フィリピン–中国間航空便拡大、フィリピンの中国人観光を押し上げ=ドゥテルテが馬を乗り換える中で

当分析はCAPAが2016年10月21日に発表した 

   

Philippines-China air service growth to lift Philippines' Chinese tourism as Duterte changes horses

 

をJAMRが全文翻訳したものです。

 

                                                       2016年11月8日

 

フィリピン中国間航空便拡大、フィリピンの中国人観光を押し上げ=ドゥテルテが馬を乗り換える中で

21-Oct-2016

まずはバナナ、次いで人間。中国のフィリピンからのバナナ輸入禁止令の解除は、航空界への予兆である。
中国とフィリピン間の関係は、2012年に悪化に転じた。問題は、主として中国が無人島の領有権を主張した事で、中国と日本の関係を悪化させた議論と同じだった。中国は、フィリピン産バナナの輸入を禁止し、フィリピンに対して、渡航規制を敷いた。中国からの渡航規制は、国の所有する、或は関係する旅行会社が、対象市場への旅行の販売を基本的に止めてしまうため、他のどこの市場からのものよりも重いのだ。外交上のいざこざが、中国からのアウトバウンド旅行者の流れを、根底から減らしてしまったのだ。

 

日本は、回復以上に好転したが、フィリピンの中国への露出の少なさは明らかであり、フィリピンはアジアのどの国より中国人旅行客の受け入れ数が少ない。ラオスとカンボジアは、フィリピンより遥かに小さいが、それぞれフィリピンよりも多くの中国人旅行客を迎えて居る。

 

フィリピンの新大統領、ロドリゴ・ドゥテルテは、マニラ政府の忠誠を米国から中国に替えようとして居る。彼は大統領に就任して間が無く、その胸算用に懐疑的な向きも居るが、中国は、態度を軟化させて居る様だ。バナナの禁輸解除に続いて、中国は、ドゥテルテ大統領の中国訪問を機にフィリピンへの渡航規制を解除する模様だ。これが、中国とフィリピン間の航空便の大成長を刺激する事になりそうだ。然し、現在の市場にとっては、フィリピンが、新たな競争を引き起こす事に懸念もある。

 

現在、フィリピンは中国人観光客にとってアジアで最小の市場

 

2015年、北東及び東南アジアの主要12市場の中で、フィリピンが迎えた中国本土からの旅行客数は最低だった

 

2015年、北東及び東南アジアの主要12市場の中でフィリピンが迎えた中国本土からの旅行客数は最低の491,000人だった。フィリピンより遥かに小さな国であるにも関わらず、ラオスとカンボジアは、それぞれ511,000人、695,000人を迎えて居る。

 

ずっと小さな東南アジアの市場であるミャンマーでも、2015年には、148,000人の中国人旅行客が訪れて居る。

 

2013年から2015年の間にこれらアジアの中核となる市場では、中国人訪問客数の合計が46%の伸びを記録して居る。(注:マレーシアの数字には香港を含む、香港の数字は空路による旅客のみ。) 2013年に比べ2015年に訪問客数が減ったのは3ヶ国:マレーシア(6%減)、シンガポール(7%減)、そしてベトナム(7%減)。

 

ベトナムとの政治的な緊張は続いて居り、また、クアラルンプールから北京行きのMH370が行方不明となった件で、マレーシアへの憤りがまだ尾を引いて居る。シンガポールは、シンガポール、マレーシアそしてタイを結ぶ三角旅行ルート「シン・マー・タイ」を形成しているが、他に比べて値段が高いために、しばしば最も不人気とされて居る。然し、この状況も変化しつつあり、2016年上半期には、シンガポールは54%、マレーシアは32%と、中国人訪問客が伸びて居る(マレーシアの数字にはここでも香港が含まれて居るために歪んでいるが)

 

 

アジアの大市場への中国人訪問客数:2013年〜2015(1)

出典:CAPA及び各国政府観光局

注:香港は空路入国者のみ。マレーシアは香港発旅客数を含む。

 

フィリピンは、2016年上期最速の成長を示す市場

 

2013年から2015年の間にフィリピンへの中国人訪問客は15%の伸びを見せた。足許が低い値からなので、より高い成長率が期待出来たかも知れないが、政治的な緊張が需要を減退させ、フィリピンへ拡大しようとする国有エアライン、或は中国での発着枠を求めるフィリピンのエアラインの判断要素になったかも知れない。

 

ドゥテルテ大統領は20165月の選挙に勝って、2016630日に就任した。これらの出来事が2016年上期の終わりに起こったにも関わらず、フィリピンへの中国人旅行客は、この期間、79%増加して居る。

 

この事が、フィリピンを中国人旅行客数がアジア最速の伸びを示す市場にしたのだ。シンガポールはぐっと下がった54%で第2位だった。然し、足許となるフィリピンへの中国人旅行客数がとても小さいため、79%の伸びは、増加数では僅か151,000人にしかならない。この純増加数は、最少の部類である:台湾は63,000人増、カンボジアは41,000人増。香港は83,000人の減だった。 

 

 

アジアの大市場への中国人訪問客数:2015年上期–2016年上期 (2)

出典:CAPA及び各国政府観光局

注:香港は空路入国者のみ。マレーシアは香港発旅客数を含む。

 

フィリピン航空が市場で最大のエアライン、厦門航空が急速に成長

2013年に比べて、2016年のフィリピン航空は14%拡大

 

フィリピン航空は、昨年1年間を通じ、フィリピンの市場で供給を追加し、2014年に中止した拡大を再開して居る;2016年、同社は2013年に比べて14%近く大きくなって居る。この拡大により、フィリピン航空は、至近の競争相手達との格差を広げた。同社は今や、セブパシフィック、中国南方、そして厦門航空と言う、其々201610月には週間約3,000席を供給する、最大の競争相手3社の規模のほぼ2倍と成って居る。

 

厦門航空は、規模の差はもっと大きかったにも拘らず、2016年になって拡大し、市場のリーダーとして中国南方とセブパシフィックの仲間入りをする事になった。

中国国際航空は2015年半ばに拡大したが、その他の国有エアラインは2016年、余り伸びなかった。全体として市場が小さい事が意味するのは、厦門航空の様に、市場占有率は将来、急激に変わる可能性があると言う事だ。 

 

 

中国発フィリピン行き(週間席数、片道ベース):20131014日~2017313(3)

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG.

 

フィリピン航空、厦門航空の成長、及び中国国際の年間を通じた拡大が現実のものとなり、フィリピン-中国間市場が、2016年に前年対比29%の成長となったのだ。

 

これは、2年連続の減少の後にやって来たが、2016年の市場規模は未だに2013年のピーク時に対し18%大きくなったに過ぎない。より長い時間で見ると、2016年は2010年の市場規模の2倍である。2017年上期には、現在のところ2016年上期に比べて約4%拡大する計画となって居る。

 

 

中国=フィリピン間年間供給席数:2010年〜2017年上期 (4)

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG.

 

ボラカイへの玄関口、カティクラン空港の拡張工事完成とともに中国人旅行客の奔流がやって来る

 

OAGのデータに拠れば、20161017日の週、フィリピンと中国の間の路線は、わずか9路線しかない。マニラが供給席数の95%を、9路線のうちのトップ5路線を含む6路線を占めて居る。

 

セブ行が2路線あり(成都と厦門から)、カリボへ1路線(北京から)がある。広州が供給の27%を占め、最大の出発地であり、ついで上海浦東(24%)、北京(18%)、厦門(16%)、泉州(10%)そして成都(5%)が続いて居る。

 

 

中国=フィリピン間路線の供給席数順位:2016101723日 

 

Rank

Origin

出発地

Destination

目的地

Total seats

Y-o-Y (%)対前年

1

CAN

Guangzhou Baiyun Airport

MNL

Manila Ninoy Aquino International Airport

4,940

39.1%

2

PVG

Shanghai Pudong Airport

MNL

Manila Ninoy Aquino International Airport

4,425

33.6%

3

PEK

Beijing Capital International Airport

MNL

Manila Ninoy Aquino International Airport

3,126

24.6%

4

XMN

Xiamen Gaoqi International Airport

MNL

Manila Ninoy Aquino International Airport

2,776

5.2%

5

JJN

Quanzhou Jinjiang Airport

MNL

Manila Ninoy Aquino International Airport

1,821

60.6%

6

CTU

Chengdu Airport

CEB

Mactan-Cebu International Airport

488

N/A

7

CTU

Chengdu Airport

MNL

Manila Ninoy Aquino International Airport

366

N/A

8

PEK

Beijing Capital International Airport

KLO

Kalibo Airport

199

N/A

9

XMN

Xiamen Gaoqi International Airport

CEB

Mactan-Cebu International Airport

171

N/A

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG.

 

拡大は問題を孕むものだろう。日本や韓国、タイにおける中国人旅行客ブームとは違って、フィリピンの主要空港であるマニラNAIAは飽和状態にある。然し、不透明な発着枠管理の環境の中で、NAIAでの発着枠が中国エアラインに与えられ、中国での発着枠がフィリピンのエアラインに与えられると言った調整がなされるかも知れない。

 

マニラは観光客を惹きつける所では無いが、ビジネスの需要を呼ぶだろう

 

マニラは観光客を惹きつける所では無いが、ビジネスの需要を呼ぶだろうし、中国のエアラインは特に便数も増大して居る北米路線のために、マニラを第6の自由路線網に結びつけようとするだろう。

 

キャセイが中国本土に持つ存在感と、フィリピンでの第5位のエアライン、外国社としては最大と言う存在感を結合することで、香港経由の間接的な旅客需要も伸びる可能性がある。

中国のフィリピンへの渡航禁止解除は、カティクラン空港の拡張プロジェクトが完了する丁度良いタイミングでやって来る。

 

カティクランから人気のボラカイ島へは、フェリーで10分で行ける。これまでカティクランにはターボプロップ機しか飛べなかった。カリボは昔からボラカイへのもう一つの玄関口だが、ボラカイからは70㎞も離れて居てカティクランに比べ、不便である。中国のエアラインはマニラ=カティクラン間路線への乗り継ぎで、どの様な提携関係が結べるか調査する可能性がある。これは地元エアラインにとっては、供給過剰を緩和する助けになるだろう。

 

<関連記事参照>

     セブ・パシフィック、PAL、エアアジア、ボラカイの拡大を計画=カティクランの新滑走路は供給過剰を招くのか? 2-Jul-2015

     ボラカイの2空港-全く異質だが、観光客の需要を劇的に充たすため拡張へ12-Jun-2016

 

フィリピンには、日本や韓国そしてタイに比べて、観光目的地もアクティビティも少ない。

中国からフィリピンへのアウトバウンド需要の拡大は、域内の各国に匹敵するものにはなりそうにないが、ほぼ便が皆無に近い現状から、かなりの供給量が追加されることになるだろう。中国のエアラインは先駆者優先を尊重しつつ互いに追随する傾向にある。

 

フィリピンのエアラインの比較的低いコスト基盤と国際路線での経験があること(日本のLCCやノックエアと違って)は、また拡大する需要を掴み取れる可能性も意味する筈だ。

 

拡大がどの位の水準になるのかは依然として、両国の政治的関係とフィリピンが中国人訪問客に如何に対応する積りなのかに掛かって居る。中国の視点からは、 気まぐれなドゥテルテ大統領が呈示した、極めて戦略的な新たな取り組みを確固たるものにするためには、中国人のフィリピン観光の急速な押し上げを促進する事は、明らかに大きな意味を持つだろう。

 

                                                               以上

 

Philippines-China air service growth to lift Philippines' Chinese tourism as Duterte changes horses

 

 

海外事情

 

84~16日の主要ニュース19本のうち、いつもはPhocusWire Dailyにはほとんど表れない法人旅行に関する記事が7本(目次の下線箇所)もあった。取扱高ベースで米国市場のおよそ3割が法人旅行市場にあたり、そしてそれに加えておよそ2割程度のunmanaged business 旅行市場が存在すると言われている。つまり米旅行市場のほぼ半分あるいはそれ以上が、法人旅行で構成されていることになる。それだけ大きな市場にもかかわらず、業界ニュースが少ないのに驚かされる。(尤もこれにはPhocuswrightの親会社であるNorthstar Travel Mediaが、法人旅行市場専門誌であるBTN=Business Travel Newsを編集していることも影響している。)

 

7本の記事を読むと、この市場のセルフ予約ツールの使い勝手が極めて劣悪で、法人旅行管理会社(TMC)のサービスに対しても出張者の不満が多く、その上企業の出張規定のかなり厳しい遵守の要求のために、出張者のモラルと生産性の低下が発生している可能性がある、という何やら暗い話が連続する。要するに観光旅行市場の方が法人旅行市場よりも、旅行の計画や手配のプロセスで、テックを含めてずーっと先進洗練先行しているというのだ。

 

しかし、最近になって、この遅れた法人旅行市場に目をつけた新規参入者たちが参入しつつある。そして彼らは、企業のコスト削減最優先に変えて出張者ファースト、出張者セントリックの戦略を敷いている・・・というようなことが、これらの記事に書かれている。観光旅行のベストプラクティスを法人旅行が真似ようとしている。これはFSCLCCを真似て、FSCLCCの境界線がぼやけ始めている話と似ている。出張先で仕事の前後に休暇旅行までしてしまうブレイジャーの拡大も、法人旅行のセルフインベンションの一つのきっかけとなっているのだろうか。

 

11. OTA4つの神話」は、“高い手数料をふんだくっている悪者OTA”の評判(風評?)に対するOTA の恨み節が書いてあって面白い。(編集人)

 

 

海外事情 916日号B 

 

81923日のニュースに加え、法人旅行に関する特集シリーズ3部作の第1部を掲載する。(お盆休みのために、1週間のニュース配信となります。)

 

前々号の楽天キャピタルの都市エクスペリエンスプラットフォームFever(ロンドンとマドリッドベース)出資に引き続き、「3. 楽天、東南アジアのバジェットホテルに投資」した。

 

2. 電子IDと旅行」は、プライバシーの問題について何も触れていない。生体情報は、整形手術をしない限り究極的個人情報なのでプライバシー保護には細心の、最善の、最大限の注意が必要だ。

 

6. 米司法省、セーバーのフェアロジックス買収を否認」は、この買収が実現しない場合は、SabreNDC開発に遅れが生じる可能性がある。これは、FarelogixGDS代替システムの能力に、DOJが“お墨付き”を与えたということか。(編集人)