フォーカスライトJapanでは、PhocusWire Daily (phocuswire.com) 並びにTravel Weekly (travelweekly.com)を含む海外主要旅行業界誌から、面白そうな業界ニュースを選別し日本語に意訳して、トラベルジャーナル(TJ)の隔週コラム「FROM THE WORLD/海外事情」とTD 勉強会(e-rtb.com)に掲載しています。TD(Travel Distribution)勉強会の「海外事情 アーカイブ」では、TJのコラムに掲載したニュース以外の記事を、TJコラム発行日の3日遅れで掲載しています。
■2018年4月2日 お知らせ
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2020年4月16日
海外事情 4月13日号
PhocusWire Dailyのニュースがコロナウイルス関連記事を満載している。多くの記事が、現状と今後の見通しをレポートしている。3月16日の週の週間最多閲覧記事トップ5の全てはコロナ関連ニュースで埋め尽くされてしまった。これらのニュースの多くは、過去の9-11やSARSやリーマンショックの先例を列挙して、企業の予期せぬ緊急事態への対応如何について解説を試みている。速報性に欠けるこの「海外事情」では、日々刻々変化する現状をタイムリーに知らせることが到底できないので、現状と今後の見通しに関するニュースのほぼ全ての意訳掲載を断念した。世界的にパンデミックの状況となり、主要国のかなりが国境閉鎖や渡航制限などの何らかのロックアウトをし始めているのだから、世界GDPの10%を占めるグローバルツーリズム産業は、このままの状況が今後も推移して行くならば、過去に類例を決して見ることができないほどの壊滅的な影響を受けることになるだろう。
米国のホテル宿泊施設協会(AHLA)は、3月初めに米国のホテル57,000軒のうち25,000軒が、ここ数週間のうちに、一時的を含めて閉鎖を余儀なくされるとコメントした。IATAの3月5日に発表した最大1,130億ドル減収見通し(2019年総収入8,090億ドル=約90兆円の14%)の下方修正が既に余儀なくされている。
経営には特効薬など全く存在しないが、コロナウイルスにはまさにそれが必要だ!(編集人)
目次
1. ステイNタッチの中国売却禁止大統領令
2. キャセイパシフィック、個人情報漏洩で50万ポンドの罰金
3. チャンギ空港、デジタルファクトリー作成
4. 支払い手段が重要
5. コロナウイルス
6. トリアド、負債返済に3.25億ドル資金調達
7. トリップ・コムのコロナ対策
8. エアビー、コロナで政府にホストの救済要請
1. ステイNタッチの中国売却禁止大統領令
トランプ大統領が、StayNTouch(クラウドベース ホテル管理ソリューション)の中国Shiji Information Technologyへの売却を禁止する、前例に見ない大統領令に署名した。StayNTouch売却は2018年9月に発表されていた。大統領令は、売却禁止の理由を国家安全保障上の理由と説明している。
Shiji Group(1988年設立)は、世界の75,000室のホテル管理ソリューションから、飲食および小売システム、ペイメンゲートウェイ、データ管理、オンライン配信など、ホスピタリティ、フードサービス、小売およびエンターテインメント業界向けのソフトウェアソリューションおよびサービスを提供している。日本法人Shiji Japan株式会社を設けている。Shijiは、2016年のStayNTouchのシリーズAの950万ドル資金調達の投資家の1社でもある。大統領令は、120日以内の全ての両社の関係の解消を要求している。 (PWD 3/6 https://bit.ly/2vnzme8)
2. キャセイパシフィック、個人情報漏洩で50万ポンドの罰金
CXは、2018年3月に遡るデータ侵害に対して英国の情報局(ICO)から500,000ポンド(約6,500万円)の罰金を科された。ICOは、2014年10月から2018年5月までの間、同航空会社のコンピューターシステムには顧客データを保護するための“適切なセキュリティ対策”がなかったと述べている。声明によると、これにより約940万人の顧客の個人情報(名前、パスポート、IDの詳細、生年月日、郵便および電子メールアドレスが含まれている)が漏洩した。ICOは、2018年3月になってCXがデータベースを“ブルートフォース攻撃”(パスワードや暗号を破るための総当たり攻撃)に晒した疑わしい活動に気付いたと述べている。この時点で、CXはサイバーセキュリティ会社を呼び込んだ。ICO調査担当部長は「この違反は、ハッカーに簡単にアクセスできるCXのシステム全体の基本的なセキュリティの不備にある。我々が発見した複数の重大な欠陥は、予想される標準を大きく下回っている。航空会社に最も基本的なNational Cyber Security Centreの基本的なCyber Essentialsガイダンスの5つのうち4つを満たすことができていなかった」と述べている。
昨年7月、 ICOは、2018年6月に開始されたと考えられるサイバー攻撃のために、 BAに1億8300万ポンド以上の罰金を科すつもりであると述べた 。
数日後Marriottは、2018年11月に開示された違反に対して99百万ポンドの罰金を科すというICOの意図を知らされた。BAとMarriottは、この決定に異議を唱えると表明している。
CX航空に対するペナルティは、英国のデータ保護法に基づくものであるが、BAおよびMarriottに課される罰金は、2018年5月に導入された一般データ保護規則(GDPR)の違反に対するものである。(PWD 3/9 https://bit.ly/3aSEDJM)
3. チャンギ空港、デジタルファクトリー作成
カスタマーエクスペリエンスで複数の賞を受賞している、世界7番目の混雑空港シンガポールのChangi Airport Group(CAG)は、空港内に「デジタルファクトリー」を作成して継続的なイノベーションを推進している。 空港第2ターミナル内のコラボレーションスペースには、Accentureとの提携により作成された、「デジタル、イノベーション、ベンチャー、アナリティクス」の略であるDIVAチームが、CAGとアクセンチュアの両方のスタッフと共に収容されている。世界のリーダーであり続けるために、DIVAにより、CAGは空港の運用方法を再評価し、デジタルソリューションを開発する。(PWD 3/11 https://bit.ly/3aUdE0k)
4.支払い手段が重要
新しい調査によると、支払い(payments)は現在、予約プロセスから旅行中まで、旅行者の旅に摩擦(friction)を加える分野の1つとして受け入れられている。The Frictionless Travel Payments: From Complexity to Competitive Advantageと題するAmadeusのレポートは、消費者の70%が競合他社よりも優れた支払い体験できる旅行プロバイダーを選択すると述べている。さらに74%が、支払いの質が悪いと休暇の楽しみに影響があると答えている。この調査では、旅行者の74%が出発の2か月未満前に予約しており、ミレニアル世代は55歳以上の旅行者の2倍遅く予約する可能性が高いことが明らかになっている。23%はお金を節約することがその理由であると述べているが、悪い決断をすることへの恐怖も要因である。報告書によると、平均して旅行者の23%が予約を放棄しているが、ミレニアル世代は、購入を完了できない50歳以上の人の2倍になる可能性がある。レポートによると、旅行者が価格の透明性、支払い方法の選択、セキュリティの向上の重視が、スムーズな支払いプロセスのために重要であると解説している。たとえば、ほぼ半数(47%)が予想外の価格や料金が摩擦の主な原因であると答え、54%が旅行を計画する際の最大の懸念として隠された料金(hidden charges)を挙げている。5人に2人以上が、サプライズコストのために購入を放棄すると回答している。調査では、約38%が支払い方法を最優先事項としてランク付けしており、自分自身が希望する優先支払い方法では支払いができない際には、四分の1が購入を放棄している。この調査は、AmadeusがSapioに委嘱し5,600人以上をアンケートした。(PWD 3/11 https://bit.ly/33n0uGP)
(このニュースは、3月9日の週の第4位最多閲覧ニュース)
5. コロナウイルス
PhocusWire Daily の3月9日の週の週間ニュースのトップ5の最多閲覧記事にはコロナウイルス関連記事(うち一つはポッドキャスト)が3つもあった。これらの記事は、急速に世界的蔓延するこの病気の旅行へのインパクトについて、業界識者や企業の予測や懸念や恐怖などを悲観論や楽観論を交えて伝えている。しかし、この号では、これらの情報を取り扱わないこととした。これらが伝えている状況や予測が、極めて早いスピードで日々刻々変化しているからだ。需要や売り上げ見通しの数値の話は別にすれば、これらのコロナ関連記事が伝えている主なポイントは以下の諸点に要約されるだろう。
顧客には、この非常時に有効かつ正確な情報伝達と、そしてそのアップツーデートを頻繁に実施する。
サイトのFAQ欄の活用と、そのアップツーデートを頻繁に実施する。
日頃の販売促進に使っていたリソースを、自社のサイトの再構築や基盤の整備に振り向けて、来るべき需要回復期に備える。
近場のマイカーで行ける目的地の商品販売(ステーケーション プロダクト)へ注力する。
長期的視野に基づく投資は継続する。
ロイヤルティープログラムで、この時期の旅行に対してダブルマイルの提供などのインセンティブを付加する。
(PWD 3/6 https://bit.ly/2IPLwQk, 3/9 https://bit.ly/39UcUZg)
6. トリアド、負債返済に3.25億ドル資金調達
Liberty Tripadvisor HoldingsはCertares Managementから3億2,500万ドルの投資を獲得した。この取引は10営業日以内に完了する予定。取引の一環として、Certaresは8%のシリーズA累積償還可能優先株式を受け取る。Form 8-Kファイリングによれば、株式の購入価格は1株あたり1,000ドル。
TripAdvisorの支配株主であるコロラド州Englewoodに本拠を置く同社は、投資からの純収入を3,400万ドルの担保付き借入金と組み合わせて、既存のマージンローンの全残高を返済する。
Liberty Tripadvisorの社長兼CEOであるGreg Maffeiは、「この不安定な環境での株価の動きに縛られない長期資金を確保した」と述べている。
ニューヨークに拠点を置くCertaresは旅行領域に非常に積極的であり、以前の取引ではAmerican Express Global Business Travel, Travel Leaders Group, Nirvana Travel and Tourismを支援している。この取引により、Certaresの創設者兼専務取締役であるGreg O’HaraがLiberty Tripadvisorの取締役会に加わる。(PWD 3/17 https://bit.ly/2UpKU9b)
7. トリップ・コムのコロナ対策
Trip.comが創立20周年記念の時にCOVID-19が発生した。以下は、Trip.com CEO Jane Sunの面談記事からの抜粋である。
正確な逐次毎日アップツーデートされた情報を収集し、その情報をグローバル顧客に提供するために、サイトはもちろんコールセンターのサポート体制を強化した。先月には、世界取り消し保証セーフガードのイニシャティブを発表した。CEOと共同創立者で元CEOのJames Liangの給与を今月からゼロにし、幹部社員の50%までの任意給与カットを開始している。フロントラインの社員の年間メリット給アップは計画通り実施するが、それ以外の社員に対しては状況を回復するまで支給を延期する。
働き方を在宅勤務にシフトしている。以前から事務所と在宅勤務を併用していたのでこのリモート勤務体制には精通している。
強力な資本準備を有しているので、この災難に対する対処はできている。ブランドのサービス、プロダクト、テクノロジーを継続して強化して行く。
3月5日には、Travel Revival V Planを立ち上げた。Trip.comの業界データプラットフォームを使って、ホテル、ツアー、フライト、アトラクション数千社と共同して需要の回復に取り組む。(PWD 3/18 https://bit.ly/2UtwzZo)
8. エアビー、コロナで政府にホストの救済要請
Airbnbが、コロナウイルス対策で、政府に連邦財務規則の変更を要請している。
(1) 最低民泊レンタル免税期間14日の60日への延長、
(2) 小規模事業貸付(Small Business Loan)規則の適用範囲の拡大による短期 レンタル個人営業主に対するEconomic Injury Disaster Loansの適用、
(4) ホストに対する税控除あるいは税の繰り延べの導入
(5) ホストに対する低利融資提供のためのtransferable tax creditあるいはインセンティブの創出
(6) コロナウイルス勃発期間の旅行とツーリズム業界に対する経済的支援
Airbnbは、他の旅行業界とは異なりアセットライトの事業であるが、コミュニティーヘビーであり、この危機を耐え凌ぐ我々のコミュニティーを支援することにフォーカスする。(PWD 3/18 https://bit.ly/2QAzwpM)