが欲しいものを手に入れるまでは、どのエアラインも何も得られない事になる。

 

「これらの個別の発着枠の問題は、日本が真のオープンスカイ政策で羽田を開放すれば、存在しないものだ。米国と日本は、日本政府が、羽田空港への開かれたアクセスに同意する気になったら初めて交渉を始めるべきなのだ。」と、デルタのスポークスマンが、201511月、ダラスニュースに語って居る。

 

201512月の羽田の昼間帯発着枠に関する米日交渉は、後日また話し合うという事に合意したけれど、確たる結論が出ないまま終わって居る。次の高級レベルの交渉は、201629日と言う日程が決まって居て、デルタは、自分達が介入しなければ、これで取引は決着すると予想して居る。

 

20161月、デルタの特別顧問、ベン・ハーストが、ミネアポリス・セントポール・ビジネスジャーナルに語って居るが、デルタは「全てか、ゼロか」と言う議論を続ける方針だ。その記事は、直接ハースト氏の言葉の引用は避けつつ、次の様に言って居る。「デルタは、日本政府が、2つの空港を、現状維持のまま運用するか、羽田の東京国際空港を、誰にも完全に開放するかのどちらかにする事を求める。ハーストは、羽田はハブ空港として、デルタを充分に受け容れられると語った。」

 

デルタの論旨は目新しいものでは無いが、ハースト氏はデトロイトニュースに、米国政府が日本の提案を支持する事は予想して居なかった。「実際に、こんな事が起こって居ると、全てが判ったのは、クリスマス直前の事だった。我々は未だ、回答を準備して居る最中だ。これは、米国側の、政府のこれ迄の方針を覆すものだ。」と述べて居る。

 

デルタに利する時は、自由化を擁護する。発着枠は往々にして隠れた問題である。

 

デルタの羽田に就いての議論は、日本に限って考えれば、エアライン自身の反競争、反自由化に対する懸念を想起させるものだが、デルタの世界的な展開を見ると、羽田に対する見方は全くの自家撞着である。

 

発着枠に関しては、幾つか偽善的行為がある。デルタは、「我々は米国政府に、米国エアラインとその顧客に対して、公平で平等なアクセスを認める様、積極的に羽田の完全開放を追求する事を要請する。」と書いて居る。2015年、デルタとユナイテッドの両社は、上海/浦東線を増便しようとした。デルタは、混雑空港である上海/浦東空港の発着枠を、上手く手に入れたが、ユナイテッドは駄目だった。デルタのスカイチームの盟友である、中国東方航空が、上海を本拠地とし、政府に対し、そして発着枠の配分について強い影響力を持って居るのだ。一方、ユナイテッドはスターアライアンスのメンバーであり、競合する地域である上海では、歓迎されない存在なのである。デルタは多分、ユナイテッドが上海/浦東で、デルタが羽田で求めて居る様な「公平平等なアクセス権」を与えられなかった事を密かに喜んで居るだろう。

 

デルタの中国東方との次のステップは、彼らの商売を改善し、同時に、競合他社にとっては、難しい状況になる様な、両社のJVが組める様に米中間のオープンスカイを推し進める事になるだろう。

 

中国国際とユナイテッドは難しい関係にあるが、理論的には、提携関係を更に深める事に集中するだろう。アメリカンは、中国本土の提携が、目に見えて成長して居ない、海南航空との限定的な取引であるためにより大きな困難を味合うだろう。ワンワールドには、中国本土のメンバーが居ないが、その理由は、一部、国営エアライン各社が(デルタやユナイテッドの様な盟友に焚きつけられて)中国政府に圧力をかけ、ワンワールドに困難なサインを出させて居る為だと言うのは疑いの無い所だ。これもデルタが、擁護して居る、公平で平等なアクセスとは違う。

 

中国に於ける、発着枠の配分は、2016年に競争的発着枠配分を試みて居る通り、中国政府自身が変える事を模索して居る様な、およそ透明性とはかけ離れた手続きと考えられて居る。アエロメヒコの本拠地メキシコシティーも、これと同様である。デルタは、米国政府にアエロメヒコとの、独占禁止法適用除外の共同事業を申請して居る。ジェットブルーはアエロメヒコとデルタが、事実上、より小さなエアラインが成長することを阻もうとする、そして、この大手2社が発着枠のかなりの部分を独占して居る、陰湿な発着枠管理体制の温床であるメキシコシティー空港に於ける、発着枠の配分の実態を詳びらかにする事を求めた。自社の欲しかった発着枠(量の問題、そして時間帯の配分で)を獲得できなかったジェットブルーは、外交辞令的にメキシコシティーの「複雑な発着枠取得の手続き」と称して居る。

アエロメヒコとデルタは、「MEXでの例は、監督官庁が独占禁止法適用除外を与えて居る、大規模なそして発着枠を管理して居る、他の多くの国際空港と何も変わらない。」と反撃した。

 

メキシコシティーは確かに発着枠に制限のある空港かも知れないが、多くのエアラインがこの空港の発着枠管理体制は不透明である事を証言出来る。ジェットブルーはアエロメヒコとデルタの持って居るメキシコシティーの発着枠を合わせた占有率は、デルタとノースウエスト(そしてその他のエアライン)が、過去数十年もの間、独占禁止法適用除外(ATI)を否定する議論に使って来た、ロンドン・ヒースローに於いてワンワールドがグループで持つ占有率と等しくなると指摘して居る。

また、デルタは、結果としてロンドン・ヒースローの豊かな市場と欧州大陸の大きなグループ(AF−KLM、やはり強力なパリ市場)の双方に共同事業を持つ唯一のエアラインとなる事になった、バージン・アトランティックの株式買収、そして独占禁止法適用除外の共同事業を築くことによって、自由化政策から恩恵を被って居るのだ。

 

デルタの示す現行オープンスカイ政策の恩恵、中国とのオープンスカイの追求、そして日本に真のオープンスカイを要求して居る事は、同じデルタ自身がUAEとカタールに対して示して居る、保護主義者の道化じみた振る舞いと大きな対照を見せて居る。

 

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26-Dec-2015

 

日本は、米国エアラインに羽田の昼間帯の発着枠を提示

 

2013年に、日本政府は、日本のエアラインの米国路線用に残した4枠を含む、新たな昼間帯の国際線発着枠を配分した。両国が取引の合意に至らなかったので、米国用発着枠は配分されなかった。

同様に中国本土用の羽田発着枠は、両国の関係が雪解けを迎え、日中が交渉出来る様になった2015年まで使用されなかった。日本政府がその他の各国に配分したのに引き続いて、日本のエアラインの米国路線用の4枠が、米国エアラインの羽田4枠とマッチする筈だったのだ。

 

<関連記事参照>

日本政府、羽田空港の国際線発着枠を配分=しかし依然として主たるハブ空港は成田 9-Oct-2013

 

最新の情報では、この数字は、各国5枠に増えて居る。もう1枠がどこから出て来たのか定かでないが(羽田は理論上は許容量の限界に達して居る)、過去にも突然生まれて来た事がある。カンタスはそれまでは深夜の枠しか配分されて居なかったにも関わらず、2015年、昼間帯の羽田枠を使う事が出来たのがその例だ。羽田で拡大する事によってデルタが直面する、潜在的なリスクは別として、実際に、昼間帯の枠であれば、どんな物でも恩恵をもたらす。アメリカンも、ハワイアンも、ユナイテッドも羽田発着枠をもっと欲しい事は疑いようが無い。しかし、彼らは余りにも大きな要求をする事は、なんの役にも立たない事を理解して居る。

 

昼間帯の枠は夜間帯(22:0006:00)の枠より価値のある理由は以下の3つである。

 

まず、第1に、羽田発着をより便利な時刻に出来る、これはまた、公共交通機関の運行時間が限られる事と日本のタクシーが高い事から、羽田空港発着の地上交通にも影響を与える。第2に、往復の乗り継ぎが可能になる。第3に昼間帯枠で、西海岸以外の米国内地点への便が羽田から便利になる。即ち、夜間帯の厳しい発着枠、時間帯と飛行時間の問題とが一緒になって、失敗したアメリカンの羽田=ニューヨーク/JFK線の様に、これまで、米国内地点には、良いスケジュールで運航できなかったのだ。

 

デルタの非現実的な要求:羽田発着枠をJALと同じだけよこせ

 

ある報道によると、デルタは、同社のハブを成田から羽田に移転する為に、東京/羽田の発着枠を13枠要求すると言う。2016年の平均で、デルタは成田で毎日14枠を使用して居る。過去10年間では、デルタは、2009年の成田で毎日22枠がピークである。デルタは現在の成田の事業を羽田に移すために、2016年の平均(14枠)を基本にして、実質上、次に大きな4社を併せた数の枠を要求して居るのだ。

そして更に、非現実的なのは、デルタの要求は地元のエアラインであるJALの国際線の発着枠の70%を意味し、ANAの半数になるのだ。

 

 

エアライン別 東京/羽田国際線発着枠ペア(全時間帯)とデルタが成田事業を羽田に移した場合の規模の理論値(赤)  (表1

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

上表は全国際線の発着枠で、ANAJALには重要性の劣る、深夜時間帯の枠も含まれる。

デルタは、全て昼間帯で要求すると推測されるので、羽田での昼間帯14枠でデルタが要求して居るのは、JAL(15)の昼間帯枠とほぼ同じ数になり、ANA(21)からもそれほど離れていない事になる。

昼間帯の発着枠に絞って見ると、バランスがデルタに有利な方向へと歪んで行き、デルタの要求が如何に非現実的で、的外れかを示して居る。米国政府は、この要求かそれに近い事を日本政府に提示するのは難しい事になるだろう。米国政府にとっては、日本政府に対して、しつこくて扱いにくい外国エアラインに、誉れ高き羽田空港で、日本のフラッグキャリアーと同じ規模の地位につけさせろと頼む事は、馬鹿らしい真似ごとだろう。

 

 

東京/羽田の昼間帯(06002200)国際線発着枠数比較、ANAJALの運用数対デルタが成田から羽田にハブを移した想定の理論値:2016111日〜17日 (表2

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

デルタの懸念は、米国=羽田間市場の拡大が、ANA/ユナイテッド、JAL/アメリカンの提携(ともにATIの共同事業)に有利に働き、羽田便を増やす事で、より多くの米国=東京間の地点間需要を獲得するのを可能にすることである。デルタの成田路線網は魅力を失い、米国=成田便をやめざるを得なくなる。この便が減ると、デルタの成田以遠便の旅客が減る事になる(デルタに依れば、同社の米国=東京/成田間旅客の64%が成田以遠に乗り継いで居る)。

 

これは、成田以遠便の休止の事態となりかねず、米国=成田間の需要に打撃を与えかねない。デルタから見れば、これを食い止める唯一の方法は同社の事業を成田から羽田に移すのを認める事だ。こうすれば、デルタは、一つの空港で事業を継続でき、競争相手より不釣り合いに多くの発着枠を獲得し、一方、米国=東京間の交通量は現状を維持出来る。

 

デルタは、羽田の昼間帯の発着枠は、10枠(日本側に5枠、米国側に5枠)のうち、ANA/ユナイテッドとJAL/アメリカン提携が6から8枠を与えられるだろうと計算して居る。ハワイアン航空にどれだけ行くかによるが、デルタは1から2枠を確保するだろう。デルタの2枠は、同社の予測して居る、ANA/ユナイテッド、JAL/アメリカンの組み合わせの各社が受け取る2枠と何ら変わりが無い。然し、デルタの競合相手は、デルタには無い提携社を持って居て、彼らの羽田発着枠を併せると大きくなる。デルタは、米国本土=東京間の輸送旅客数の占有率は、競合相手が足の便の良い羽田に、より多くのアクセスを持つのに対し、デルタは概ね成田便である為に、22%から8%に落ちると予測して居る。

 

2016年、デルタは東京/成田で1日平均、14の発着枠ペアを使う。これは2009年のピーク時に、デルタとノースウエスト双方の運航便を併せた22から減少した数字だ。成田と米国間の便数は2010年の約11便から、2016年には8便に減って居る。成田=アジア間の便数は2009年の11便から2016年の6便(2015年には5便だったが、毎日直航便の代わりに導入した、成田=香港間の季節便が増えた)に減った。デルタが、特に新しいシアトルのハブから、アジア域内の都市に直航便を開設した為に、アジア以遠便は存在意義を失って居る。

 

 

デルタ(含ノースウエスト)の米国=東京/成田便及び、東京/成田=アジア便の平均日間発着枠ペアの使用数:2006年〜2016年 (表3

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

ANA/ユナイテッドとJAL/アメリカンは羽田の拡大で悪影響を受けて居ない

 

デルタの競合相手はマイナスの影響を受けて居ない。まず、アメリカンとユナイテッドはアジア域内の路線網を運航して居る日本の提携社に頼って居る。デルタは他のアジアの地点にコードシェアをする日本の提携社が居ない。ユナイテッドの東京/成田からのアジア域内、第5の自由運航はデルタよりずっと少なかったが、現在、デルタの毎日6便に比べ、2便(ソウルとシンガポール)へと減って居る。

 

 

デルタとユナイテッドの東京/成田=アジア便の日間平均発着枠ペア使用数:20062016年(表4

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

ユナイテッドはANAに頼る事で、アジア域内の便を減らす事が出来る。同様にアメリカンは東京以遠便を持った事が無い(米国エアラインは2社しか認められなかった)。アメリカンは提携社であるJALに東京以遠のアクセスを依存して居るのだ。

 

ANAJALの国際線北東/東南アジアの目的地への便は、概ね成田、羽田の両空港から出て居る。ANAのアジア内21地点のうち、9便は東京の両空港から出て居り、2便は羽田からのみ(ソウルなど。従って、ユナイテッドは東京/成田=ソウルの乗り継ぎ便が必要になる)、10便は東京/成田からだけ出て居る。JALのアジア内地点15のうち、8地点は両空港から、1地点は羽田からのみ、6地点は成田だけから飛んで居る。 

 

ANAJALの東京/羽田、東京/成田発別、アジア内地点:2016111日〜17

City

ANA

JAL

Bangkok

Both

Both

Beijing

Both

Both

Busan

-

NRT

Chengdu

NRT

-

Dalian

NRT

NRT

Guangzhou

Both

HND

Hangzhou

NRT

-

Hanoi

HND

NRT

Ho Chi Minh

NRT

Both

Hong Kong

Both

Both

Jakarta

Both

NRT

Kaohsiung

NRT

-

Kuala Lumpur

NRT

NRT

Manila

Both

NRT

Qingdao

NRT

-

Seoul

HND

Both

Shanghai

Both

Both

Shenyang

NRT

-

Singapore

Both

Both

Taipei

Both

Both

Xiamen

NRT

-

Yangon

NRT

-

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

エアライン各社は、新たな路線を開設するよりは、寧ろ昼間帯の発着枠を使って、現行の成田便を羽田に移す事を考えて居るかも知れない。その便とは、論理的には東京から最も地点間需要の高い、ロサンゼルス、ニューヨークなどだ。羽田乗り継ぎは、シンガポールの様な最高人気の乗り継ぎ市場には有効だと思われる。ANAJALも羽田発着枠は、最高の地点間需要のあるアジア路線に使う。即ち、より乗り継ぎ需要に人気のある路線では羽田が都心に近く便利な事と、逼迫して居る発着枠を無駄使いする事になるからだ。

 

米国=東京間で、乗り継ぎに、より依存して居る路線と、成田からのみ繋がっている需要の弱い地点への乗り継ぎ便は、成田に残る事になるだろう。ANAJALもデルタと同様の状況に直面して居る様に見えるかも知れない。即ち、米国からの旅客数の減少は成田以遠便を危機に陥れると言うものだ。

 

然し、ANAJAL両社とも東京/成田=米国路線を拡大して居る。ANAは成田からの米国便は史上最高の規模であり、JALは経営破綻前の水準に近づきつつある。両社は自社の業績が伸びるに連れ、成田=米国も拡大を続け、彼らの主たる商機である、北米=アジア間の乗り継ぎ需要をもっと運ぶ事を目指して居る。

 

然し、米国のエアラインは、日本を末端市場(それも衰え行くものだ)と捉える様になって居る。東京での乗り継ぎ需要は、増えて行く米国=アジア直航便に取って代わられる。即ち、デルタのシアトルハブや、増えて行くアメリカンの中国路線便、ユナイテッドの中国の副次的都市への路線網(そして多分、将来的にはシンガポール直航便)などである。

 

 

ANAJALの東京/羽田と東京/成田発、米国便の平均日間便数:2006年〜2016年(表5

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

デルタの東京路線は羽田交渉の質草になる

 

羽田での発着枠が拡大される取引は、米国=日本間の市場と、他の全てのエアラインにとって、より便利なアクセスが実現する可能性のある多くの路線を含め、恩恵をもたらす可能性がある。いくつかのエアラインは、成田から便を移すより、寧ろ、全く新たな羽田便を開設する方を選ぶかも知れないが、これはどちらかと言うと少数派になりそうだ。

デルタは、自分の欲しい発着枠が得られない限り(そして得られないのだが)、あなたの町の空港を発着する東京便を止めなくてはならないと警告して、空港や地域住民に電気ショックを与え、支援を取り付けようとして居るのだ。

デルタはまず、ミネアポリスに同社の便が無くなるかも知れないと知らせ、続いて同じ事をデトロイトに言って居る。デトロイト=東京/成田便は、747-400で運航して居るにも関わらず、成田発着の旅客が59人しか居ないと訴える。またデルタは、ミネアポリスと東京/成田間の毎日250人の旅客のうち、ミネアポリス発の旅客は24人だと言う。(皮肉にも、これらの発言は、散々風刺して居るエミレーツのミラノ=ニューヨークの11便に比較して、自社の東京便の拡大第5の自由運航については何も言わないで置いて、地点間旅客数は少ないと言うデルタの湾岸エアラインに対する、苦情によく似て聞こえる。)

 

デルタは、日本への供給を削って来たが、これからもそれを続けると言う

 

もし、これらの便がキャンセルされるとすると、多くの旅客は、他のハブ経由に回される。然し、デルタは、この路線はまだ俎上に載っていないのかと尋ねられるだろう。デルタは、日本への供給を削って来たが、これからもそれを続けると言う。

 

デルタの数字がほのめかしている様に、現在、ミネアポリスには、他のデルタの東京便を持つ都市の様な(例えば、ロサンゼルスやニューヨークの様な)強力な発着需要は無い。また国内線の供給席数では、同社の全路線の中で最大のアトランタの様な、強力な乗り継ぎハブでも無い。デトロイトはミネアポリスに比べれば、地元市場の力が強い。ミネアポリスは、デルタの第3の規模のハブではあるが、デトロイトとシアトルと重複して居るのだ。

 

 

デルタ航空の国内線供給席数別ハブ/基地/事業所/中心都市の10傑:2016111日〜17日 (表6

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG

 

羽田論戦が明らかにする、デルタのアジアでの提携社に関する弱点、一方でシアトルは依然上昇中

 

アメリカンとユナイテッドは、デルタの巻き起こす混乱を修復せねばならないのだが、デルタは、また誤った情報によるキャンペーンをまさに開始したばかりの様だ。ハースト氏は、米国政府が、日本側がデルタのアジア事業を痛めつけるのを助けようとして居る様だと主張して、共謀の筋書きを立てて居る。ハースト氏は言う、「我々は孤立無援である。真実は、向こう側は何年もの間、デルタの路線網を縮小させようと努力して来たのだ。今や彼らは、米国政府の協力を得て、我々の息の根を止める道を見出だそうとして居る。」

 

たとえ、デルタがなんらかの救済、妥協か何かその種のもの、を見出すとしても、横たわる問題は何の変化もなく残って居る。即ち、同社はアジアの中で提携相手も無く、孤立して居るし、アメリカン航空がロサンゼルスからアジアへの展開を強化して居る時に、デルタのシアトルのアジアハブには疑問が残る。また、中国東方航空との提携が効果を上げるにはまだ時間がかかるし、それも限定的だ。

 

<関連記事参照>

     デルタ航空のパラドックス:明白な基本理念=対するは、混乱を呼ぶ反グローバリズム 7-Dec-2015

     アメリカン航空のロサンゼルスにある太平洋横断ハブ、デルタのシアトルハブを追い抜く 24-Nov-2015

 

同時に、デルタが申し立てる様に、湾岸のエアラインの乗り継ぎハブと彼らの(はるかに限られた)第5の自由便については、同社は自分の東京/成田のハブと第5の自由便に絶望的にしがみつくしか無い様だ。表面上は、デルタの苦情は補助金の問題についてだが、これには議論の余地がある事が証明されて居る。デルタの新たな提携相手である中国東方が受け取って居る補助金については、そうでも無い様だが。

 

デルタの東京ハブは全盛期を過ぎた模様だ

 

湾岸のエアラインのハブは、現代の産物で、台頭する経済圏を結び付けるが、一方、デルタの東京ハブは全盛期を過ぎ、今や、人口が減少して行く国に基地を置いている。一方でエミレーツの第5の自由便ミラノ=ニューヨーク線は、イタリア政府に望まれ、歓迎されて居るにも関わらず、米国エアラインの第5の自由便の路線網には議論の余地があり、特にデルタの前身であるノースウェストは地元の需要対乗り継ぎ需要の規則を悪用したと非難されて居る。

 

然し、心配ご無用。これまでも、いつも「デルタのルール」という問題があった。デルタは日本に於ける最大の米国エアライン(確かに、非アジアの)であるが、その歴史はとても輝かしいものとは言え無い。

 

最近では、デルタは成田のハブを羽田に移す事を可能にすべきだと主張して来たが、羽田の夜間帯の発着枠を浪費する事を試みたし、米国=日本間のオープンスカイを本筋から逸脱させようとする試みもして来た。もしデルタの「この世の終わり」のシナリオが、同社が約束した様に幾らかでも実現するとしたら、日本政府は大きな安堵のため息をつく事だろう。

これは、それまでしばしば、怖ろしくひどい搭乗体験だと考えられて居た品質を改善し、運航の、そして財政の指標からも、米国の業界をリードして世界的にこの業界で最高のレベルまで実績を達成したエアラインにとっては、恥ずべき事だ。

 

羽田はデルタにとって、負けるべき戦場なのだ、米国政府と我が意を貫徹できる場ではないのだ。発着枠交渉が決着した後、デルタは間違いなく、多くを獲得する戦いを起こすだろうし、多分事態を遅らせる戦術に出るかも知れない。今はデルタに取って、日本への依存を終わらせ、その代わりにアジアの他の計画に動き出す時なのだ。今回は、感じ良く振る舞い、他の人々と上手くやる事で何ら困る事は無いだろう。デルタはこれまで、不必要なダメージを自ら招いて来たが、然しそれはまだ修復可能なのである。

 

以上

 

Delta Air Lines' our-way-or-no-way attitude risks subverting US & Japan interests on Haneda flights

 

 

■4月5日 NEW!

 

日本や世界の航空事業について諸々のデータから読み解く「マラソン講座」

の掲載を開始致します。

どうぞご期待ください。 

 

TD(旅行流通)勉強会

旅行流通に関する世界のニュース

 

■4月16日  NEW!

 

 

「オフラインの世界に戻る Part 4(最終回)ハイテック対ハイタッチ ホテル」が、H.I.S.の「変なホテル」とForbes 5つ「Boston Harbor Hotel」の極端な2つのケースを比較していて面白い。宿泊業界は、ハイテックで割安なホテルと、高価であるがそれに見合う人的サービスを提供するホテルの2つのセグメントに別れるのだろう。航空業界におけるLCCFSAの違いと似通った話なのかもしれない。それにしても、Boston Harborの徹底したCRMは物凄い。

 

しかし宿泊施設では、これにホームシェアー(private lodgingとかalternative lodging facilityとも呼ばれている)の新経済が加わる。

 

 

Google 民泊拡大」は、GoogleHotel Searchにバケーションレンタル施設を加えたと報じている。

 

Expedia Groupなどの提携サイトの掲載施設をリストすると言う。これはバケーションレンタルのメタサーチ?Googleの旅行市場への参入はとどまるところを知らない。そのGoogleが、先々週、欧州委員会から独禁違反で14.9億ユーロの制裁金支払いを命じられた。これでGoogleの独禁違反は3回目となる。中核事業(特に個人情報集約)の先行きを案じて旅行業を含む事業の多角化を目指していると勘ぐる。

 

 

「エアビー5億人利用」によれば、民泊本家のAirbnbが累計で5億人の利用者獲得を達成し、600万軒の代替宿泊施設をリストしている。Booking.com570万軒を上回ったと言っているが、即予約(インスタント・ブッキング)できる施設数ではBooking.comが追い抜いていると理解している。Airbnbは、OTAHotelTonightを買収したと思ったら、今度はインドのOYO$150M~$200Mを投資したらしい。年内上場を睨んで、Airbnbの事業拡大戦略が継続している。

            (編集人)